人類初の偉業、13歳少年がテトリスNES版に「完勝」。ゲームが壊れるまでプレイ、2021年に達成のAIに続く

ゲーム Nintendo
Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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人類初の偉業、13歳少年がテトリスNES版に「完勝」。ゲームが壊れるまでプレイ、2021年に達成のAIに続く

1989年に発売されたNES(海外版ファミコン)用『TETRIS』を、米国在住の13歳少年が人類として初めて「倒す」偉業を成し遂げました。

英語でゲームを「倒す」(beat)とは、通常は最後までクリアする、ラスボスを「倒す」ことを指します。しかしここでは、スコアやレベルなどの数値がプログラムの想定を超える領域に到達した結果、内部的にオーバーフロー等のエラーを起こし、ゲームをクラッシュや停止させる意味。

NES版テトリスは一定のレベルでほぼ操作不能な速度に達することから、テトリスが固まるまでプレイを継続する= 完全勝利するのは、物理的にコントローラを使わず完璧な操作ができるプログラムだけで、長らく人間には不可能と考えられていました。

NES版テトリスのエンドレスモードは、他の移植版と比べて非常に難しいことで知られています。

その主な原因が、レベル29以降では追いつくのが不可能と思える程のスピードでテトリミノ(ブロック)が落ちるため。左右のタメ移動(押しっぱなし)だと横に数マスしか動かせず、長らく事実上のゲームオーバーと呼ばれていました。

しかし、2017~2018年頃には「ハイパータッピング」という技術が登場。要は十字キーを連打することでタメ移動よりも速く動けるテクニックですが、1秒間に10回以上も連打する必要があるため、習得が非常に難しく、また筋肉や指に負担がかかってケガをすることもありました

さらに2020年には、十字キーに指を添え、別の指でコントローラーの下を叩く「ローリング」というテクニックが登場。こちらは指への負担が軽いため、クラシックテトリス世界大会CTWCに入賞したほとんどの選手が何らかの応用を使っていました。

さて、今回の偉業を成し遂げたのは13歳の少年「Blue Scuti」氏(プレーヤーネーム)。かつては人類限界と考えられていたレベル29を軽々と通り越しており、約38分の激闘の末にゲームがフリーズ(テトリスに勝利)。手袋を脱ぎながら「オーマイゴッド……」と興奮を露わにしています。

また、今回のプレイによりScuti君はハイスコア記録、レベル達成記録、総ラインクリア世界記録を更新しています。

そして試合後、Scuti君はこの偉業を12月に他界したばかりの亡き父に捧げるとも語っています。

AIプログラム「StackRabbit」がNES版テトリスの息の根を止める動画はこちら。

肉体の限界を超えるため様々なテクニックを編み出す人間の可能性は、まだまだ果てしないのかもしれません。

《Kiyoshi Tane》
Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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