AppleのメッセージがついにRCS対応へ。それでも残る接続問題と国内キャリアの事情 (石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

 アップル初の本格的なオンデバイス生成AIである「Apple Intelligence」が大きな話題を集めたWWDCでしたが、筆者が注目したのは、同社がサラッと流すかのように対応を告知したiOSの「RCS」対応です。

これまで独自メッセージサービスのiMessageを採用し続けてきたアップルが、ついに外部との接続を可能にしたからです。

基調講演で明言されてはいませんでしたが、Googleが展開する「Googleメッセージ」との相互接続が開始されると見ていいでしょう。

(▲画像:WWDCでは、メッセージアプリのRCS対応が新機能一覧の紹介でサラッと触れられた)

 これまでのメッセージアプリは、相手がアップルユーザーかどうかを電話番号やApple IDで判断し、メッセージを出し分けていました。アップルユーザーの場合は多くの機能が使える iMessage、そうでない場合は古い規格であるSMSかMMSに自動で切り替わり、吹き出しの色も緑色に変わっていました。

Androidやフィーチャーフォン(ガラケー)とのメッセージは、基本的にこのSMSかMMSになり、送信できる文字数や画像のサイズなど大きく制限がある状態になっていたというわけです。


 一方で、こうした対応はユーザーの囲い込みにつながるとして、競合であるGoogleはたびたびアップルを批判する声明を出していました。

Googleが推していたのは、業界標準規格に則ったRCSの採用です。同社のGoogleメッセージもRCSに対応しており、これと相互接続することで、iOSとAndroidがSMS/MMSを介さず、メッセージを送り合えるようになります。

 Googleだけでなく、欧州方面からのプレッシャーも強まってきた中、ついにアップルはメッセージアプリをRCSに対応することを昨年11月に表明。事前に予告していたため、WWDCでの正式発表は特に大きなサプライズではありませんでしたが、その約束は守った形になります。サラッと流していたところからは、渋々対応したような気持ちが伝わってきます(笑)。


(▲画像:iOS 18のプレビューでも、RCS対応が解説されている。吹き出しの色はSMS/MMSと同様、緑色のままになるようだ)

 ただ、RCS対応はiOSユーザーにとっても少なからずメリットがあります。もっとも大きいのは、Androidユーザーにメッセージを送った際にSMSやMMSにならなくて済むということでしょう。SMSやMMSは1通あたりで課金されるため、知らず知らずのうちに料金が上がってしまうおそれがあります。

無料にしている国や地域もある一方で、日本の場合は1通3.3円から。連続でやり取りしていると、いつの間にか金額が上がってしまうこともあります。

(▲画像:SMSの料金。画像はドコモのものだが、おおむね他社も同じ。Androidなどにメッセージを送ると、いつの間にか料金がかかっていることもあった)

 また、SMSやMMSはやり取りできるデータの種類が限定されており、あまりリッチなコミュニケーションが取れません。

これに対し、RCSはRich Communication Servicesの略であることから分かるように、さまざまなデータを送受信可能。記事1本分ぐらいの長文も送受信できる仕様です。加えて言えば、キャリアのネットワークを問わず、Wi-Fi環境で利用できるのもRCSの利点になります。

 もちろん、Androidユーザーも同様の恩恵にあずかれます。その意味で、iOSのRCS対応は影響が及ぶ範囲が非常に広い発表だったと言えるでしょう。iPhoneユーザーにとっても、Androidユーザーにとってもメリットがあるのですから。せっかくなので、Googleも何らかの声明を出してもよさそうです。

 とは言え、GoogleのRCSがユーザーに普及しきっているかというと、必ずしもそうではありません。Googleによると、月間アクティブユーザーは10億を超えているといいますが、国や地域によってばらつきがあります。

日本はそんな国の1つ。GoogleがRCSに対応するより前に、3キャリア共同で「+メッセージ」を立ち上げ、そちらのユーザーが4000万を超えてしまっているからです。

(▲画像:日本では、大手3キャリアが18年5月に+メッセージのサービスを開始している。写真は発表時のもの。Androidからスタートしたが、現在はiPhoneにも対応している)

 また、楽天モバイルもRCSを使った「Rakuten Link」というサービスを独自に提供しています。

RCSには、Universal Profileという相互接続のための規格があり、+メッセージもこれを取り入れてはいるものの、独自の拡張もあって他のRCSとはつながっていません。そのため、Rakuten Linkともメッセージの送受信はできないようになっています。

 +メッセージやRakuten Linkの搭載に伴い、キャリア版のAndroidスマホにはGoogleメッセージがプリインストールされていないことがほとんど

さすがにGoogleの自社端末であるPixelには搭載されているため、徐々に日本でも状況は変わりつつありますが、依然として+メッセージの影響力が強いと言えるでしょう。

(▲画像:日本のキャリアの必須仕様にはGoogleメッセージが入っておらず、メーカーのスマホにはこれがプリインストールされていない。ユーザーはPlayストアからダウンロードする必要がある)

 GoogleメッセージもPlayストアからインストールできるものの、きちんとユーザーに告知はされていない状況です。

一方で、iOSのRCS対応を見越してか、KDDIは5月に開催されたGoogle I/Oに合わせてGoogleメッセージを今後発売する端末にプリインストールしていくことを表明。+メッセージとGoogleメッセージを併存させていく方向性を打ち出しています。

 すでに3キャリア合計で4000万ユーザーを超えているだけに、+メッセージを突然終了させることは難しい状況。キッズケータイなど、+メッセージに対応している一方でGoogleメッセージを載せられない端末も存在します。

かと言って、GoogleメッセージがなければiOSとの相互乗り入れができません。Android上では2つのアプリを入れれば、Googleとキャリア、それぞれのRCSにつながるため、少々分かりづらいことを除けば、併存させておくのがベターな解と言えます。

(▲画像:KDDIは、Google I/Oに合わせてGoogleメッセージを標準採用していくことを発表した)

 放っておいてもPixelのシェアが高まれば自然とGoogleメッセージの利用率も上がってくるため、早々にプリインストールを表明したのは正解。ある意味、WWDCでの発表を見越して先手を打った格好です。残るドコモやソフトバンク、楽天モバイルがどう動くのかにも注目しておきたいところです。


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《石野純也》

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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