モスクワでチェス指しロボットが対局相手の指を折る。被害少年はギプス装着し参戦続行

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Munenori Taniguchi

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モスクワでチェス指しロボットが対局相手の指を折る。被害少年はギプス装着し参戦続行

ロシア・モスクワで開催されたチェスの大会で、出場していた7歳の少年が対戦相手のロボットによって指を骨折させられる事故が発生しました

地元メディアBaza NewsがSNSに公開した動画を見ると、少年はロボットの動作を待たずに駒を動かしており、ロボットが少年の駒を取ってカゴに落とし、そこへ自らの駒を置く前に、少年は次の手を同じ場所へ指そうとしているように見えます。しかしロボットはそこへ自分の駒を置くためアームを降ろし、少年の指を上から抑えつけてしまったようです。

その後もロボットは所定の位置に自らの駒を置くため、少年の指を強い力で抑え続けたため、そばに居た複数の大人が慌ててアームをこじ開けて少年を救出しています。

タス通信によると、モスクワチェス連盟会長のセルゲイ・ラザレフ氏は「ロボットが子どもの指を折った--これはもちろん、悪いことだ」とコメントしたものの、USA TODAYによると大会関係者は原因の一部は少年側にあると主張しているとのこと。この少年は9歳以下の部でトップ30に入っており、ギプスを装着してその後も競技を続行したとのことです。

このような事態は、ロボットのプログラムが対戦相手のイレギュラーな行動を想定していなかったために発生したと考えられます。もし、ロボットアームのセンサーが、駒を配置しようとする場所にある障害物(少年の手)を検知できれば、大事に至ることはなかったでしょう。

また、ロボットが駒を置こうとするときに、意図した高さ(要するに盤面)までアームを下ろせなかったとき、異物の噛み込みと判断してすぐにアームを上に上げる処理がプログラムに組まれていれば、少なくとも骨折に至るほどの被害にはならなかったと考えられます。そのほか、画面上方に見えるロボットオペレーターによる緊急介入が機能していないか、そもそも緊急介入の処理が用意されていなかった可能性も考えられます。

ロボットは人が思っているよりも強い力を持っていることが多く、たとえば産業分野では、製造ラインに配置されるロボットや自動化機械は、安全確保のためのインターロック機構を組み込んで設計され、周囲で働く人にも安全教育が徹底されるのが一般的です。しかし、今回のようなチェスロボットやその他ボードゲーム用ロボットアームの場合、産業用のロボットと仕組みは大きく変わらないものの、どのような安全対策が講じられているかはプレイヤーにはわかりません。まして7歳の少年では、それが危険という認識はほとんど無いでしょう。

ソ連時代にチェス世界チャンピオンに君臨し、1997年にIBMのチェスAI「Deep Blue」との対戦で大きな話題になったガルリ・カスパロフ氏は、今回の事故について「私は警告していたよ!」とツイートしています。

ラザレフ氏は、少年の両親は検察当局への連絡を望んでいるとしたうえで「私たちはこの問題を解決するため、連絡を密にして可能な限り協力するつもりです。ロボットオペレーターは、このような事態が二度と起こらないよう、プレイヤーの安全強化について考えなければならないでしょう」と述べているとのことです。なお、モスクワ・チェス連盟のセルゲイ・スマージン副会長は「ロボットを禁止する計画はないが、安全対策については再検討されるだろう」とコメントしています。

《Munenori Taniguchi》
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