NVIDIAが発表した「DLSS 5」が大きな話題になり、しかもかなり激しく炎上しています。ゲームを快適にプレイするためのDLSSが新たなバージョンでどう変わり、なぜ炎上しているのでしょうか。そしてこの先のゲームやCGにどう影響していくのでしょうか。テクノエッジアルファの会員で、自らも20年以上ゲーム開発に携わり、近年はAIを利用したワークフローを研究しているkoguさんの解説です。

▼DLSS 4 Technology | NVIDIA より
まずはDLSSについて、ざっとおさらいしましょう。DLSS (Deep Learning Super Sampling)は、NVIDIAのGeForce RTX向け描画支援技術です。名前にDeep Leraning(深層学習)とある通りAIを用いて、より快適なゲームプレイの補助を行います。
AIによるアップスケーリング
DLSSはアップスケーリングから始まりました。ゲームにおいて解像度は想像以上に負荷を左右します。1ピクセルごとに形状や質感、光の計算が求められるため、解像度が少し上がるだけでも計算量は膨れ上がってしまいます。
そこで本来の描画は小さな解像度で行っておき、それを引き伸ばせば、見かけ上はハードウェアの性能を超えた描画が可能です。ローエンドのGPUでも複雑な描写を可能にしたり、1フレームの負荷を抑えてFPSを上げたり。ハイエンドではさらに高負荷高解像度を実現するなど、限られたハードウェアでより快適なプレイを可能にします。
問題は「引き伸ばし」です。単にピクセルを等倍に拡大しても、情報量が足りずボヤけたり、がたつきが目だってしまいます。アルゴリズムでの拡大も可能ですが汎用性や品質に限界があります。この問題の解決をAIで目指すのがDLSSです。
恐ろしく単純化してしまうと、同じ対象を描画した解像度の異なる画像をペアで用意し、低い方を入力、高い方を求める出力として機械学習を行えば、アルゴリズムでは難しい引き伸ばしも原理上可能です。
より多様な補間
2018年に登場した初代DLSSは、ゲームタイトルごとの調整が必要な限定的なものでした。しかし世代を重ね品質も汎用性も向上していきます。またDLSSはアップスケーリングだけでなく、時間や光の表現にも対象を広げていきました。
描くフレーム数が少なくても補間して滑らかな表示を可能にするフレーム生成。複雑で高負荷な光の計算を補助するノイズ軽減や再構成。AIの構造も刷新しながら、学習量も参照情報も増やし、最新のバージョンでは更に高度で知的な推定を行っています。こうした描画の支援技術が集まったものがDLSSです。
表現の維持
重要なのは、こうした従来のDLSSがあくまで支援的な位置付けだったことです。小さく計算して引き伸ばしたり、存在しないフレームを補ったり、少ない光の計算を補強したり。全てそのゲームが持つ本来の表現を維持しながら、より快適なプレイを補助するものです。
補間である以上、DLSSの結果にはどうしても不自然さや不正なノイズが混入し得ます。しかしそれらは意図しないエラーであって、作品の持つ表現を守りながら補うという目的の範疇です。世代を経るごとにより仕組みを刷新し、複雑で高度に知的な補間を行うようになっていても、その原則は守られていたはずでした。
こうした在り方がDLSS 5では大きく変わります。
DLSS 5が変えるもの
まだ詳細は公開されていないため、NVIDIAの公式発表から引用しつつ、現時点で判明しているDLSS 5の姿を確認します。
見た目への介入
「2018年のリアルタイムレイトレーシングの登場以来、NVIDIAにとって最も重要な、コンピュータグラフィックスにおけるブレークスルー」
NVIDIAはDLSS 5について、こう強く表現で紹介しています。 そして「ピクセルに写実的なライティングとマテリアルを融合させる、リアルタイムのニューラルレンダリングモデル 」と説明します。

これはDLSS 5の象徴的な例として用いられている『BIOHAZARD requiem』でのサンプルです。
ライティングやマテリアルはゲームの見た目を決定する大きな要素ですが、従来のDLSSはあくまで補間的であり、元の表現を意図的に変えるものではありませんでした。しかしDLSS 5では、明らかに表現まで踏み込んだ変化が見て取れます。肌や顔のディテール、ライティング、服に小物に背景まで、確かにいわゆる写実性が向上した質感で上書きされています。別物のように。
