火星探査車Perseveranceにトラブル発生。NASAの技術者が復旧に取り組み中

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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NASA/JPL-Caltech/ASU/MSSS

火星上で生命が存在する可能性、またはその痕跡を探して活動中の探査ローバーPerseveranceに、トラブルが発生し、科学データの収集に支障が出ています。

問題が発生しているのは、Perseveranceが搭載している7つの科学機器のひとつ「SHERLOC」。

イメージング装置と紫外線ラマン分光計で構成されており、カメラ、分光計、レーザーを使って、かつて水が存在した環境で変質した有機化合物や鉱物を分析し、過去に微生物が生息していた痕跡(つまり有機化合物が存在するかどうか)を調べるために用いられます。

SHERLOCはこれまでに34の岩石サンプルの分析に使用され、その分析データからは合計261のハイパースペクトルマップが作成されています。

しかし先月、NASAのチームはSHERLOCの2つの開口部を保護する開閉カバーのうち、ひとつが部分的に開いたままの不正な位置になっていることを発見しました。

このカバーの位置は、分光計を使用する際に邪魔になってしまうため、岩石サンプルにレーザーを照射できず、分光データを収集できません(もう一方の開口部を使い、岩石粒子や表面の模様をクローズアップ撮影するイメージング装置WATSONは使用可能)。

そのため、エンジニアらは「カバーのモーターの動作を詳しく把握するために、機器に供給される電力量を変更するコマンドを送信」し、その応答を調査しているとのことです。

なお、もしカバーが正常に復旧できなかったとしても、以後のPerseveranceの火星探査活動において分光データの取得が全くできなくなるわけではありません。

科学者らは、この火星ローバーの開発の際、7つの科学機器の機能を一部重複させるように考慮して設計しました。そのため、SHERLOCの分光計がこのまま使えなくとも、X線岩石化学用惑星計器(PIXL)と、SuperCamもそれぞれ分光計を機能の一部に組み込んでおり、それらを使用することはできるとNASAは述べています。


Perseveranceは、2023年12月12日に火星滞在1000ソル(火星での日数)を達成し、現在も探査活動を続けています。これはすでに名目上の運用期間を超えています。

先日には、Perseveranceに抱えられる格好で火星にやってきた火星ヘリコプターこと「Ingenuity」が、予定されていた5回の試験飛行を大幅に超える、72回のフライトを実施してきたものの、ローターの一部が破損したことを受けて、その活動を終了しています

とはいえ、Perseveranceの先代にあたり、火星着陸から12年目を迎える探査ローバーのCuriosityが、現在も赤い大地を駆け回って貴重なデータを収集し続けていることを考えると、Perseveranceもまだまだ忍耐強く活動を続けることが期待されています。



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