非破壊ブックスキャナCZUR「ET24 Pro」をオーバーヘッドカメラとして使う。2400万画素CMOSセンサ搭載機の実力は?(本田雅一)

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本田雅一

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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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非破壊ブックスキャナCZUR「ET24 Pro」をオーバーヘッドカメラとして使う。2400万画素CMOSセンサ搭載機の実力は?(本田雅一)
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CZURはオーバーヘッド型カメラを用いたブックスキャナのメーカーとしては草分けのメーカーだそうだ。上方からカメラで書籍のページを捉えるため、本を裁断せずに電子化できる"非破壊型ブックスキャナ"であることが一番の魅力だ。

筆者は"ブックスキャナ"というジャンルをほとんど追いかけていなかったため、このメーカーのことを全く知らなかったのだが、確かに歴史あるメーカーである。

電子書籍デバイス黎明期に大きな話題になった"本の電子化"、いわゆる"電子書籍の自炊"だが、その後、電子書籍の流通が当たり前になってきたことで光の当たる機会が減っていたことも影響しているだろう。

とはいえ、本を裁断することなく電子化するニーズは現在も少なくはなく、また業務用途では図や写真も含め、さまさまな資料を電子化する場合に使われているようだ。同社のラインナップを見ると、折りたたみ式のコンパクトなモデルから、照明用LEDライトの角度や位置を工夫したモデルまで様々な製品が用意されている。

今回はその中で、10月4日までMakuakeでのクラウドファンディングが行われているCZUR「ET24 Pro」を使ってみた。

この製品は同社の輸入代理店から試用をオファーされたものだが、実際のところ、当初はあまり興味を持つことができなかった。本の多くを電子的に購入し、資料の大多数は電子配布されているため、「電子書籍の自炊」をはじめとする紙資料のスキャンに大きなモチベーションがなかったからだ。

それでも"使ってみよう"と考えたのは、本機を動画撮影用のUSBカメラとしても利用できる(当然、静止画の撮影も可能)と知ったから。

少々、異例かもしれないが、今回の記事では「オーバーヘッドカメラ」として書き始めることにしたい。もちろんブックスキャナとしても利用してみた。

なお、ET24 ProにはET18 Proという旧モデルが存在し、機能的には同じ。使用するアプリケーションも同一で、違いは搭載されるカメラの画素数(2400万画素対1800万画素)のみであるため、ネットなどで見つかるET18 Proの情報はET24 Proでも(画素数、画質以外は)共通と考えていいだろう。

簡単設置で鳥瞰カメラを利用できる

ET24 Proは書籍スキャナであるため、およそA3サイズのエリアに対し台形補正することなく真上から撮影できるようカメラが配置され、その両脇には明るいLEDライト、さらにカメラを支える支柱部分にはサイドライトも備える。

本にムラなく照明が当てるためのものだが、いうまでもなくこれらは手元にある様々な小物などの写真撮影、動画撮影する際にも便利に使うことができる。

専用アプリ「CZUR Scanner」には"プレゼンテーションモード"という機能があり、昔よく使われていたオーバーヘッドプロジェクターのように、手元の資料に対して図を書いたり、ジェスチャーを加えるなどして動画に収める機能も備える。「CZUR Scanner」はWindows、Mac、Linux用はあるがスマートフォン向けはない。

が、実のところハードウェアとしてのET24 Proは、PCやMacからはUSBカメラとして認識される。したがってUSBカメラを映像ソースに録画するアプリケーションを用いれば、簡単に動画での記録が可能だ。

評価ではフリーで配布されている動画配信ソフトのOBSを用いたが、動画編集ソフトにもカメラからの録画機能はあるものも多い。

要はUSBカメラを記録できるソフトならば、どんなものでもいいということになる。また本機の上部にはカメラの映像をプレビューできる液晶画面が配置されている。簡易的なもので、トーンカーブや色味をを確認できるほどの画質はないが、フレーム内に被写体が収まっているか、位置が適切かどうかなどの確認ができる。

