改悪の声が広がる楽天SPU、試算すると実は楽天モバイルユーザー優遇の改定だった(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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改悪の声が広がる楽天SPU、試算すると実は楽天モバイルユーザー優遇の改定だった(石野純也)
  • 改悪の声が広がる楽天SPU、試算すると実は楽天モバイルユーザー優遇の改定だった(石野純也)
  • ▲楽天グループは、12月1日からSPUの特典内容を改定する
  • ▲楽天モバイルの特典変更が大きな特徴。通常ポイントと合わせた際の還元率が、3~4%から一律で5%にアップする予定だ
  • ▲楽天ひかり/Rakuten Turboやキャリア決済のポイント還元率も上がり、より貯めやすくなる
  • ▲上限額は軒並み減少。ポイントが貯まりやすくなった半面、天井はかなり低くなった
  • ▲モバイル関連の還元率が上がっているため、5万円までの買い物に対してならポイントが貯まりやすい
  • ▲楽天市場の流通総額は、22年度で約5.6兆円。平均アクティブユーザーがグループ全体で3900万であることを踏まえると、現SPUで上限に達していたユーザーは少ないと言えそうだ

楽天グループは、12月1日からSPU(スーパーポイントアッププログラム)の“中身”を大幅に改定します。SPUとは、サービスの利用状況に応じて追加で付与されるポイントが増加する仕組みのこと。楽天市場での買い物が対象になります。

楽天モバイル契約で何倍、楽天カードで何倍といった形でポイントが上乗せされていく仕組みですが、この倍率と上限ポイントが12月から変更になります。

▲楽天グループは、12月1日からSPUの特典内容を改定する

その中身を簡単に言えば、楽天モバイル契約者をより優遇する一方で、楽天カードなど、その他サービスの比重を下げるというもの。

これまで楽天モバイル契約者は通常だと2倍(プラス2%)、ダイヤモンド会員だと3倍(プラス3%)になっていましたが、この区分を撤廃したうえで、ポイント付与率を4%に上げます。

楽天市場は基本的に1%還元をしているため、楽天モバイルを契約するだけで常時5%還元になるというわけです。

▲楽天モバイルの特典変更が大きな特徴。通常ポイントと合わせた際の還元率が、3~4%から一律で5%にアップする予定だ

また、楽天モバイル関連では固定回線や固定回線代替サービスの楽天ひかり/Rakuten Turboや、楽天モバイルのキャリア決済利用の還元率も上がっています。

モバイル回線の契約に加え、周辺サービスまで含めれば、楽天モバイル関連だけで最大9%まで還元率が上がることになります。

一方で楽天プレミアムカードの付与率は4倍から2倍にダウン。その他サービスも還元の上限が軒並み落ちているため、楽天モバイルシフトをより強めたと言えるでしょう。

▲楽天ひかり/Rakuten Turboやキャリア決済のポイント還元率も上がり、より貯めやすくなる

ただ、ネットでは改悪との評価が少なくありません。X(旧Twitter)では、ポイ活の還元率が悪化した際の“定番ネタ”になりつつある「嫁が泣き崩れた」という投稿も多数見かけました。

その最大の理由は、上限額が大幅に縮小したためです。確かに、楽天モバイル契約での還元率は上がっているものの、還元額の上限は最大7000ポイントから2000ポイントに減少。楽天ひかり/Rakuten Turbo契約時の上限も、5000ポイントから1000ポイントへと1/5になっています。

楽天プレミアムカードに至っては、通常分+特典分の還元率が4%から2%へと低下していることに加えて、上限額も1万5000ポイントから5000ポイントへと1/3になっています。

倍率が変わらなかったSPUも、上限額は軒並み低下しています。上限いっぱいまでポイ活していた場合、付与される額が大幅に減少してしまう格好になります。ポイントで生活をまかなっていたとすると死活問題。改悪がトレンドに上がる事情もうなずけます。

▲上限額は軒並み減少。ポイントが貯まりやすくなった半面、天井はかなり低くなった

とはいえ現状、ダイヤモンド会員の楽天モバイルユーザーが上限である7000ポイントを獲得するには、楽天市場で約23万円の買い物をする必要があります。

1%の楽天ひかり/Rakuten Turboの上限5000ポイントにはさらに買い物が必要になり、その額は50万円に。0.5%のキャリア決済や楽天ウォレットの上限達成には、なんと100万円が必要になります。実際問題として、楽天市場だけでこれだけのお金を使うのは相当レアと言えるでしょう。

これに対し、12月1日からのSPUであれば、楽天モバイルを契約しているだけで楽天市場の還元率は5%に。5万円の買い物をすれば、楽天モバイルぶんの2000ポイントが上乗せされ、計2500ポイントを得られます。

決済時に楽天カードを使えば7%で計3500ポイント、楽天ひかりやRakuten Turboも契約していれば9%で4500ポイントになります。加えてGoogle Playで楽天モバイルのキャリア決済を利用していれば、11%、5500ポイントまで獲得ポイントは上がります。

▲モバイル関連の還元率が上がっているため、5万円までの買い物に対してならポイントが貯まりやすい

ここで挙げた楽天モバイル、楽天ひかり/Rakuten Turbo、キャリア決済は、いずれも5万円で上限に到達します。逆に言えば、この程度までの利用をターゲットにしているということでしょう。

5万円であれば、現行のSPUより獲得ポイントが増えるため、お得になるユーザーは多いでしょう。実際、楽天グループによると、8割以上のユーザーは付与率変更でむしろ獲得ポイントが増えるか、ほぼ変わらないとしています。

見方を変えれば、現状のSPUは楽天市場でひたすら買い物をする、超ヘビーユーザーに適した仕組みです。これに対し、改定後のSPUはより楽天モバイルユーザーを優遇しつつ、広い層に向けて還元を行っていると言えるでしょう。狭く濃くポイント付与していたところを、広く薄くに変えているというわけです。ネットに改悪の声があふれたのは、こうした濃いユーザーほど声が大きいからかもしれません。

楽天市場の流通総額は、22年度が年間5兆6301億円。月間平均アクティブユーザーは3900万のため、単純にこの数値で流通総額を割ると、14万円強になります。1か月にならすと約1万2000円。分散や楽天市場の厳密なユーザー数が分からないため、あくまでザックリとしたイメージをつかむための数字でしかありませんが、毎月コンスタントに5万円超を楽天市場に落としているユーザーは少数派と言えそうです。楽天グループが言うように、多くのユーザーがプラスになるのは間違いないでしょう。

▲楽天市場の流通総額は、22年度で約5.6兆円。平均アクティブユーザーがグループ全体で3900万であることを踏まえると、現SPUで上限に達していたユーザーは少ないと言えそうだ

ただし、これは楽天モバイルを契約していた場合の話。楽天モバイル契約なしで楽天カードと楽天銀行を中心していたり、楽天プレミアムカードでポイントを稼いでいたりすると、獲得ポイントの低下は避けられません。冒頭で述べたように、楽天モバイル優遇を強化したというわけです。

逆に、楽天モバイルさえ契約すればすぐにポイント還元率が上がるのは魅力的。その意味では、SPUがよりモバイル中心になったということができそうです。


《石野純也》

石野純也

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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