SDカードの元になった小型フラッシュメディア「マルチメディアカード」(2MB~、1997年頃~):ロストメモリーズ File008

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宮里圭介

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

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SDカードの元になった小型フラッシュメディア「マルチメディアカード」(2MB~、1997年頃~):ロストメモリーズ File008
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[名称] マルチメディアカード、MultiMediaCard(MMC)
(製品名) SDMB-64-801
[種類] フラッシュメモリー
[記録方法] 専用端子(7ピン)
[メディアサイズ] 24×32×1.4mm、24×18×1.4mm
[記録部サイズ] ----
[容量] 2MB~8GB
[登場年] 1997年頃~

ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。

「マルチメディアカード」(MultiMediaCard、以下、MMC)は、サンディスクとシーメンスが開発したフラッシュメモリーメディア。1997年11月に発表されたもので、切手サイズという小ささ、そして2g未満という軽さが特徴です。

当時はデジタルカメラやオーディオプレーヤーなど、小型デバイスのストレージとしてフラッシュメモリーが使い始められてきた頃。内蔵ストレージは最も手軽ですが、容量を大きくするにはコストがかかり、そのぶん価格が上がりやすいというのがネックでした。また、とくにデジタルカメラのように自らデータを作成する機器では容量不足になりやすく、交換可能なメディアとしてのフラッシュメモリーが求められていました。

もちろん、PCカードの流れを汲むコンパクトフラッシュ、低価格化を突き詰めたスマートメディアなどは登場していましたが、機器をさらに小型化するためには、これらのメディアではサイズが大きいという問題がありました。

こういったことを踏まえて登場したのが、MMCです。内蔵コントローラーによるシリアル転送を採用していたことから、端子数はわずか7ピン。これにより、24×32×1.4mmという小型化を実現しました。

▲左から、MMC、スマートメディア、コンパクトフラッシュ

MMCは高速化された規格などがありますが、ここでは性能による違いで分類し、基本となるMMCとその派生、そして24×18×1.4mmへと小型化されたRS-MMC、省電力化されたDV RS-MMCについて紹介します。

パッと見は、SDメモリーカードにそっくり

MMCの見た目は、まさにSDメモリーカードそのもの。実際、外形の違いは厚みのみで、MMCが1.4mmなのに対し、SDメモリーカードは2.1mmになっているという違いがあるだけです。

それもそのはず、SDメモリーカードはMMCをベースにして開発された規格で、端子数こそ違うものの(SDメモリーカードは9ピン)、一部互換性が確保されています。そのため、多くのSDメモリーカードリーダーはMMCにも対応していました。

▲左がMMCで、右がSDメモリーカード。MMCのほうが薄いのがわかります
▲左が7ピンのMMCで、右が9ピンのSDメモリーカード。2ピン追加されてます

MMCのデータ転送速度は、最大20MHzのクロックを使った1ビットのシリアル通信となるため、最大2.5MB/s。読み書きを行うのにMMCモードとSPI(Serial Peripheral Interface)モードの2つのモードをサポートしているのが特徴です。

MMCモードは、クロック、コマンド、データの3つの信号で制御する方式。コマンドとデータは双方向バスとなるほか、複数のデータブロックをまとめて転送するマルチブロック転送が可能となるため、少ない信号線数でも高速なアクセスが可能となります。

これに対してSPIモードは、クロック、チップセレクト、MOSI(データ出力)、MISO(データ入力)の4つの信号で制御する方式。単方向バスとなっているだけでなく、コマンドとデータが同一信号で伝送されること、マルチブロック転送に対応していない(後に対応しますが)こともあり、速度はMMCモードよりも劣ります。

しかし、マイコンなどは最初からSPIをサポートしていることが多いため、特殊なハードウェア構成にすることなく直接制御が可能。とくに低価格な機器では、このSPIで制御できるというメリットが大きかったのではないでしょうか。

様々な機器で使いやすいよう作られたMMCですが、より小型の機器、具体的には携帯電話で採用するには大きさがネックとなっていました。そこで、2002年11月に登場した新規格が、縦幅を32mmから18mmへと短くしたRS-MMC(Reduce Size MMC)です。

▲RS-MMCはアダプターを接続することで、通常のMMCサイズになります
▲RS-MMCの端子数は、MMCと同じ7ピン。当然、信号の並びも同じです

面白い……というか少し間抜けなのが、このRS-MMCでは物理形状が変わっただけで、電気的な特性はそのままになっていたこと。小型化して小さな機器にも搭載しやすくなったものの、消費電力の面では従来通り変わらなかったわけです。

そのため、さらにDV(Dual Voltage)という新しい規格が2003年頃に登場。これにより、従来3.3V(2.7~3.6V)という電圧で動作していたMMCが、1.8V(1.65~1.95V)という低電圧で動作できるように。対応のRS-MMCは「DV RS-MMC」と呼ばれ、ノキアの携帯電話などで採用されました。

「MICRO MEMORY CARD」という、もう一つのMMC

MMCを開発したのはサンディスクとシーメンス(後に半導体部門が独立し、インフィニオンになります)ですが、このシーメンスが自社製品のメディアとしてMMCを採用しています。

何に使われているかといえば、産業機械を制御するPLC(Programmable Logic Controller)です。これにプログラムやパラメーターを読み込ませるメディアとして、MMCが利用されているわけです。

ただし、MMCといっても普通のMMCとは少し違います。物理的には同じですがフォーマットが異なり、容量も数KB~数MBしかありません。また、名称も「MICRO MEMORY CARD」となっているので略称こそ同じですが、そもそも異なるメディアと考えたほうがいいでしょう。

▲入手したMICRO MEMORY CARD。これは512KBモデルとなります

手に入れたのは512KBモデルですが、これをカードリーダー経由でPCに接続すると、62.1MBのメディアとして認識されるのが面白いところ。ちなみにフォーマットしてみたところ、普通に約62MBのMMCとして読み書きできました。

書き込まれているデータの正確性を高めるため冗長性をもたせ、同じデータを繰り返し書き込むといったことをしているのでしょうか。

そうだとしても、1/100以下という容量はやりすぎ。実際、同じ容量のモデルでも実容量が異なるものが複数存在するようなので、単に製造上都合で低容量メディアが作れず、容量制限しているだけ、という可能性の方が高そうです。

低価格なストレージとして、今でも使われているMMC

国内ではMMCを採用する機器が少なく、PDA(ポケットポストペット)やデジタルビデオカメラ(IXY DV)などで採用されていたくらいでしょうか。

SDメモリーカードが登場した後もMMCは残り、端子を拡張しての高速アクセス、さらなる小型化などと進化していきました。しかし、多くの企業が支持するSDメモリーカードには勝てず、今ではメディアとしてほとんど見ることはありません。

ただし、組み込み用のストレージとなる「eMMC」(embedded MMC)は今も健在。激安ノートPCやタブレット、スマートフォンなどで採用されているアレです。交換できませんし、マルチメディアでもカードでもありませんが、意外なところでMMCが残っているというのが面白いですね。

参考文献:

《宮里圭介》
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