ディズニーとユニバーサルが、画像生成AIサービスのMidjourney(ミッドジャーニー)を著作権侵害で訴えました。
両社はミッドジャーニーによる侵害とされる行為の差止と損害賠償を求め、カリフォルニア中部地区の連邦地裁に対し陪審員裁判を求めています。
(▲画像：「光の剣を持ちローブをまとった男性、映画スクリーンキャプチャ」等、スター・ウォーズやキャラクター名を含めないプロンプトで生成されたルーク・スカイウォーカーの例)
ミッドジャーニーにより著作権を侵害されたと訴えた原告は、ディズニーグループの知財を所有・管理する企業のひとつ Disney Enterprise, Inc.、およびディズニー傘下のマーベル、ルーカスフィルム、20世紀フォックス。およびユニバーサル(Universal City Studios Productions LLLP)、ドリームワークス アニメーション。
AI生成により具体的に侵害を受けたと原告側が主張するキャラクターの例は、ディズニーの白雪姫、アナと雪の女王のエルサ、アナ、リトル・マーメイドのアリエル、アラジンのアラジン、ジャスミン、リロ・アンド・スティッチ等々。
スター・ウォーズのダース・ベイダー、マスター・ヨーダ、R2-D2、C-3PO、マンダロリアン、ストームトルーパー、クローントルーパー等々。マーベルのアイアンマン、スパイダーマン、ウルヴァリン等。20世紀スタジオのホーマー・シンプソン等『シンプソンズ』キャラクター、ピクサーのバズ・ライトイヤー、Wall-E等。ユニバーサルはミニオンズ、シュレック、ヒックとドラゴン等々。訴状には膨大なリストと出力例が添付されています。
具体的な著作権侵害としては、
・ユーザーの入力に応じて著作権保護されたキャラクターを無断複製(生成)、配布、公開表示
・学習のプロセスにおいて、著作権保護されたコンテンツを大量複製
・生成させたユーザーに対する直接の提供に留まらず、サービスの「Explore」ページで、著作権保護されたキャラクターを公に表示し、ユーザー獲得に利用したこと
・保護措置の提供要請の無視。原告側がミッドジャーニーに対して従来から求めていた、プロンプトや生成結果のスクリーニング等の技術的手段による保護措置の提供を拒否したこと。(暴力や性的コンテンツに対してはすでに導入しているため、技術的に不可能であるとの抗弁は当たらないとの主張)
・近日中に提供予定とされている動画生成サービス
著作権侵害に使われうる画像を生成しうるサービスについては、侵害の主体は具体的に著作権の侵害となる行為を実施した側、つまりユーザーであるとの立場もありますが、原告側は
・ミッドジャーニーによる生成、ユーザーへの配布、公開表示が直接の著作権侵害である
・公開のExploreページへの表示はミッドジャーニー自体が主体
・著作権侵害行為が可能であり広範に行われていることを知り、また様々な技術的手段により回避する能力がありながら、意図的に侵害行為を続けさせた、あるいは奨励した責任(代位責任)
について主張しています。
生成AIサービスについては、主にテキストを生成するチャットボットに対して、新聞社などのメディアや作家が、無断で学習し出力することが権利侵害であるとして訴訟を提起する例が続いてきました。
画像生成サービスについても従来から訴訟はありましたが、ハリウッドの巨大IP管理企業が正面から訴訟を提起したのはこれが初めて。
原告側の主張は多岐にわたりますが、それぞれが成立するか否か、またMidjourney側の反論は今後の展開を待つ必要があります。