つまりDLSS 5はこれまでの世代と異なり、ゲームの見え方そのものに関与することを目的としています。同じDLSSという名ですが、与えられた表現の補間と、表現そのものの“向上”という、大きく異なる働きを提供することになります。
色と動きから写実性を強化

公表されているDLSS 5適用の流れは図のようにとてもシンプルです。ゲーム側からは本来の描画が持つ「色(Color)」と「動き(Motion Vector)」の情報を渡すだけ。あとはDLSS 5が写実性を強化します。
サンプルでは優れた表現を持つ既存作品を題材としていますが、もっと単純なマテリアルやライティングの描画を元にリアリティを大きく向上させることも可能な筈です。
このような効果は画像や動画の生成AIで一般的な仕組みに似ています。構造も学習も何ら情報が出ていないため不確かな推測にすぎませんが、おそらくDLSS 5もある程度近い手法でこうした表現の上書きを実現しているのではないでしょうか。
既存のゲームグラフィックスを生成AIで“アップグレード”したという主張は珍しくありません。DLSS 5の適用結果も、1フレームだけ見ればそうしたものと大差ありません。しかしDLSS 5には今の動画生成AIにはない大きな革新があります。
家庭用GPUでのリアルタイム一貫性

紹介通りの性能が発揮されるとしたら、DLSS 5はCG技術にとって3つの点で大きなブレークスルーとなります。
まずリアルタイムであること。たとえば動画生成AIでこうした加工を行うにはそれなりの計算時間を要します。商用の高性能なハードウェアを用いても、ゲームがプレイできるほどの速度はたやすくありません。まして家庭用のハードウェアでは、リアルタイムどころか動作すら難しい場合も多いでしょう。
次に一貫性。サンプルを見る限り、DLSS 5を適用後のキャラクターや背景、小物等は十分な一貫性を保っています。動画生成では適用する度に結果が異なるなど、一貫性は大きな課題です。NVIDIAはDLSS 5の一貫性を ”決定論的で時間的に安定し、コンテンツに連動” と説明しています。つまりゲームをプレイするたびに大きく変動したり、時間とともに崩れたりしないと。刻一刻と変化するゲームの映像で実現しているなら、幅広い応用も考えられます。
それから計算の負荷。こうしたリアルタイム一貫性がコンシューマ用のGPUで実現しているのは驚異的です。現時点ではまだハイエンドのRTX5090を1台DLSS 5が占有していて、最適化はこれからだと触れられています。しかしコンシューマ用GPUで動くこと自体が驚異的であり、2026年秋のリリースと発表した以上、軽量化の見込みがある筈です。
4.5までの補間から、5での積極的な表現の向上へ。NVIDIAがリアルタイムレイトレーシング以来と位置付けるDLSSの変化は確かに革新的です。一方その急激な変化は、「ニューラルレンダリング」としてNVIDIAから提示されてきた複数の層が入り混じった結果のようで、分かりにくい状況になっています。
ニューラルレンダリング
DLSS 5は「ニューラルレンダリングモデル」であると説明されています。ニューラルレンダリングとは特定の製品や統一規格ではありません。従来のアルゴリズムや実データだけでなく、学習済みのAIモデルも描画処理の一部に組み込んでいく考え方を指す、かなり広い概念です。
この意味では、DLSS 5がニューラルレンダリングの一種であるという説明自体は不自然ではありません。NVIDIAは従来からDLSSをニューラルレンダリングの一部として位置づけており、DLSSの公式ページでも「suite of neural rendering technologies」と紹介しています。
従来のDLSSは、レンダリング結果に対するアップスケーリングや補間といった比較的後段の技術として理解されてきました。他方で、NVIDIAが開発者向けにニューラルレンダリングとして前面に出してきたものは、主に別の二つの層に属しています。
ひとつは部品レベルで描画を改善する技術、もうひとつはキャラクターのような限定領域に対して生成的な介入を行う技術です。
部品レベルのニューラルレンダリング

▼ニューラルシェーダーの利用例 - NVIDIA と Microsoft が画期的なニューラル シェーディング テクノロジでゲーミングの新時代を開拓 より
NVIDIAがニューラルレンダリングとして前面に出してきたのは、ニューラルシェーダーに代表される部品レベルの技術です。それらは描画処理全体を一括で置き換えるためのものではありません。
