「入眠促進」か「気持ち良い寝覚め」か――睡眠改善デバイスをめぐる雑感(アルファ会員寄稿)

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松崎良太

松崎良太(まつざき・りょうた) きびだんご株式会社代表取締役。慶應義塾大学卒業後、株式会社日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)へ入行。投資銀行業務に携わった後コーネル大学でMBAを取得。2000年楽天に入社、社長室長や経営企画室長、執行役員ネットマーケティング事業長 兼 事業企画・調査部長を歴任。2011年に独立、ベンチャーの育成に務めながら自らエンジェル投資も行う。2013年にゴールフラッグ株式会社(後に「きびだんご株式会社」に社名変更)を設立。クラウドファンディングとECを組み合わせた新しい事業エンパワーメントの仕組みを提供する「Kibidango(きびだんご)」をスタート。

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こんにちは。

自称「睡眠オタク」のまつざきです。人生の3分の1を占める睡眠には、惜しみなく投資するべきだ、と昔誰かに聞きました。いや、もはや誰に言われたのか今となっては思い出せません。ひょっとしたら夢の中で啓示があったのかも。

ガジェット好きも重なって、これまで睡眠改善デバイスには惜しみなく投資を続けてきました。大きくわけると(1)睡眠の質をモニタリングするデバイス、(2)いびきを防ぐためのデバイス、(3)入眠・快眠を促進してくれるデバイス、の3カテゴリくらいに分られるかと思います。

中でも私が探求してやまないのが(3)の快眠促進デバイス。昔でいえばマットレスと枕。それをテクノロジーの力で改善しようというのが、いわゆる「スリープテック」デバイスの数々です。

究極の眠りを手に入れるために飽くなき探索を続ける中、先日ラスベガスで行われたCESで、これは!というスリープテックデバイスを二つ見つけました。それがElemindとNextSenseです。

脳波を“ノイキャン”して、眠りのスイッチを入れる入眠促進ヘッドギア「Elemind」

「考え事が止まらなくて眠れない」――そんな夜に終止符を打つとうたうのが、MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームから生まれた睡眠テックデバイス「Elemind(エレマインド)」。

見た目は少し厚みのある布製ヘッドバンド。しかし中には5つの脳波(EEG)センサーを搭載し、リアルタイムで計測した脳波に応じて音を聞かせるデバイスです。

このデバイスの最大の特徴は、独自の「アコースティック・ニューロモジュレーション」技術。前頭葉から出る「起きていろ」という覚醒信号(アルファ波)を検知すると、そのリズムを穏やかに抑え込み、深い眠りのリズムへと誘導する特殊な「音」を骨伝導で頭の中に届けてくれます。この「音刺激」で脳に働きかける、という発想に関心を持ちました。

以前にも実際に脳に対して直接電気信号を出すtDCS(経頭蓋直流電気刺激)デバイスはいくつか使ったことがあるのですが、スイッチを入れると、明らかに脳の中でピリピリとした、脳を直接ノックされるような形容し難い刺激を感じ、正直あまり気持ちの良いものではありませんでした。

Elemindを実際に着けてみると、一見ランダムに聞こえる「ザザッ、ズザザッ」というようなノイズというよりはリズムに近いような音が流れ続けます。本当にこれで眠れるの?というくらいの音なのですが、実はその音こそが脳の活動をしずめる鍵だとか。私自身、実際にCESの騒々しい展示会場に設置されたベッドで15分これを着けて寝そべったところ、見事に寝落ちしたばかりか、Deep Sleep、いわゆる「深い眠り」に落ちてしまったこともあり、ある意味説得されてしまい、購入まで至ってしまったところがあります。

途中で起きても、再び「眠りの世界」へ

私自身がそうなのですが、年齢を加えるにつれ、夜中に目が覚めてしまうことが多くなりました。すぐにまた寝られれば良いのですが、そういう時にかぎって「あれ、どうなったかな」とか考え出して気がついたら時間が経ってしまうことも。

Elemindは眠りについたことを脳波で察知すると、音を自動でフェードアウトさせます。もし夜中に目が覚めてしまっても、ボタン一つで(もしくは設定により自動的に)再びセッションが開始され、スムーズな再入眠をサポートしてくれます。実際、寝たら音が自動的に止むモードにしているのですが、次に起きた時に音がしていない、つまり寝られていないと自分では思っていても、一度は確かに「寝ている」のです。