低価格な製品にはこうしたプレビュー用ディスプレイがないため、手元で何かを操作したい場合に適切な位置にコントロールしにくいが、ET24 Proはその点、十分な視認性をもたらしてくれる。

視野角が狭いため、手元で撮影対象を操作している時などは大まかにしか判断できないが、それでも液晶画面が目の前にあるのは便利だ。接続しているパソコン側でも映像確認は可能だろうが、ワイプ映像で自分自身を写し込みたい時などは、目線をそうそうパソコン画面にばかり向けてはいられない。

これだけでも鳥瞰カメラとしてめちゃ便利と感じる。

ただし、元々が"静止画・動画"用のカメラではないためか、改善してほしい部分はいくつかある。

"ブックスキャナ"と"オーバーヘッドカメラ"の両立を

本機に搭載されているカメラは、あらゆる面でブックスキャナとして最適化したハードウェアになっている。

CMOSセンサーは2400万画素と十分な画素数で、これは特に小さな文字の書籍をスキャンするのに役立つ。付属アプリはコントラストをつけてページを加工し、文字のエッジをシャープに見せてくれる。また被写界深度(ピントの合う範囲)も広くとられているので、本の厚みや紙の湾曲がある場合でもピントが外れることもない。

ホワイトバランスやコントラストの付け方も、アプリケーション側で画像処理は行っているが、ハードウェア本体のチューニングとして"即座にホワイトに合わせ"、"コントラストを最大化させる"ことを念頭にチューニングされている。

ただし、これらのチューニングはオーバーヘッドカメラとして使った場合には、必ずしもプラスではない。

シャープネスが強くかかるため輪郭がやや不自然になるほか、メッシュ部などでモアレが発生しやすい。また照明環境やカメラ内に写す被写体、あるいは手で被写体を操作する際に映り込む手の位置や大きさなどにより、ホワイトバランスが短時間にコロコロと変化する。

これはコントラストも同じで、コントラストを高く加工する(特にシャドウを強く引き込む。文字を明瞭にするためかもしれない)傾向があり、それが動画の中で大幅に変化することがある。

これらはブックスキャナとして考えれば妥当なチューニングだが、動画カメラとしては安定感がないとも言えるだろう。総じて言えるのは「もう少し落ち着いた振る舞いになってほしいということだ。

特にホワイトバランスやトーンカーブ、明暗のレベル調整などは撮影開始後は固定、あるいは緩やかな時系列変化になってほしい。

実際の画質や動画における振る舞いは、サンプルに作成した動画を見ていただきたいが、カメラのモードとして明示的に静止画、動画撮影時とブックスキャンのモードを分けられれば解決するのではないだろうか。

なおコントラストとモアレは修正が難しいが、ホワイトバランスに関しては動画編集ソフト側にカラートーンをシーンごとに統一する機能を用いれば修正できなくはない(やや手間ではあるが)。

とはいえ、鳥瞰構図をセットアップする手間を考えれば、これら細かな点も目を瞑れないわけではないと思う。

▲CZUR ET24 Proをオーバーヘッドカメラとして使ってみた

便利だが影が強く出るLED照明

何か文句ばかりを書いているような気もするが、あくまで本機はブックスキャナである。手元撮影用の汎用カメラとして使うのがやや無理筋な話ではあるので、こうした仕様も本来の目的には適っている。それはLED照明の機能でも同様だ。

オーバーヘッドカメラの左右にはライン状に並ぶホワイトLEDで照明が付いており、2段階に照度を変えて被写体を明るく照らせるが、これとは別に斜め上から照らすサイドライトが付属していることはすでに紹介した。

ブックスキャナとして使う場合、テカリのある紙質の場合はカメラ脇のライトを消し、サイドライトのみで撮影すると具合がいい。複数の角度から照明が当てられるのは、動画撮影時にも役立つが、元々が書籍に特化しているため、LED照明にありがちな影がシャープに強く出ることに関しては対策が施されていない。

あまり気にしなければ、影がシャープに出ても問題ないだろうが、もし本機を将来的にオーバーヘッドカメラとして育てるのであれば、レンズやLED配置に工夫するなりすると、さらに使いやすさが増しそうだ。

