ローカル生成AIをゲーミングPCで動かす──レノボ「Legion」シリーズ新モデル体験イベントレポート

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レノボ・ジャパンは9月16日、都内でゲーミングPC「Legion」シリーズの最新ラインアップ紹介と、ローカル生成AIの活用をテーマとしたイベントをテクノエッジのアルファ会員と招待したインフルエンサーらを対象に開催しました。

これまで、ゲーミングPCというと当然ながら高フレームレートでのゲーム体験が主な用途でしたが、近年は生成AIの普及により、搭載する高性能GPUを活かした新たな活用シーンが注目されています。特にローカル環境での生成AI運用では、大容量VRAMを搭載したゲーミングPCが威力を発揮します。プライバシー保護や安定したワークフローを重視するクリエイターにとって、クラウドに依存しないローカルAI環境は魅力的な選択肢となっています。

本イベントでは、最新のLegionシリーズを使った実践的なAI活用事例が披露され、ゲーミングPCの新たな可能性が示されました。

Legion最新ラインアップ

イベントでは、まずレノボ・ジャパン コンシューマ事業部ゲーミング製品担当の細川英雄さんが、Legionシリーズの最新ラインナップを紹介しました。

▲レノボ・ジャパン コンシューマ事業部ゲーミング製品担当 細川英雄さん

フラッグシップの最上位モデル「Legion Pro 7」は、Intel Core Ultra 9 275HXとNVIDIA GeForce RTX 5080 Laptopを搭載し、32GBのRAMを標準装備。「Legion Pro 5」は、Intel Core Ultra 9 275HXは変わりませんが、GPUがGeForce RTX 5070/60 Laptopとなっています。

どちらもレノボ独自の「Lenovo Puresight OLED Gaming Display」を搭載し、「VESA DisplayHDR True Black 1000」認証を取得しているのが特徴です。この認証をPCメーカーで取得しているのはレノボのみとのこと。色域はDCI-P3 100%をカバーし、ピーク輝度1000nitを実現することで、ゲーミングだけでなくクリエイティブワークにも最適化されています。

「Legion 7」はCore Ultra 7を搭載し、RTX 5070/5060 Laptopに対応。こちらも「VESA DisplayHDR True Black 1000」を取得しています。「Legion 5」はIntel Core i7にRTX 5060 Laptopを搭載。これまでの3モデルは16インチでしたが、Legion 5は15.1インチと若干小さめ。こちらは、「VESA DisplayHDR True Black 600」を取得しています。

エントリーモデル「LOQ」シリーズは、Intel Core i5 13450HXとRTX 4060/4050 Laptopを搭載。スペックはやや劣りますが、MIL規格準拠の高い耐久性を備えるなど、モバイルユーザーにも最適な1台となっています。

▲LegionのノートPC製品

このほか、デスクトップ製品では、水冷システムを採用し、34リットルの筐体内で静音性と冷却性能を両立した「Legion Tower 7i」、ゲーミングモニターとして初めて有機ELを搭載したプレミアムモデル「Legion Pro 27" UHD OLED」、エントリーモデルの「LOQ Tower」なども紹介されました。

▲Legionのデスクトップ製品
▲LOQ TowerはRTX5060を搭載

独自AIシステム「Lenovo AI」で発熱とパフォーマンスを管理

ハイパフォーマンスのゲーミングPCと言えば、発熱が気になるところですが、Legionでは、「LEGION COLD FRONTシステム」と呼ぶ独自の物理的冷却技術を採用。製品グレードに応じて以下のように差別化されています。

  • Legion Proシリーズ「LEGION COLD FRONT VAPOR」:大型ヒートシンク、複数ヒートパイプ、高性能ファンを組み合わせた最上位構成

  • Legionシリーズ「LEGION COLD FRONT HYPER」:バランス型の冷却システムで実用性を重視

  • LOQシリーズ「Hyperchamber Cooling」:コンパクトながら効率的な冷却を実現

「パソコンは電力イコールパワー、そしてパワーが出るということは発熱するということです。いかに冷却システムにこだわって、パワーを持続的に出し続けることができるかに注力しています」と細川さんは説明します。

