DJIで最も入門機にあたる Neoシリーズの最新機種、Neo 2が発売された。初代Neo同様、自撮り向けの小型ドローンという位置付けながら、今回アップデートされた機能からは、DJIがこれまで高価格帯のドローンで磨いてきた技術を、どこまで一般向けに落とし込んできたかが見て取れる。
筆者はこれまでDJI Avata、初代DJI Neo、DJI Mini 4 Proなど複数のDJI製ドローンを使用してきた。今回、DJIからの機材提供によりNeo 2を実際に飛ばす機会を得たが、その経験を踏まえると、Neo 2は単なる後継機というより、「DJIの技術が一般化する転換点」として捉えるのが適切と思えた。
Neo 2の飛行時間は約19分、機体重量は150g前後と、携帯性と実用性を両立した仕様だ。日本での価格は本体単体で3万円台後半~、バッテリーやコントローラーを含むセットでは6万円台~となっており、全方向センサー搭載機としては実に手に取りやすい価格帯に収まっている。
Neo初代と比べると多少価格は上がっているが、それは単なる値上げというよりも高価格帯ドローンで培われてきたセンサー技術を、このクラスに投入した結果と見るべきだ。DJIならではのセンサー技術が民生機に降りてきたこと自体が、Neo 2の最大の差別化ポイントと言える。

▲左がNeo 2、右が初代Neo。Neo 2ではセンサー構成が強化され、衝突を前提にしない設計へと舵を切った分、多少大型化している
初心者はドローンが何にぶつかるかわからないというDJIの模索
ドローンを初めて使う人にとって難しいのは、操縦そのものより、機体が「何にぶつかるのか」を把握することだ。操縦者の視点とドローンの位置は常にズレており、距離感や障害物の存在を直感的に掴むのは意外と難しいし、空中のケーブルなどはLiDARセンサーが見落としやすい、夜はビジョンセンサーが効かないなど、どういうものを検知でき、また検知し損ねるかは、慣れが必要となってくる。
DJIはこの問題に対し、様々なセンサーをドローンに搭載し、ドローン自身が周囲環境を認識させるというアプローチを取ってきた。初期から下方向に距離センサーを搭載して、自動着陸を実現し、近年の上位モデルでは前後左右上下の全方向にセンサーを配置、操縦者のミスを機体側で補っている。この思想はDJI製ドローンが「初心者でも扱いやすい」と評価される理由の1つだ。
2023年発売のMini 4 Proでは、こうした全方向センサーがコンシューマー向けの小型ドローンにも本格導入された。その流れを、さらに下の価格帯へ押し下げたのがNeo 2だ。

▲飛行中にセンサーが検知した障害物が、プロポに繋げたスマホの画面上に表示される。写真では建物や植木が検知され、近づくほど赤の警告が濃くなり、アラートも出る

▲DJI Neo2は、Neoシリーズで初めて全方向センサーを搭載。上下のビジョンセンサーが機体上下半分ずつ衝突回避を行う仕組みだ
ぶつかっても壊れない
DJIが安全性を高めるために選んできた道はセンサーだけではない。FPVドローンの分野では、2022年発売のDJI Avata(日本未発売)がローターガードと一体化した構造を採用し、衝突を前提とした設計によってFPVドローンの一般化を進めてきた。2021年発売のDJI FPVではプロペラガードは別パーツだったことから改善した形だ。
Avataは壁や地面に接触しても致命的なダメージを受けにくく、FPVドローンに不慣れなユーザーでも扱いやすい存在だった。一方で、その構造や性能から価格帯は高めで、誰にでも気軽に勧められる機体ではなかった。
NeoシリーズはAvataシリーズと同じく、ローターガードを一体化した構造となっている。
▲上空からの撮影例。機体重量150g前後の小型ドローン+ローターガード装備で耐風に不利だが、Neo 2は耐風性能もレベル5(最大風速10.7m/s)に進化している。動画撮影時も強風の警告は出ていたが、映像でブレは感じられない
ドローンはvlogを撮るためのもの Neo 2の進化方向
初代Neoでは本体に物理的なボタンを備え、Selfieshot機能などを単体で選択し、撮影できた。Neo 2ではドローニーやロケットなどの撮影オプションが増え、かつ真後ろに後退するか斜め上に上昇するか等のオプションも増えたことで、底面のボタンと前面のLCDの組み合わせでフライトモードを選択する。オプションの変更は長押し操作なども必要で、手軽さが後退したようにも感じられるが、むしろスマートフォンとの連携がより前面に出てきたと感じている。
▲SelfieShot機能。後ろや斜め後ろに下がって集合写真を撮れる。耐風性能の向上とジンバルが2軸に進化したことで安定性が向上した
撮影後にスマートフォンで映像を確認し、編集やSNSへの投稿まで完結させる用途を考えると、豊富な撮影オプションや、絵のチェックをスマートフォンに集約するのは合理的な割り切りだろう。Neo 2は操縦を楽しむドローンというより、映像を作るためのツールとしての設計が進化したと言える。

▲機体前面のLCDパネルはかなり精細で、慣れれば本体のみでモード選択も可能
一番安い全方向センサードローン
Neo 2の最大のポイントは、全方向障害物検知を備えたDJI製ドローンの中で、もっとも価格帯が低いクラスに位置づけられた点にある。
▲被写体を追従するフォローモード。Neo初代と比べ、全方向センサーの追加により、障害物が多い環境でも追従精度が大きく向上した
初代Neoにも被写体を追従するトラッキング機能は搭載されていたが、Neo 2では上下方向にもセンサーを備えたことで、追従中に高度を変えて障害物を回避する動きが可能になり、障害物の多い環境でも安定したフォロー撮影が行える。
DJI Neo 2は最安クラスのドローンでありながら、DJIが長年積み上げてきた技術の恩恵を最もわかりやすく体験できる機体だ。新機能の追加ではなく、ドローン技術そのものの一般化だと言える。
技術の民主化が広げる次のマーケット
Neo 2で起きた変化をもう一段、引いて見ると、単なる製品進化ではなく、ドローン技術全体の「民主化」の一例とも言える。
全方向センサーや画像処理を担うAIチップは、かつては高価格帯製品でしか成立しなかったが、近年はセンサーそのものや処理用SoCの低価格化が進み、より小型・低価格な機体にも組み込めるようになった。結果、ドローンの開発自体のハードルも下がり、DJI以外からもAntigravityのような新興ブランドが出現した。
こうした技術の民主化はDJIにとって脅威であると同時に、市場全体を拡張する要素でもある。競合が増えることで、用途や価格帯の幅が広がり、結果としてドローンがより多くの人にとって身近な存在になる。
その中でNeo 2の存在は、DJIが市場を広げにいくための一手と見ることができる。この流れはドローンに限った話ではなく、センサーとAIによって「空間を認識して動く」という点で、ロボット開発とも地続きだ。Neo 2は自撮り用ドローンであると同時に、そうした技術が一般化していく過程を象徴する存在でもある。

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