今年初め、米クアルコムはAndroidスマートフォンに衛星通信機能をもたらす「Snapdragon Satellite」を発表しました。これは、衛星通信の大手プロバイダであるイリジウム・コミュニケーションズとの契約も伴っていました。
しかしイリジウムは、クアルコムが2023年12月3日をもって契約終了を通知してきたと明らかにしました。
Snapdragon Satelliteは、「世界初の衛星通信ベースのスマートフォン向け双方向メッセージング・ソリューション」を謳うもの。具体的には「緊急用の双方向メッセージやテキストSMS」等を挙げており、アップルがiPhone 14シリーズ以降に提供している「衛星経由の緊急SOS」機能に対抗する動きとみられていました。
イリジウムは「この技術の開発と実証に成功しました」と前置き。その上で「スマートフォン・メーカーはこの技術を搭載していない」として、契約終了の理由を説明しています。
クアルコムはSnapdragon Satellite発表にあたり、Honor、Motorola、Nothing、OPPO、vivo、XiaomiといったAndroid主要メーカー各社と協力していると述べていましたが、いずれも搭載デバイスを開発せず、あるいは開発中止した模様です。
クアルコムは米CNBCへの声明で、スマートフォンメーカー各社は衛星通信につき「標準ベースのソリューションを好む傾向がある」と語っています。要はクアルコムの独自技術に依存せず、よりオープンな規格に基づく(高額なライセンス料を支払わずに済む)アプローチを探っているようです。
また、衛星通信にかかるコストの高さに、各社が二の足を踏んでいるのかもしれません。アップルは衛星通信インフラ構築に4億5000万ドルを投じていますが、iPhone 14/15シリーズ全機種につきアクティベーション後2年間は無料で提供し続けてコストを負担しています。それにより、少なからず人命が救われてきました。