「超音波ホログラム」で瞬時に3Dプリントする技術、ドイツの研究者チームが発表。臓器の3Dプリントに応用も

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Munenori Taniguchi

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マックス・プランク医学研究所とハイデルベルク大学が「touchless 3D printing」と称する技術に関する論文をScience Advances誌に発表しました。

この技術は従来の、フィラメントをミルフィーユのように何層にも重ねていく成形方法ではなく、超音波で材料となる物質を動かして立体を作り、互いに結合させることで完成します。

実験では最大でも1インチ(約2.54cm)未満の大きさのものしか作れていませんが、この技術が発展すれば、将来的に生体細胞を目的の形状に瞬時に組み立てることが可能になる可能性があるとのこと。

研究の筆頭著者であるKai Melde氏は、直接触れずに成形できる超音波のメリットについて「接触せず、遠隔で組み立てられるので、無菌かつ適切な状態に保つことができる」と述べました。

従来の3Dプリントによる生体細胞の成形では、細胞に機械的または化学的なストレスが加わってしまうため、理想的ではなかったとのことです。

たとえば大音量のコンサート会場に行ったことがある人なら、巨大なPA機器から発せられる重く響く低音が内蔵を揺らすのを感じたことがあるかもしれません。

Melde氏らが研究を始める前にも、研究室では超音波で小さな粒子状の物質を動かし、色々な形を作る研究が行われていました。その研究を見てMelde氏は、3D空間に音のホログラムを作れば、瞬時に目的の形に材料を成形できると閃いたとしています。

とはいえ、実際に音で3Dホログラムを生み出すのは非常に困難なことだったとMelde氏は説明しています。というのも、3Dに加工しようとすれば3つのホログラフィックフィールドを作り、それを一点に重ね合わせて、相互に作用させる必要があるとのこと。これを計算するのに必要なアルゴリズムは非常に複雑で、高いコンピューターの計算能力が必要になりました。

Melde氏は「ホログラフィックフィールドを作るための作業が3Dになったとたんに、処理に必要なメモリー要件が跳ね上がる」のだ述べ「その上、体積全体の波動場を計算する必要があり、このプロセスは最適化プロセスしながら何度も繰り返す必要があったと説明しました。

そこで研究者たちは、ゲームに用いられるGPUカードと、Googleの機械学習用ソフトウェアライブラリーTensorFlowを用い、新しい演算処理を考案して必要な計算を処理させることにしました。

そして、計算が完了すると、今度は実際にオブジェクトをプリントする作業になります。研究に使用した装置では、培養液に浮遊する細胞粒子に音波を加えて成形し、ダメージを与えずに設計することに成功しました。最初の実験で作れた最も大きなものは、直径約10mm、長さ約20mmの2回転らせんだったとのことです。

この方法はまだまだ、指先ほどの大きさのオブジェクトしか作れません。しかしそれは将来、移植用臓器を3Dプリントで、しかも瞬時に作り出す時代に向けた第1歩と言えるかも知れません。

Compact holographic sound fields enable rapid one-step assembly of matter in 3D

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adf6182


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《Munenori Taniguchi》
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