次世代 Apple WatchにマイクロLEDディスプレイ搭載、当面は中止か。高コストのためとアナリスト分析

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Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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Image:Apple

アップルのスマートウォッチ最上位モデルApple Watch Ultraシリーズは、将来的に次世代ディスプレイ技術「マイクロLED」採用が噂されてきました。


そんななか、アップルの未発表製品に詳しいアナリストが、「同社はマイクロLED搭載Apple Watchプロジェクトを中止した可能性が高い」と述べています。

今週初め、照明大手のOsramは「マイクロLED戦略を支える基幹プロジェクトが本日、予期せぬ形でキャンセルされ、マイクロLED戦略を再評価することになった」と発表しました。同社はアップルがサプライヤー・リストに掲載している企業です。

ディスプレイ関連サプライチェーン専門調査会社DSCCは、このプロジェクトがマイクロLEDを搭載した噂のApple Watchに関するものだと伝えました

さらに著名アナリストMing-Chi Kuo氏は、Xにて最新の調査に基づき次のように述べています

  • アップルはマイクロLED搭載Apple Watchプロジェクトを中止したようだ

  • 中止の理由は、マイクロLEDが大きな付加価値をもたらせず、生産コストが高すぎて経済的に成立しないため

  • アップルはマイクロLED開発チームから多数の人材を解雇した。現在、マイクロLED関連のプロジェクトは全く見通しが立たない

  • これは自ら次世代ディスプレイ技術を保有し、自社製品の競争力を高めたいアップルにとって間違いなく大きな後退になる

  • OsramはアップルにとってマイクロLEDチップの独占サプライヤーだった。同社との協業中止は、アップルが当面マイクロLED製品を量産する計画がないことを意味する

信頼性の高いディスプレイ専門アナリストRoss Young氏(DSCCのCEO)も、現時点ではマイクロLEDへの移行プロジェクトは中止されたとの考えをコメント

ただし「コスト、歩留まり、数量が条件を満たせば、将来的に別のサプライヤーから購入する可能性はある」と付け加え、復活もなくはないと示唆しています。

さらに台湾の調査会社Trendforceも、マイクロLED版Apple Watchの発売が大幅に不透明になったとのレポートを発表。そこではマイクロLEDパネルのコストが同サイズの有機ELパネルと比べて2.5~3倍も高くなっている可能性があること、まだ大量生産には難があることなど、背景にある事情を説明しています。

現行のApple Watchが搭載する有機EL画面と比べて、マイクロLED画面はより明るく色鮮やかとなり、斜めからでもよく見えるよう設計しているとの報道もありました

またマイクロLED化に伴い、画面サイズが現行の1.93インチから2インチ超に大型化すると複数の識者が予想していました。

「画面が現在よりも鮮やかで見やすくなる」という付加価値が、大幅なコスト増(おそらく製品価格の上昇も伴う)に見合わないとアップルが判断したのかもしれません。


要は、近い将来の次世代Apple Watch Ultraは画面が有機ELパネルのままの可能性が高まったと思われます。

Apple Watch Ultra 2の最大輝度は3000nit。前世代のUltra は2000nit。

もともとUltraモデルは通常モデルより価格が高いため、「直近の後継機が大幅値上げになる材料が減った」と言い換えれば、さほど悪いニュースでもないかもしれません。


《Kiyoshi Tane》
Kiyoshi Tane

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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