ただ簡易的に使うならこれでも十分。もしこだわってライティングをするならば、別に照明を用意してもいいかもしれない。

ただし、別に照明を用意するのであれば、同じCZUR製ブックスキャナでも「Shine Ultra Pro」など、カメラヘッドが折りたたみ式の方が使いやすく感じる場合もあるかもしれない。

(その場合、折りたためる一方でサイドライトやプレビューディスプレイは利用できなくなる)

ブックスキャナとしてのET24 Pro

本来の目的外での評価から書き始めたが、ブックスキャナとしてのET24 Proは、長い歴史を持っているだけに多様な状況に対応できるよう作り込みがされている。

その中には撮影トリガーになるフットスイッチ(ハンドスイッチも同梱)といったハードウェアの部分もあるが、主な工夫はソフトウェアのレイヤで実装されているものだ。

ページの端は指で押さえていても、自動的に指をソフトウェア処理で消してくれるが、より確実に消すために特徴的なマーキングがされた指サックが添付されている。これで両端を押さえてスキャン(撮影)すれば、より確実にカメラ画像を適切に処理してページ抽出を行える。

もちろん、本の湾曲は自動的に補正されるが、こちらは単純な画像処理ではなく、LEDレーザーで本に三本の補助線を照射し、湾曲カーブを正確に検出した上で処理を行うため、段落の中で文字が歪んで読みにくくなるといったこともない。

輪郭処理やコントラストの付け方などは、文字部分を読みやすくするよう写真や挿絵の部分とは異なる処理が施されてるようで、A3時は320dpi、A4時は440dpi(二段階の切り替え)となる画素密度以上に、小さな文字でもきちんと視認でき、フォントデザインも的確に再現される。

写真や挿絵の画質は硬質で、動画撮影時と同じく黒を引き込んだコントラストの高いものだが、さしあたって写真の再現性に強く拘らなければ十分なものだ。

これらはCZER Scannerがアップデートされるごとに改善しているようなので、今後も品質向上が期待できるだろう。ただ、慣れないうちは撮影(スキャン)に失敗することもあり、うまくページ抽出できないケースもあった。

PDF化やOCR処理などは撮影後に一括処理で指示する必要があり、後から撮影失敗に気づくと面倒なことになるため、確実を期すならばページめくりの自動検出機能は利用せず、指サックで確実にページを開いてフットスイッチでスキャンする方が、トータルでの作業の手間は省くことができるだろう。

LED照明もブックスキャナとして使う上ではとても有用だった。さすがに最上位モデルというだけはある。

そう、当たり前のことだが、この製品は裁断することなく本をスキャンするための装置であり、本来はスキャナなのだ。どの程度の質で読み取れるかは、拙著の旧作をスキャンしてみたので確かめて欲しい。なお本製品は名刺を適当に並べておき、それぞれを自動的に切り抜いて保存するといった使い方もできる。

▲拙著をET24 Proでスキャンした結果

熟成の最上位モデルだが"そろそろ再構築"も望まれる

本製品は忖度なくブックスキャナとして、あるいは書類スキャナとしての利便性は高い。名刺のスキャンであれば正直、別方式でもいいと思うが、非破壊のブックスキャナとしては十分に熟成されていると思う。

ただし基本的なハードウェアの機構設計はやや古く感じる。本体やボタンのメッキ部の質感がやや前時代的な印象もある。ハードウェアの機能としては充実し、CMOSセンサーも最新に更新されたことで文字の明瞭度も上がっているので、そろそろ最新のメカ設計で再構築してもいいのではないだろうか。

しつこくて恐縮だが、熟成のブックスキャナ機能に、オーバーヘッドカメラとしての使いやすさが加わり、さらに折りたたみなど収納性にも配慮していれば、本機の価値はさらに高いものになるだろう。

デジタル化の新時代へ。10周年旗艦スキャナー|CZUR ET24 Pro|マクアケ - アタラシイものや体験の応援購入サービス

Makuakeでの応援購入は10月4日まで。


《本田雅一》

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