PlayStation VR2レビュー 『Horizon Call of The Mountain』を遊んで費用対効果を考える #PSVR2

ゲーム Sony
Ittousai

テクノエッジ編集長。火元責任者兼任 @Ittousai_ej

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PlayStation VR2レビュー 『Horizon Call of The Mountain』を遊んで費用対効果を考える #PSVR2
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2月22日に発売を控えるPS5用VRヘッドセット、PlayStation VR2のレビューをお伝えします。

ハードウェアの概要とセットアップ編に続いて、今回は同梱版もあるローンチタイトル『Horizon Call of The Mountain』で試した実際の使用感について。


『Horizon Call of The Mountain』は「ホライゾン」世界の山々を踏破し巨大な機械獣と戦う一人称VRゲーム。PS VR2最大の技術的トピックであるアイトラッキングを使ったインターフェースや、グラフィック性能を底上げするフォビエートレンダリングの効果も確かめられるタイトルです。


PlayStation VR2 "Horizon Call of the Mountain" 同梱版(CFIJ-17001)
¥79,980
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

(注意:ストーリー進行に関する重大なネタバレはありませんが、ゲームの概要や序盤の展開について多少触れます。公式で公開済みの要素を含め完全に事前情報なしで遊びたい場合、一番下のまとめまで飛ばしてください。)

『Horizon Call of the Mountain』は、いまやプレイステーションの看板作品になったオープンワールドRPG『Horizon』シリーズのスピンオフ作品。

謎の大災厄で現代文明が崩壊してから千年後、異形の機械獣が支配する地球で、人類は部族社会を構成して生き延びている世界観です。

人気を博したのは、朽ちた高層ビルなど旧文明の遺構が荒々しい大自然に覆われた北米大陸の様子と、水陸空を跋扈する「Machines」こと機械獣たちの鮮烈なビジュアル。本編のホライゾンでは、恐竜や大型哺乳類型の機械獣を弓や槍、様々な罠と道具で狩るアクション、千年後の地球を巡り大災厄の真実に迫る物語も大きな魅力でした。

今作『Horizon Call of the Mountain』は没入感の高い一人称視点VRになったことで、この機械獣たちの実在感、迫力が圧倒的。本編でも見せ場のひとつだった全高数十メートルの機械獣「トールネック」などは、足元から見上げれば現実に首が痛くなり目眩がしそうな巨大さを実感できます。

プレーヤーは本編の主人公アーロイと敵対した「シャドウ・カージャ族」の戦士にして登山の達人レイアス。贖罪のためにある使命を与えられ、急峻な地形に挑み弓やアイテムを使って機械獣たちと戦うことになります。

シリーズ本編を遊んでいれば、あのホライゾンの世界がまるで精緻なテーマパークで再現されたかのように、おなじみの機械獣や登場人物と主観視点で改めて出会う楽しみもあります。
(重大なネタバレ:高画質なVRで対面するアーロイ、めちゃめちゃ美人でかわいい)

主観VRアクションのお作法に忠実+新鮮な要素も

基本的な操作については、Oculus Rift や HTC Viveで花開きQuest世代で確立したVRゲームの「お作法」を忠実に取り入れた、主観VRゲームの集大成的な内容。

PS VR2 Senseコントローラでプレーヤーの手と指がそのままVR世界に反映され、ものを掴む、よじ登る、道具を手に持って使う操作になります。

酔いにくいロコモーションのオプションや掴んでよじ登り、物理シミュレーションでインタラクトできるオブジェクト多数配置など定番を素直に導入する一方、新鮮な試みもしっかりありました。(ゲーム内でびっくりする仕掛けなので敢えて述べません)。

主人公が使う弓矢の操作もVRではもはやおなじみの、肩越しに背中に手を回せば弓を、反対の手で同じ動きをすれば矢を掴むことができるアレ。実際につがえて引く動きをして、指を離して放ちます。

(軌跡は現実の弓のように、矢を向けた方向と引く量、重力で決まりますが、視線で注目する先にエイムアシストを効かせるオプションもあります)