具体的には、吸気口設計、ファンシステム、ファンブレードの大きさ、ヒートパイプとヒートブロック、ヒートシンク、センサーシステム、そして排熱に至るまで、各パーツレベルでの最適化を図っているとのことです。

この物理的冷却システムをさらに進化させるのが、2001年から開発している独自のAIチップを搭載した「Lenovo AI(LA)」システムで、主に以下の3つの機能を自動で調整します。

  • システム制御によるゲームパフォーマンスの最大化

  • ユーザー環境やプレイ状況に応じてゲーム体験を自動調整

  • AIが作成した最適化環境の自動適用によりゲームパフォーマンスの向上

また、ユーザーインターフェースには「Legion Space」を採用。これまでメーカー製PCでは不可能だった、自作PC並みの詳細設定が可能だとしています。

  • パフォーマンスモード切り替え:静音・バランス・パフォーマンス・カスタムの4モードから選択

  • 電力制限調整:TDP(熱設計電力)の上限値をユーザーが設定可能

  • ファンカーブ設定:温度に対するファン回転数の細かな調整

  • RGB ライティング制御:キーボードやシステム全体のライティング同期

  • 有機EL焼き付き防止:ディスプレイの長寿命化機能も統合管理

この結果、高負荷時でも表面温度を低く保ちながら、従来比で静音性も向上。長時間のゲームプレイやAI処理でも安定したパフォーマンスを維持できるとしています。

「従来のメーカー製PCでは、メーカーが決めた設定から選ぶしかありませんでした。しかし Legion Space なら、自作PCユーザーが行うような細かなチューニングを、わかりやすいUIで実現できます」とのことです。

プロカメラマン西川和久氏による生成AI実践デモ

続いて、テクノエッジでも、「生成AIグラビアをグラビアカメラマンが作るとどうなる?」を連載しているテクニカルライター、プログラマー、そしてカメラマンとしても40年以上のキャリアを持つ西川和久さん(@PhotogenicWeekE)が、Legion Pro 7を使用した画像生成AIの実践デモを披露しました。

▲画像生成AIについて説明する西川さん。隣にいる女性は、連載でたびたび生成AIの学習元として登場するモデル「LoRAっ子」ご本人

使用マシンのスペックは以下の通り。

  • CPU:Intel Core Ultra 9 275HX

  • GPU:NVIDIA GeForce RTX 5080 Laptop(16GB VRAM)

  • RAM:32GB(CSODIMM)(2×16GB)

  • ストレージ:1TB SSD

「実際のところ、32GBでは足りません。起動すると24GB程度になってしまうので、本格運用には64GBが理想」と西川さん。それでも16GB VRAMのGPUにより、実用的な画像生成が十分可能であることを実証しました。

ローカルAI環境をデモ

デモでは以下のツールを使用して生成AIが実演されました。

  1. LLM / gpt-oss-20B、QwenVL-7B(画像認識)+LM Studio

  2. AI画像生成:Qwen-Image(8月時点の最新環境)

  3. AI画像編集:Qwen-Image-Edit

特に印象的だったのは、コンテキストサイズの調整による処理速度の最適化です。128Kコンテキストでは18トークン/秒だった処理速度が、90Kに調整することで46トークン/秒まで向上。約3倍の高速化を実現しました。「VRAMに収まりきらない部分はメインメモリに溢れてしまい、大幅に速度が低下します。適切な調整が重要です」

画像生成では、1024×1536ピクセル、8ステップの設定で40秒という処理時間を記録。これはデスクトップ用RTX 4060 Ti(50秒)を上回る性能で、Laptop版ながらデスクトップ級の性能を発揮しました。

▲ComfyUIを使って画像生成。この画像がローカル環境で40秒ほどで生成できます

ローカルAIの優位性

西川さんは、ローカルAI環境について「APIサービスを使えば簡単ですが、ある日突然仕様が変更され、昨日まで動いていたプロンプトが今日は動かなくなることがあります。業務利用では致命的です。ローカル環境なら仕様変更のリスクがなく、安定した運用が可能です」とその重要性を語ります。