描画計算の基本単位であるシェーダーという小さなプログラムの内部で、小規模な推論を使えるようにし、材質表現やテクスチャ圧縮、ライティング計算の効率化などに利用する。
あるいはCharacter Rendering SDKという技術もこの層に属するでしょう。髪や肌の表現を改善するためのもので、画面全体に後から一括して効果をかけるものではなく、ヘアやスキンといった個別の要素をレンダラの内部で扱いやすくし、見た目の向上を図るものです。
これらの技術は生成的な介入を行いつつ、その発想はあくまでボトムアップです。素材や部品ごとの表現を積み上げて最終的な画を作るという、3DCGの基本的な構造は保たれています。
キャラクター限定のニューラルレンダリング

▼Neural Facesの概要 - Crossing the Uncanny Valley of Rendering Digital Humans with NVIDIA RTX Neural Faces より
Neural Facesという技術はもう少し大きな単位で、キャラクターに限定した見た目の向上を目的としています。
髪や肌のような個別の部品を改善するのではなく、顔という限定された範囲で、比較的粗い入力を元に生成的な手法で自然な見た目を与えようとする技術です。つまりこの層は部品レベルのニューラルレンダリングよりも一歩進んで、表現そのものにAIが踏み込む側面を持っています。
ただしNeural Facesはあくまで顔という狭い対象に限った技術です。ゲームの表現でも特に破綻が目立ちやすく、改善の効果が分かりやすい顔という領域に限定した試みであり、ゲーム画面全体の見た目を一括して変えるようなものではありません。
DLSS 5とのズレ
部品レベルの技術は、シェーダーや材質、髪、肌といった個々の要素を内部から改善するものでした。Neural Facesはいかにも生成的ですが、対象は顔という限定領域にとどまっていました。いずれも基本的に3DCGの画作りを構成する要素の側から品質を押し上げる発想です。
しかしDLSS 5はこれらの技術と位置付けが違います。個々の部品や素材を改善するのではなく、完成した描画の結果全体に対し、上書きするように作用する。シェーダーやマテリアルの積み上げの先にある最終的なフレームに対し全画面的な変換を加える発想は、これまでNVIDIAが提示してきたニューラルレンダリング像と大きく違っています。
同じDLSSというブランドの下で、補間的な支援から表現に踏み込む技術へと重心が移ったこと。同じニューラルレンダリングという概念の下で、部品レベルのボトムアップな画作りと、全画面的なトップダウンの変換が並べられたこと。
こうした整理の分かりにくさはDLSS 5の情報の乏しさと合わせて、今回の反発に影響しているのではないかと考えています。
なぜ炎上したのか
DLSS 5の発表は凄まじく炎上しました。NVIDAのXのポストには大量の批判が寄せられています。
見た目をリアルに変える点の誇張がミーム化し、DLSS 5の適用前後を模した皮肉も無数に投稿されています。「DLSS 5を適用する = 台無しにする」という雑なイメージは、払拭に相当の時間や実績が必要そうです。
CG史に残る革新的なはずの技術がこれほど炎上しているのは、多様な原因が考えられます。先に述べた分かりにくさの他にも、サンプルの品質や負荷の高さ、不気味の谷的な違和感、情報の少なさなどなど。中でも強い怒りに繋がったひとつに、NVIDIAの作品やアートへの敬意が欠けていたことがあるだろうと考えています。
尊重の不足
ゲームを含めた3DCGの現場では、見た目を作りあげるための膨大なコストをかけています。モデルやテクスチャを作り、ライティングを調整し、意図した質感に近付け、ようやく最終的な表現にたどり着く。その積み上げは単に技術的な制約の産物ではなく、作り手たちの判断の集積です。
そうした表現を上書きするAIの加工が、全てをぶち壊す改変と受け止められるのは不思議ではありません。画作りの主導権が突如外から現れた要素に左右されるなら、作る側も遊ぶ側も強く反発して当然です。ましてサンプルが完成した作品であれば、そうした印象は強まります。
DLSS 5の発表でサンプルとして用いられたのは『BIOHAZARD requiem』『EA SPORTS FC』『Starfield』『Hogwarts Legacy』と、名だたる企業の有名作品で最新作も含みます。NVIDIA自身のデモは「Zorah」ひとつだけ。