方向転換については、物理的に自分が振り向くこともできれば、スティック操作で一定角度ずつスナップでカメラを動かす(というより世界全体が動く)方法も選べます。

座ったままのプレイや、VR慣れしている場合はスティックで方向転換が楽ではありますが、少なくともしばらくは、スタンディングやルームスケールでプレーヤーが物理的に振り向くプレイのほうがはるかに没入感があっておすすめです。

移動はスティックでスーッと動く方法のほか、左右の手をその場駆け足のように振って前進という、冗談のような方法も選択可能(ゲーム開始時のプレセットで「ジェスチャ」選択)。

バカバカしいと思いつつ、やってみると体の動きに脳が騙されて楽しくなってきます。無理やりでも笑顔を作ると楽しい気がしてくるアレのようではあり、一人で遊ぶときはふと我に返りがちですが、テレビに映った主観映像を見つつ交代でプレイするときなどはこちらが確実に楽しめます。

操作のTIPSをいくつか。

  • よじ登る場面が多いため、スタンディングやシーテッドだと伸ばした手が境界に近づき、空中に境界線と赤いリングの警告表示が現れ臨場感を削ぐこと夥しい。動かないプレイでも、一応ルームスケールで少し広めにエリアを設定するとやりやすい。

  • 座って遊ぶ場合は椅子に。床に座ると、地面に落ちたものを拾おうにも物理的に手が届かないことがあります。その場合、一旦立ち上がってメニューボタンでキャリブレーションしてからしゃがめばOK

  • アクセシビリティに「クライミング時に腕が届く範囲を伸ばす」項目あり。自分の手より先に仮想の手が伸びる不思議な感覚になりますが。

  • ジェスチャで方向転換は、腕で世界を掴んで回すような(あるいは腕の力で体を回すような)動き。スティックのほうがまだ自然なので、基本は自分の足で向きを変える、補助的にスティックがいい感じでした。

雑魚も大迫力。戦闘の気持ちよさは健在

ゲーム進行はある程度リニア。一部の場面を除きレールシューターほど一方通行ではありませんが、本編のように広大なオープンワールドをフリーロームして、無数のサイドクエストを埋めるタイプではありません。一本の独立したアクションアドベンチャーでありつつ、見せ場をつないだエクスペリエンスやアトラクションに近い感覚です。

とはいえ環境を自由に歩き回ることはでき、分岐もあればミッションやクエスト、アイテムのクラフトといった要素や、シリーズの華である大型機械獣との戦闘も楽しめます。

戦闘はやや独特で、決まった戦闘場面に差し掛かると移動可能な範囲が設定され、そのなかで回り込んだり左右に回避しつつ矢を射る仕組み。ある意味アーケードゲーム的な感覚です。

(ジェスチャで回避を選択すると、弓も回避も腕を使うことになりややこしいので、何度か体験したあとはスティック回避にしてしまいましたが)

ホライゾンシリーズの戦闘でおなじみの、敵の部位を狙って破壊する要素は健在。特に続編のForbidden Westで顕著だった、簡単に敵の装甲や部品がパカーン!と壊れる気持ちよさが味わえます。

シリーズ本編では主人公の狩人アーロイが強く、人間と大差ないサイズの機械獣はおおむね雑魚として適当にボタン連打で倒せるバランスでした。しかしVRの主観視点で目と鼻の先に現れ、こちらに敵意を向けられると、雑魚中の雑魚だった機械獣「ウォッチャー」さえこれまでの非礼を詫びたくなる大迫力の敵になります。

最高級のグラフィック、先端のフォビエートレンダリングも

本編シリーズで機械獣と並んで魅力だった自然環境や千年後の社会も、PS VR2の描画能力を見せつける見事な出来。よじ登り中の岩肌や苔から、振り向いて見渡す巨大な山脈、眼下を流れる川の空気感まで、「あの世界」に没入して見回すだけで息を呑む体験です。

Horizon Call of the Mountainでは、PS VR2のアイトラッキング機能を活用して注視点の近くを高精細に、周囲を荒くして負荷を下げるフォビエートレンダリング (Foveated Rendering)も導入しています。