また、「現在はAPIサービスでも多くのことができますが、細かい調整や制限のない生成を求めるなら、ローカル環境が不可欠」とローカルAIの意義を強調しました。

なお、今回の講演で投影された資料は下記で公開して頂いているので、あわせてご覧ください。

Voxelkei氏によるガウシアンスプラッティング実演

VRChatクリエイターのVoxelkeiさん(@VoxelKei)は、フォトグラメトリとGaussian Splattingガウシアン・スプラッティング)技術を活用した3Dコンテンツ制作の実演を行いました。

▲VRChatクリエイターのVoxelkeiさん

なお、事前に行ったテストでは、同氏のデスクトップPC(RTX 4070 Super搭載)で1分55秒かかった処理が、Legion Pro 7では1分33秒で完了。「デスクトップより早く、普通に欲しくなった」とのことでした。

今回の実演では、温泉地のバンガローで撮影した動画素材から、リアルタイムで3Dデータを生成するという一連のワークフローを紹介。ノートPCでも短い時間で作業を完了できることを示しました。

ワークフローと処理時間

使用したツールは以下の通り。

  1. DaVinci Resolve:動画から静止画切り出し

  2. RealityScan:カメラ位置推定とポイントクラウド生成

  3. PostShot:ガウシアンスプラッティング生成

▲RealityScanに静止画を取り込むと、カメラがどこから撮影したのかを推定し、プロットしてくれます。今回は122枚の静止画を11秒で処理しました。

生成されたガウシアンス・プラッティングデータ(PLYファイル)は、独自開発ツールでUnityに取り込み、最終的にVRChatワールドとして公開。外出先での撮影から3D化、VRChatでの共有まで、一連のワークフローがモバイル環境で完結できることを実証しました。

「今まではこういう作業にはデスクトップが必須でしたが、これだけの性能があれば出先でも十分作業できます。旅行先で撮影して、その場で3D化してVRChatにアップロードするような使い方も現実的になりました」とのこと。

展示されたVRChatワールド「Spatialography」では、複数のガウシアンスプラッティング作品を展示。このワールド自体がかなり重い部類とのことですが、Legion Pro 7でサクサク動作する様子が確認できました。

なお、ワールドは公開されているので、ぜひ、実際に体験してみてください。

懇親会とハンズオン体験

イベント後半では、細川さんのプレゼンテーション内容を基にしたクイズ大会を開催。「Legion 7i Gen10のディスプレイ仕様は?」「AIによる静音化技術とは?」など、製品知識を問う問題が出題され、参加者は真剣に回答していました。

優勝者にはLegionブランドのリュックが贈呈され、決勝戦まで残った参加者全員にもサコッシュなどのノベルティが配布されました。

▲勝ち残ったのは、ライターの武者さん

会場では、最新のLegionシリーズ全製品のハンズオンコーナーも設置。参加者は実際に製品に触れながら、有機ELディスプレイの美しさや冷却システムの静音性を体験。「VESA DisplayHDR True Black 1000」の色再現性や、AI冷却システムの効果を実感できる展示となっていました。

▲画像生成AIについて、西川さんに熱心に質問する参加者の方々
▲指定した画像の人物が着ている服を平面に展開するというデモ
▲VRChatのワールド「Spatialography」

まとめ

今回のイベントでは、西川さんやVoxelkeiさんが実際に作業している様子を見ることができ、実際の使用感やワークフローを体験できたのは貴重でした。これまで、ハイパフォーマンスのデスクトップPCでしか利用できないと思っていたローカル環境での生成AIが、最新のゲーミングPCであれば、実用的な速度で動かすことができるという、実用面でのメリットが具体的に理解できました。

レノボのLegionシリーズは、AIを活用した冷却システムや有機ELディスプレイなど、ゲーミング以外の用途でも魅力的な機能を多数搭載しています。価格帯も幅広く展開されているので、用途に応じて選択肢があるのも良いポイントです。

ゲーミングPCを「ゲーム専用機」として見るのではなく、高性能なクリエイティブツールとして捉える視点が重要になってきているのかもしれません。今後、このような活用事例がさらに増えていくことに期待したいと思います。

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