「脳波のノイキャン」と勝手に私が呼んでいる(実際にはちょっと違うのですが)この仕組み、買った日からほぼ毎日つけ続けていますが、確かにすっと眠れる。

最近は、夜中に起きるたびにこのElemindのスイッチを押すのが習慣になりました。

NextSense:深い睡眠をブーストするワイヤレスイヤホン

もう一つの快眠デバイス「NextSense」はワイヤレスイヤホンの形をしたデバイス。実際に普通のワイヤレスイヤホンとして使うこともできます。

片耳あたり2つずつEEGセンサーがついていて、耳から左右の脳波をとることができます。

そして、深い睡眠に入ったことを知ると、その睡眠をさらに「深める」ための音を流してくれる。

最初は「ふーん」くらいにしか考えておらず、しかも寝ている間にイヤホンをつける癖もなかったので最初は付けて寝る時に違和感しかなかったのですが、実際に使ってみて驚きました。

デバイスを着けた初日は色々あって睡眠時間がわずか3時間半だったにもかかわらず、非常にぐっすり眠った日と同じような清々しい朝を迎えることができたのです。

その鍵は「Slow Wave」という脳波。深い睡眠に入っている時にのみ現れる、周波数0.5~4Hzの非常に低い脳波なのですが、これが出ている深い睡眠に入っている時には記憶の整理や脳のデトックス、体の回復、成長ホルモンの分泌など人間の健康にとって極めて大事なことが行われているとか。

脳の中では脳神経が一斉にオンオフの同期運動を繰り返していて、それが脳波という形で現れるのだそうですが、このSlow Waveに入ったことをAIが検知すると、Slow Waveの上昇タイミングに合わせて小さなピンクノイズを入れて音による刺激を与えると、その音刺激が脳のリズムと同期してSlow Waveの振幅を増幅し、深い睡眠をサポートすることができるそう。

睡眠研究の分野では「Closed-loop auditory stimulation(脳波同期型閉ループ聴覚刺激)」と呼ばれているもので、睡眠中の脳波リズムをリアルタイムで検出し、そのタイミングに合わせて微弱な音刺激を与えることで、睡眠の自然なリズムに寄り添うアプローチとして研究されている技術です。これをイヤホンサイズで実装しているのがこのデバイスのすごいところ。

次の日も同様。深い眠りに入っている時に脳波がゆっくりになるという「Slow Wave」の回数が増え、それをデバイスがブーストしていることも可視化されていました。

たまたま同社の創業者が日本に来ているという話を聞きつけ、NextSenseにまつわる創業秘話を聞くことができました。

もともとGoogleで働きながら、同僚と趣味で睡眠について話をしているところからGoogleの「Moonshot Project(以前のGoogle X)」に採択。当初はイヤホンの形をしたEEGセンサーで、てんかん患者などに事前に発作の予知ができないか、というような研究をしていたところ、Googleから資金援助を打ち切られ、独立を迫られる中でピボットし、コンシューマーデバイスを開発するという「いばらの道」をあえて選択することに。

その一番の武器は「素材」にあったといいます。電気を通しやすく、イヤホンのイヤーピースのような柔らかい素材を世界中回って探していたところ、ドイツのとあるメーカーが面白い技術を開発しており、その技術・IPごと同社が独占的に手に入れることができたそう。この技術はアップル、サムスン、ソニーなど世界中のイヤホンメーカーが喉から手が出るほどほしいものだということで、一気にそうした大手メーカーとの話も進んだとか。

Elemind+NextSense+ホットアイマスク

現時点で最強の「簡単に寝落ちして、そして睡眠が深く感じる」組み合わせは、ズバリこれです。ホットアイマスクをバカにしてはいけません。

いろんなタイプがありますが、おすすめは2007年に初登場した使い捨てのホットアイマスク、Kaoの「めぐりズム」。袋を開けるだけで暖かい蒸気を発生させる温熱シートとして発売されましたが、最近さらにバージョンアップして「蒸気でホットアイマスク」から「蒸気めぐるアイマスク」に。より蒸気の温まりを実感できるようになり、付け心地も良くなりました。個人的におすすめなのはラベンダーとカモミール。

これを全て装着すると、ご想像通りまあまあな外観になりますが、快眠探究者としてはそんなことは言っていられません。ただひたすらに究極の快眠を求める日々は続きます。

※本稿は、テクノエッジ アルファ会員の方にご寄稿いただきました(テクノエッジ アルファ会員については、こちら)。

《松崎良太》
松崎良太

松崎良太(まつざき・りょうた) きびだんご株式会社代表取締役。慶應義塾大学卒業後、株式会社日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)へ入行。投資銀行業務に携わった後コーネル大学でMBAを取得。2000年楽天に入社、社長室長や経営企画室長、執行役員ネットマーケティング事業長 兼 事業企画・調査部長を歴任。2011年に独立、ベンチャーの育成に務めながら自らエンジェル投資も行う。2013年にゴールフラッグ株式会社(後に「きびだんご株式会社」に社名変更)を設立。クラウドファンディングとECを組み合わせた新しい事業エンパワーメントの仕組みを提供する「Kibidango(きびだんご)」をスタート。

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