アップルが、10月17~19日にテキサス州オースティンで開催されるF1アメリカグランプリにおいて、F1世界選手権の配信契約締結を発表する見込みと報じられています。
シリコンバレーやハリウッド、さらに政治経済の話題に詳しいデジタルニュースメディアPuckの報道によれば、アップルはこの契約に年間1億5000万ドル(約230億円)を投じ(おそらく米国内における)独占的な配信を提供することになる模様です。
現在、米国におけるF1のテレビ放映はESPNが行っています(2025年の放映権料は年間9000万ドル)が、2022年のピーク以来レースごとの平均視聴者は減少傾向にあり、今年2月には、2025年限りでESPNがF1中継から撤退するとの報道がありました。もちろん、依然としてF1は人気コンテンツであり、ESPNの後釜候補としてはNBC SportsやNetflixがF1放映権に関して交渉していると伝えられていました。
アップルがF1にアプローチしていることも、数年前から公然の事実とされています。たとえば2022年のアメリカGP決勝レースには、ティム・クックCEOを含む同社幹部数人がVIPとして訪れていました。当時の中継映像を見れば、スタート前のコース上突撃インタビューで知られる元F1レーサーのマーティン・ブランドル氏が、メルセデスチーム様子を見守っていたティム・クックCEOとサービス担当上級副社長のエディ・キュー氏の間に「ちょっとすみません」と割って入り、インタビューするのかと思いきやただその間を通過していく様子や、決勝レースのファイナルラップで絶叫気味のアナウンサー音声の向こうで、やらされ感丸出しでちんたらとチェッカーフラッグを振るティム・クックCEOの貴重な姿が確認できます。
また、アップルがブラッド・ピットを主演に迎えて製作した映画『F1』の大ヒットも記憶に新しいところです。
脇道にピットインしてしまった話題をコース上に戻すと、数年前に始まったとされるアップルの放映権取得交渉が長引いている背景には、米国を含むいくつかの国でF1の動画配信を提供している「F1.TV」との交渉もあった模様です。9to5Macは「F1.TVの米国における将来に関しては、交渉の結果がどうなったのかは現時点では不明」としつつも、アップルが自社サービスと競合するF1.TVのサービス終了を望んでいることは意外ではないと伝えています。
もし、アップルの交渉が望みどおりに成立したならば、2026年からはアップルがF1放映権を引き継ぎ、米国の視聴者に向けたF1レース中継をApple TV+で行うことになります。これにより、AppleはMLSシーズンパス、MLBフライデーナイトベースボール、そして新しいF1サービスという3つのメジャーなスポーツ配信パッケージが提供可能になるでしょう。
ちなみに、Apple TV+は日本でもMLSシーズンパス、MLBフライデーナイトベースボールを有料ではあるものの提供しています。日本におけるF1レース中継は現在、衛星放送(CS)はフジテレビ ONE TWO NEXTが、配信ではDAZNが提供していますが、ここにApple TV+が加わる可能性があるのか、F1ファンには気になるところです。