開放型でも音漏れしない音波制御技術、NTTが開発。nwmブランドでイヤホン製品化

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関根慎一

関根慎一

ライター/エディター

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開放型でも音漏れしない音波制御技術、NTTが開発。nwmブランドでイヤホン製品化
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  • MWE001
  • MBE001
  • MBE001を充電ケースに収納したところ

NTTは9日、ごく小さな空間に音を留めるスピーカーエンクロージャー設計技術を発表しました。

スピーカーから拡散する音に異なる位相の音を当てて打ち消すことによって、音漏れを軽減する技術。音を閉じ込めることで結果的に音漏れを防ぐのではなく、漏れる前の音を打ち消す点に違いがあります。

NTTが過去に開発した「能動サウンド制御技術」でも同様の効果が得られましたが、こちらは複数のスピーカーから位相の異なる音波を発していたのに対して、NTTが今回発表した技術では、スピーカーの筐体(エンクロージャ)に複数の穴を適切に設けることで、単一のスピーカーのみで音を留めることに成功しています。

実験では、バイノーラルマイクの耳元において80dB(イヤフォンで音楽を聴いている程度の騒音レベル)で観測した音が、15cm離れた場所では43dB(図書室程度の騒音レベル)まで抑えられており、近距離でも実感できる程度の低減効果が得られたとのこと。

NTTでは「聴きたい音だけを届ける」「聴かれたくない音、聴きたくない音を届けない」アプローチの音波制御技術をPSZ(Personalized Sound Zone)を名付けており、今回の音漏れ軽減技術もその一環で開発したといいます。

この技術を製品化するメリットは、主に開放型のイヤフォンやヘッドフォンを利用する際に活きてきます。一つは音漏れを気にせずに音楽や音声コンテンツを楽しめる点、もう一つは開放型であるために外部からの音を遮断しないことで、環境音を聴き取れる点です。これは例えば、音楽を聴きながら歩いていても、自分に呼びかける声や車両の音などに気づけることを意味します。

すでに製品化が進められており、関連会社のNTTソノリティが9月よりGREEN FUNDINGで先行販売している「MWE001」が該当します。今回の技術発表と同時に「nwm」(ヌーム)ブランドの展開を開始し、オンライン販売を開始しています。MWE001の具体的な使用感については、9月にレビュー記事を掲載済み。形状はいわゆる耳掛け型イヤフォンのようにも見えますが、実際はドライバと外耳孔の間には空間があり、聴こえ方として耳の穴の上から音が聴こえるような感覚のようです。

逆相をぶちまけて音を封じ込めろ。オープンなのに音漏れしない新発想イヤースピーカー「MWE001」を試す

また今回の技術発表に合わせて無線モデルの「MBE001」も発表しており、こちらも今冬よりGREEN FUNDINGとIndiegogoで販売予定。正式な発売は2023年春ごろの見込みです。

今後については航空機内や自動車内など大きな騒音の生じる環境やオフィスなどでの応用を検討するとともに、外からの音に合わせてイヤフォンの再生音に様々な情報を付与する"音のAR"的な試みの研究開発も行っていくとのこと。

一見して普通のイヤフォンに見えるけれども、音漏れを気にせずに音楽を聴きつつ、同時に会話もできる体験は便利で快適なものです。今回の発表で無線モデルが発表されたことで使える機種も大幅に増え、2023年以降は見かける機会も増えることでしょう。しかしこのイヤフォンの特性を知らない相手とやりとりをする際にはイヤフォンを着けたまま会話する形になるので、ある意味では社会的なハードルになることもありそうです。しばらくの間は、MWE001/MBE001についてあらかじめ説明が必要になるかもしれません。

先行販売サイトに掲載しているNWE001の紹介ムービー
《関根慎一》
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