iPhone 15とProでUSB-Cに差を付けたAppleの事情。機能の違いから買い替え時期を検討する(本田雅一)

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本田雅一

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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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iPhone 15とProでUSB-Cに差を付けたAppleの事情。機能の違いから買い替え時期を検討する(本田雅一)
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iPhoneがUSB-Cコネクタを採用するという話題を聞いて「では迷っていたけどこのタイミングで買い換えよう」と検討をしている方もいるだろう。

性能もカメラの画質も十分に高まっている近年のiPhoneは、毎年買い替える製品というよりも「どのタイミングで買い換えようか」「買い換えるなら無印とPro、どちらがいいだろう」といった視点で考えている読者も多いのではないだろうか。

そこで"USB-Cへの切り替え"が、iPhone選びにどの程度影響するのかについて、考えてみることにしよう。



USB-C端子搭載でiPhoneは何が変わるのか

話をシンプルにするために、まずは事実関係を箇条書きで整理しよう。

  • USB-C(USB Type-Cコネクタ)を新発表の全モデルで採用

  • USB-Cからの充電はUSB Power Deliveryに対応。最大27Wまで(iPhone 14などと同じ)

  • USB-Cからの給電も可能だが最大出力は4.5W

  • USB-Cに対応するUSBデバイスを接続可能

  • 10GbpsのUSB 3.0規格対応は iPhone 15 Pro / Pro Max のみ。A17 Pro以降のSoCが必要

  • 10Gbps高速通信に対応するケーブルはProでも同梱しない(最大480MbpsのUSB 2.0ケーブル)

  • iPhoneのUSB-C対応に伴い、iPhone以外の既存製品で端子に変更があったのはAirPods Pro(第2世代)のみ

  • LightningからUSB-Cへの変換アダプタを提供

以上を具体的な利用シーンに置き換えてみると、まず充電速度については"変わらない"。従来もUSB PDを用いていたため、振る舞いとしてはiPhone 12世代以降と全く同じとなり、充電器との相性(急速充電の可否)も含めて従来通りだ。

USB-Cになるなら、35W以上の充電に対応しても良さそうだが、採用しないのには何か理由があるのだと思う(流通しているケーブルの問題やバッテリー劣化懸念など)。

次にUSB-Cでコンピュータホストに接続するデバイスを接続できるものの、4.5W以上の給電を必要とする周辺機器等は動かない。本体バッテリーのことを考えれば妥当だが、iPadでも全てのデバイスが動くわけではない。OSの大部分を共有するため"iPad相当"と考えるべきだろうが、例えばデジタル一眼などのデバイスを接続し、転送しながら撮影するのは便利そうだ。当初は対応していない場合でも、いずれカメラメーカーが対応することも期待できよう。

俯瞰してみると、「USB-Cに変わった」ことが買い替えの節目を作るトリガーとして適切かと言えば、実はかなり弱いのではないだろうか。

つまり、Lightning端子を持つデバイスを他に所有しておらず、なるべく早くUSB-Cに切り替えたいという人以外は、切り替える強い理由はないと思うのだ。せめて充電速度が向上していれば、来年ではなく今年買い替える理由にもなろうというものだが。


USB-C端子採用は"急な対応?"

ところでこのように記事を書いている筆者は、実はそこまでLightningを嫌っていない。理由はMade for iPhone(MFi)認証だ。

評判の悪い MFi 認証だが、ユーザーの立場から言えば接続がきちんと保証される利点でもある。端子内に埋め込まれたチップを用いて、そのケーブルの素性などを認識し、性能に満たない製品を排除できる。

実際にはそうした認証を騙すものもあり、中途半端な対応で買ってはみたけど使えない、なんていう"中華ケーブルあるある"も話としては聞くが、カードエッジ型のLightningコネクタは曲げに対する耐久性も高く、サイズの面でもUSB-Cより有利だ。

アップルとしても、Webページではコネクタの共通化メリットをうたっているが、元々はUSB-Cに切り替えるつもりはなかったのではないだろうか。

USB-Cへの切り替えでThuderbolt 3/4への対応を期待する声も耳にしていたが、Thuderbolt 3/4は速度だけではなく仕様面でも大きすぎて対応は難しい。というよりも"できない"が正しい。

iPadと比べると、周辺デバイスとのダイレクトな接続が必要になる用途も少なく、周辺機器市場が育つようにも思えない。となれば、現実的には今回の10Gbps転送に対応すれば良いだけで、Lightning端子のままやろうとしても可能だったのではないか。

今回、iPhone 15 Pro/15 Pro Maxに搭載される新しいSoCのA17 Proには10Gbpsの高速通信が可能なUSB 3.0に相当する転送モード対応の回路が組み込まれている。従来は480Mbpsだったので隔世の感があるが、SoCに組み込んでいるということは、かなり以前(おそらく2~3年程度)からこのインターフェイスを組み込もうとしていたのではと思われる。

欧州委員会によるUSB-C採用への圧力で切り替えたものの、本来のプランでは物理的なコネクタとしてLightningを継続しようとしていた、というのが筆者の見立てだ。

サスティナビリティを理由とした端子の統一は、以前から話題になっていたことであり、それなりの準備はしていただろう。しかし、とてつもなく多いLightning対応製品(ケーブルだけではない)を考えれば、性急な切り替えはむしろ環境負荷を高めるだけ。

AirPods Pro(第2世代)こそUSB-Cになったものの、それ以外は切り替わっていない。「切り替えのシナリオ」は用意していても、このタイミングを見据えて数年前から行おうとしていたことではなさそうだ。


"無印"も来年は10Gbps対応になる

それはともかく、Proモデルは必要ないけれど、iPhone 15はいいなと思っている読者は、やはり10Gbpsモード非対応が気になるところだ。

あくまで推測だが、iPhone 15シリーズとiPhone 15 Proシリーズの両方をA17 Proにすることは歩留まり上、困難が大きかったのかもしれない。昨年もアップルはナンバーシリーズとProシリーズのSoC世代を変えていたが、本来は同じ設計で量産スケールを高める方が有利だ。

例えばA17 BionicとA17 Pro、二つの名前にして前者のGPUコアやNeural Engineのコアを減らしても良い。これならUSBインターフェイスは同じものだから、10Gbpsで転送できる。

アップルにとってのデメリットは、両SoCのダイ面積はほとんど同じだろうと推測すると、歩留まりが悪く、今後、生産を続けて歩留まり率が良くなってもコスト的に見合わない、あるいは出荷見込みを満たすだけの収量が得られないといったところだろうか。

言い換えれば、同じ3ナノメートルプロセスでも改良型になっているだろう来年は、両シリーズとも同じA18になるんじゃなかろうか。少なくともA17にはなるだろう。

ということで、Pro Motionによる滑らかなタッチと画面アニメーションや Pro Maxの望遠カメラ、チタンの質感などが目当てでないのであれば、USB-Cへの切り替えを過剰に評価するのではなく、冷静になってゆっくり考えてみればいい。

逆に元々、Proシリーズを検討していたならば、これはもう15 Pro Max一択だろう。軽量化、重量バランスと持ちやすさの改善、120mm望遠カメラなど15 Proとの差は大きい。

もちろん、今所有している端末が何かにもよるが、ここ数年のどこかでという迷い方をしているならば、いつ買うのか? と言えば、それは今年だと思う。



iPhone 2023特集
《本田雅一》

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