実際にゲーム中にキャプチャした写真を見ると、グラフィック自慢のわりに甘々にぼやけてるなと思えるかもしれませんが、それもフォビエートレンダリングの効果。プレイ中はどこを見ても、もっとも高精細に見えています

フォビエートレンダリングの例。右端のハイライトされた項目を注視している。左側はボケボケでもプレイ中には知覚できない

逆にいうとスクショしたときどこを注目していたかバレる技術でもあるため、将来的に色々な種類のゲーム(遠回しな表現)がでたときは、共有するスクショではしっかり相手の目を見るなどの対策が必要かもしれません。(ゲームによっては「どこ見てるんだ?」と反応される可能性もあります)

プレイ中はほぼ知覚できないフォビエートレンダリングのほか、アイトラッキングはメニュー選択でもデフォルト有効になっています。

目線でアイテム選択は、PCや他社のヘッドセットでも例があり、よほど高精度かつ上手く組み込まないと逆に面倒なギミックになる印象でしたが、何度か使うとあっという間に自然な感覚に。

指で直接ボタンをタップするタッチスクリーンに慣れると、タッチ非対応デバイスでまずマウスに手を伸ばしてポインタを動かしてクリック、がまだるっこしく感じられることがあると思いますが、アイトラで「見て決定ボタン」に慣れると、PS5本体側のメニューでも見るだけで選択できるような気がしてしまい、「もう目でフォーカスしてるのに、なぜ改めてスティックでフォーカスを移動させなきゃいけないんだ?」と感じる自分に戦慄します。

Foveated Rendering例。右側を見ているスクショ
左の木を見ているスクショ。右の建物が低解像度

(とはいえ、決定を押したときに注視していたアイテムを操作するため、ルーチン操作の場所でチラッとよそ見をした瞬間にボタンを押してしまい、別の項目を決定してしまうようなことはありますが)

PS VR2の使用感

映像について特筆すべきは、パネル自体が鮮やかで見やすいこと。発色も美しく、HDR対応有機ELは伊達ではありません。

解像度は敢えて初代比なら劇的進歩。ながら、4Kといっても片目2K x 2Kなので、他社の普及価格VRヘッドセットと比較して特に高いわけではありません。格子効果や粒状感は表示するコンテンツによって、強いて見ようとすればまだある程度。

光学系は細かい溝を刻んだフレネルレンズ。スイートスポットが比較的狭く、特に細かい文字を見るようなアプリケーションの場合は、装着したあとも視界の隅まで歪み・滲みなく見えているか微調整が必要です。

一方で、PS5のVR描画能力のおかげか、レンダリングのレベルでアンチエイリアスがよく効いており、エッジのギザギザ感やピクセル感はかなり少なめ。ピクセル数や光学系の種類より、最終的に知覚する画質として、2023年の普及価格VRヘッドセットとして高い水準です。

『Horizon Call of the Mountain』は買うべき?

シリーズのスピンオフながら単なるファンサの域ではなく、総合的にPS VR2のグラフィックや機能のショーケースとして、また独占タイトルとして、せっかく本体を買うなら体験しないと勿体ない一本。

プレイする前は、正直なところ「同梱版ありって、それ……あれじゃろ?部分部分のデキは良くても、本来ならデモとして本体に付属しているべきミニゲーム集的なやつを、単品フルプライス別売りにしたうえで割高な同梱版も用意するやつじゃろ?」と謎のキャラが出てきそうになりましたが、実際はしっかりとプレイ時間もあり、一貫したストーリーがありクエストがあり、カタルシスがあるゲーム。意外なほど真面目に、本格的な主観VRアクションアドベンチャーの王道をしっかりやっている作品です。

シリーズ本編未プレイでも、視点人物はこれまでの主人公アーロイではないこと、特にややこしい人間関係や行きがかりを理解していないと置いてけぼりということもなく、ユニークな世界観のSF作品として十分に楽しめるはず。むしろVRで解像度があがった状態で本編を遊べるのは羨ましくすらあります。