おそらくNVIDIAはDLSS 5の効果をはっきりと見せるために、今回のサンプルでは効果を強く分かりやすく適用しています。有名な作品が大きく変わることでDLSS 5の革新性を伝える。目的を考えれば理解はできなくありません。
しかしそれが、今ゲームの視覚表現に取り組むエンジニアやアーティストに、どう脅かされる未来を想像させるか。あるいはこれまでの方法で作り上げられてきた作品を楽しんできたプレイヤーにぶち壊しと捉えられるか。受け手の視点に立つ尊重は大きく欠けています。
もしNVIDIAが低コストなグラフィックスの自社製デモ作品だけでDLSS 5の効果をアピールしていれば、ここまで炎上していたか疑問です。色々な批判は出るにせよ、台無しにする技術というミーム化までは防げていたのではないでしょうか。
品質の不足

公開されたサンプルには品質の不足も見られ、これも強い批判を後押ししています。
たとえば元のレンダリング結果にある陰影が、鼻や髪型の一部として描かれ輪郭が変わっててしまう。全体の陰影や色味が変わっているものも多く、異なるシーンのように見える。過度に皺が描きこまれ、瞼ははっきりとした二重になり、光沢が強まる。
プレイ体験の補助から写実性の向上へと踏み出す以上、元の表現を逸脱するような上書きは強い反発を招きます。NVIDIAもそれは理解しているからこそ、いかにDLSS 5の効果がアーティストに委ねられ、その強さや適用範囲を制御できるのか述べています。けれど提示されたサンプルは、そうした説明とは一致しない強い変化を突き付けています。
DLSS 5はまだ調整中で品質も効率もこれからだと説明されています。そうした段階で有名作品に効果を強調してサンプルとすれば、品質を問題視されても仕方ありません。
生成AIへの反発
生成AIによる出力を批判的に指す「AI Slop」という語は、DLSS 5への批判とセットで広く使われています。炎上の前提には生成AIへの反発が強く影響しているのは確かでしょう。
既存のゲームを、動画生成AIを使って”リッチにした”とするSNSの投稿は珍しくありません。実際にゲームとして成立するかを無視し、煽情的なコメント付きで出回る加工は、非常に反感を集めやすいものです。
DLSS 5はそうした動画生成と異なりますが、完成した作品に生成AIで表現を強化するという点だけを取り上げてしまえば、そう大差なく見えてしまいます。ゲームメーカーと協力し大きなブレークスルーだと披露したにも関わらず、激しくAI Slop扱いされている状況はNVIDIAにとって誤算でしょう。
では強い批判が、DLSSやニューラルレンダリングの今後にどう影響するでしょうか。
“ニューラルレンダリング”の今後
ここからは生成AIがCGに深く関与していくニューラルレンダリングの今後について、個人的な予想をしてみます。
強い批判を受けたことでNVIDIAは弁明しています。DLSS 5はあくまで開発者側で直接制御可能なツールであり、作品のアートを損なうものではないと。しかし広まった印象を変えるのは難しく、DLSSミームは投稿され続けています。
こうした批判が続いても、NVIDIAがDLSS 5をキャンセルしたり、AIの活用を見直す可能性はほとんど無いと考えています。既存作品の表現軽視は控えたとしても、DLSS 5のようなニューラルレンダリングへの投資や製品化は続くでしょう。
肥大化していく3DCGのコストと生成AI
流れが変わらないと考えるのは、3DCG技術の成熟とコストの肥大化、そしてまだ黎明期に過ぎない生成AIの急速な発展があるためです。以下の記事ではそうした観点から、遠い将来3DCGが終わりを迎えるという予想を書きました。

この記事での予想は3年後の現在、大筋では外れず、むしろ発展の方が早まっていると感じています。当時に比べ画像の制御は桁違いに向上しました。動画生成は予想より遥かに早く高度になり、映像制作にも実用され始めています。マルチモーダルやワールドモデルも進み、そしてDLSS 5では速度と一貫性がひとつ前進しました。
当然ですが今日明日3DCGがCGの主流でなくなる事はありません。DLSS 5も3Dありきの技術ですし、こうしたハイブリッドな生成AIの利用は長く続く筈です。とはいえ今回DLSS 5が見せたような動きは今後も増えていくでしょう。
事前準備されたデータとアルゴリズムで描く3DCGに、膨大な特徴から必要な表現を導き出す生成AIが徐々に組み込まれていく。それは膨れ上がる事前準備のコストと、ランタイムでの負荷への現実的な対応でもあり、DLSS 5はその一歩として捉えるべきだと考えています。
