NASA、火星の岩石回収にヘリコプター2機を追加投入へ。回収用着陸機に搭載

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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Image:NASA/JPL-Caltech

NASAは、Mars Sample Return(MSR)プログラムの概要を発表しました。このプログラムは現在火星探査ローバーのPerseveranceが現在、せっせと容器に詰め込んでいる地表の岩石サンプルを回収し、地球に持ち帰るための新しい計画です。

手順をおおざっぱに記せば、まずサンプル・リターン・ランダー (SRL)と呼ばれる火星着陸機を火星に送り込みます。その着陸したSRLのところへ火星のサンプルを抱えたPerseveranceローバーが訪れ、そのサンプルをSRLへと積み替えます。そしてSRLは搭載するロケットでこのサンプルを火星軌道へと打ち上げ、軌道上で待ち受けるオービター(火星周回探査機)がそれを捕獲、地球へ送り返す…という格好。

この計画では、仮にPerseveranceがSRLの到着地点にやってこられなかったときのバップアッププランとして、新しい2機のヘリコプターをSRLに搭載して送り込むことを計画しています。NASAは今回プランAとして、Perseverance自身でサンプルを回収してSRLへ持ち帰る方法を提案し、それができない場合のために、プランBとして2機のヘリコプターを飛ばして、ある地点に保管されているサンプルを取ってくるとしました。

火星からのサンプルリターン計画は当初はESAがExoMars計画で送り込む予定のローバーがSRLに回収してくるはずでした。しかし、ESAは7月、ExoMarsに関わっていたロシアとの協力体制を解消することになり、ロシアのロケットと着陸機を使うはずだった回収ローバーを送り込む手段を失ってしまいました。また、これまでESAは火星への探査機着陸を複数回失敗していることも懸念として上がっていました。

そこで、サンプルをSRLまで持っていくローバーの役割も、現在サンプルを容器に詰め込んでいるPerseveranceにやってもらおうということになりました。Perseveranceは、火星上で2011年からいままで10年以上にわたり活動を続けているローバー、Curiosityの改良版でもあり、Curiosityの息の長い活動を見れば、NASAはPerseveranceがSRLが火星に到着する頃になってもまだ順調に活動をし続けていると予測しているとのこと。

一方、Perseveranceとともに活動していた火星ヘリコプターことIngenuityの成果も、それが技術実証のための実質的なデモ機だったことを考えれば十分な収穫になっています。NASAは、PerseveranceがSRLのところまで移動できなかった場合を考え、Ingenuityの設計に基づいた2機のヘリコプターをサンプル回収用としてSRLに搭載することを計画しています。このヘリコプターはサンプル回収用のアームを備え、地表に置いてあるサンプルの袋(約150g)を掴み、SRLに持ち帰ります。航続距離は700mほどとされています。

新しいサンプルリターン計画では、Perseveranceはジェゼロクレーターの中にあるかつて洪水があったとされる三角州を探査しつつ、サンプル収集を継続します。このとき、サンプルを入れた袋は1か所につき2つを採取し、ひとつをバックアップ用にするとのこと。そして、10か所のサンプルを袋に詰めたら、バックアップ側の袋を地表のどこかにキャッシュとして保管し、またサンプルを採取しつつクレーターの坂を上り、2030年ごろにやって来るSRLに合流します。SRLはピンポイントの着陸精度を持たせ、指定地点から50m範囲内に降り立つ計画とのこと。

PerseveranceがSRLに合流できれば、SRLはこのローバーからサンプルを受け取り、ロケットに搭載して火星軌道めがけて打上げます。軌道上の探査機がこれを回収すれば、最終的に2033年ごろまでに火星サンプルが地球に届けられるはずです。


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