まとめ。PS VR2は「アリ」なのかを巡るあれこれ

「いまさら有線はないだろ」という話はたしかにありつつ、広いエリアを移動することが前提のARやMixed Realityアプリケーション志向ではなく、ルームスケールも移動というよりも体の大きな動きを反映するために選ぶゲーム特化プロダクトと考えれば、また現実的にはその場スタンディングやシーテッドがメインになることを思えば、ケーブルが邪魔すぎてゲームの価値を著しく削ぐというほどではありません。実際、高画質や高性能を売りにする10万円台や20万円台のPC VRヘッドセットでは有線モデルも一般的な存在です。

PS VR2を楽しむには普及に足踏みしたPS5本体をまず入手する必要があり、7万円以上という価格は「勝者総取り」的な普及は望むべくもないハードルではありますが、家庭用ゲーム機の規模で伸び悩むことになったとしても、いまだに絶対数が少なくプラットフォームが分立するVRデバイスとしては、初代PS VRがそうであったように一定の割合を占めることになると考えられます。

マルチプラットフォームのゲーム開発者の視点でいえば、SteamVRやQuestと並んで対応させない理由はなく、「40本以上のローンチラインナップ」のほとんどがマルチ作品であることもそれを物語っています。

マルチタイトルならそれこそ Quest 2 や 3でいいや、スタンドアロンだし画質は気にしないし、も見識ではありますが、Horizon Call of the Mountainが代表するように、マルチも遊べて独占が多いのは先代 PS VRからの特徴です。

初代PS VRは変化の激しいVR世界では大昔の製品で、最近はもはや空気でしたが、ソニーグループ系列のキャラクターやアーティスト関係からPCでもQuestでも体験できず、なぜかPS VRだけのアプリが出てはファンを悶絶させることもあれば、『ASTRO BOT: RESCUE MISSION』 のように評価が高い独占タイトルもしっかりありました。(『アイアンマンVR』……は開発元がMetaに買われてマルチ化してます)。

さらにVR専用ゲームだけではなく「VRモード」対応タイトルまで広げれば、プレイステーションプラットフォーム独占はいまだに多く、ソニーが大きな方針変更をしないかぎり他社プラットフォームでは遊べないものはもっと多くなるはずです。

(逆に PS VRでは遊べなさそうなVRの視点から考えると、ゲームよりもむしろソーシャル系、メタバース系アプリについては、あくまでPlayStationエコシステムの一部でありオープンなサービスにはほとんど門戸を開かないこと、レーティングの制約もあること、ゲームのユーザー制作MODなどすらシャットアウトしてきたことから、ソニーが方針を大きく変更しない限り期待が持てません。基本はゲーム機です)。

価格の話でいえば、「PS5とあわせて13万!」「PS5より高いww!」はまったくの事実として、同等レベルのリッチな体験を実現するPC VR環境は今のところ13万円どころではありません。つまるところ、メインストリームの家庭用ゲーム機基準からすれば絶対値として「高い!」、得られる体験との費用対効果でいえば「コスパ異常に高い!」存在

身も蓋もない話をすれば、VRゲームを楽しみたい目線でPS VR2を買ってどれくらい幸せになれるかは、ソニーが今後どれほどVRへのやる気を持続させるか、今作ホライゾンような独占タイトルやサードパーティのサポートにどの程度本気なのかに依存します。

7万円という保守的な価格は、これで他社のVRを駆逐して一気に市場を獲る!ゲームは全部VRになる!という超前傾姿勢を示すものでは到底なく、VR方面も押さえておく、Metaや他社が盛り上げる恩恵に預かりつつ無理せずプレゼンスを維持して行く程度の温度感を想像しますが、そうであっても今後少なくとも数年、ゲームのVRについてはメインストリームに留まり、マルチプラットフォーム含む多くのタイトルを楽しむことができ、PC VRと比較して高いコストパフォーマンスでリッチな体験が得られると考えれば、PS5を選んだゲーマーの次のステップとしては魅力的な存在です。

結論:VRアーロイがかわいいから『Horizon』経験者は買え。


PlayStation VR2(CFIJ-17000)
¥74,980
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
PlayStation VR2 "Horizon Call of the Mountain" 同梱版(CFIJ-17001)
¥79,980
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《Ittousai》
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