NVIDIAはコンシューマ向け生成AIサービスでは目立ちませんが、生成AIの普及や発展によって最も利益を上げている企業のひとつであり、強力に推進してもいます。そんなNVIDIAが3DCGのハードウェアで分野を牽引する位置にいます。
生成AIによるCGは3DCGとは異なる一足飛びの表現をもたらします。たとえ現時点での品質が低くとも、リアルタイムの一貫性という大きなハードルを越えたからこそ、NVIDIAは高らかにブレークスルーを宣言した筈です。
3DCGでは達成がまだまだ遠い写実性が、コンシューマ機でも実現する可能性が見えているのなら、そちらに向かわない方がリスクが高いと感じます。発表の中で"レンダリングと現実のギャップ”や"ハリウッドのVFX”に言及しているのは、そうした期待と判断の現れでしょう。
たとえDLSS 5が品質や効率の問題を解消できなかったり、反発から採用を取り消されたりしたとしても、こうした大きな流れそのものを変えてしまう程では無いと考えています。初代のDLSSは多くの問題を抱えたまま継続しました。NVIDIAは当時より遥かに押し通す力を備えています。
ゲーム開発の変化
DLSS 5は広く実用化されるニューラルレンダリングとして初めて、補助ではなく表現自体に踏み込んだものとなります。マインクラフト限定の先行事例などはありますが質は低く、なにより規模が全く違います。
もしDLSS 5がRTX 5090でやっと動くものだったとしても、Steamのハードウェア調査から少なく見積もっても世界に数十万台は出荷されています。これなら差別化として採用を検討できる規模ですし、後続世代が消えない限り、いずれは対応を考える日がやってきます。
提供されるDLSS 5が、サンプルの問題や現実的な性能と品質を達成し、アートの制御が本当に十分可能だった場合、採用の可能性は大きく高まります。ニューラルレンダリングによる写実性の向上が現実的な選択肢となっていくとしたら、ゲーム開発はどう変わっていくでしょうか。
当面はハイエンド向けの差別化要素に留まるでしょう。たとえ50世代全てで動作したとしても、下の世代や他メーカーのGPU、コンシューマ機などがある以上DLSS 5ありきの開発は選択できません。NVIDIAの支援で専用に開発するとしても、小規模や実験的なものになるでしょう。
DLSS 5が十分効率的に機能するなら、ハイエンド向けでは負荷が軽減できる可能性も出てきます。3Dモデルやシェーダーを負荷の軽いローエンド用に切り替えてしまい、写実性はDLSS 5が向上させることで、トータルではより大きくより速く描画する構成がありえます。これが成立する場合早期に採用する理由が少し増えます。
追加の向上ではなく、初めからDLSS 5を前提とした開発を行うにはかなりの年数が必要でしょう。動作するPCが確実に数割を超えるとか、コンシューマ機が対応した世代に変わるとか、普及が一定以上に進まなければコスト削減の効果は得られません。そしてそのためには、AMDなど他メーカーがある程度追従しなければならず、標準化なども求められていくでしょう。
ゲームでは新技術の採用にこれまでも似た経緯を辿ってきており、2026年秋にDLSS 5が予定通り提供されたとしても、すぐにフル活用した作品が登場することはほとんどありません。品質次第では、むしろ実行環境の普及に影響されない映像制作の分野での採用が先行し、ノウハウがゲームに移っていく流れも考えられます。
避けようのない流れ
どれだけ今批判を受けようと、技術自体に見込みが無いと判断されるか、あるいは法的な制約を受けでもしない限り、3Dレンダリングとは異なる手法がCGの主流に追加されていく流れは変わらないと見ています。
3DCGは成熟し、黎明期のような極端な飛躍は難しくなっています。表現の向上に演算性能や人的コストの増加で対応していく以上の決定的な道が無いことは、ニューラルレンダリングのような仕組みへの移行を後押しします。
最初は広範な適用が可能な写実性が主眼でも、いずれはより作品固有の表現を扱うように進むでしょう。作品が求める表現をより低コストで実現できるなら、ボトムアップに縛られる理由はどんどん削られていきます。品質は常に争点となり続けますが、既に静止画で進む生成AI技術の流入が、ゲームや映像では起きないと考えるのは余りに楽観的です。
DLSS 5はその激しい拒絶も含め、CG全体の在り方を大きく変えるブレイクスルーとして、技術的にも社会的にも非常に興味深く注目すべき製品です。









