ASUS ROG Allyレビュー。現状最高の携帯ゲーミングPC、Windowsの進化に期待

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Ittousai

テクノエッジ編集長。火元責任者兼任 @Ittousai_ej

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ASUSが発売したポータブルゲーミングPC、ROG Ally のレビューをお伝えします。

ROG Ally はASUSのゲーミングブランド ROG / Republic of Gamers が初めて発売するハンドヘルド(手持ち)型のゲーミングPC。

形状としては7インチ画面の左右にコントローラの携帯ゲーム機そのものですが、デスクトップと同じWindows 11を搭載しており、ゲーム以外のアプリもそのまま動くフル機能のPCです。


特徴はAMDのポータブルゲーミング用プロセッサ Ryzen Z1シリーズを初採用し、設定さえあわせればAAA大作PCゲームでも多くが携帯機なりに快適に遊べる高性能を備えること。

製品名の Ally は、英単語として読めば「味方・仲間」を意味する「アライ」ですが(アライドアサルトとか)、ASUSによれば「All Your Games」から来た名称で、読みは「エイライ」とされています。

しばらく持ち歩いてゲームにPC作業にと使ってきた結論から先に言えば、ASUS ROG Ally のここが良い!は:

性能・ハードウェア的に現状最高峰。Ryzen Z1 Extremeに加えて、最大120HzでVRR / AMD FreeSync Premium対応のフルHDディスプレイ、静音なファン、背面ボタンつきフルサイズのコントローラ等を含めた総合力として

Windows 11の汎用性。Steamは当然としてPC Game PassでもEpicでもRiot でも、各社配信プラットフォームのランチャーが動く。ゲーム以外のアプリも周辺機器も、Windows 11にできることは原則なんでも可能。その気になれば外部ディスプレイやキーボードでPC作業も実用域

高い価格性能比。上位モデルの Ryzen Z1 Extremeでも10万9800円。性能・仕様的に競争力のある価格と、国内での事業歴も長いグローバル企業ASUSが販売する入手性やサポートの安心感

一方、期待コントロールの意味で買う前に把握しておくべき点は:

デスクトップの高性能ゲーミングPCとは別ジャンル。大前提ながら念のため。電源に接続した本格的なゲーミングPCと対等ではなく、手持ちで遊べることが意義。

「携帯ゲーム機の使い勝手」にはまだ課題。独自アプリや専用ボタンでゲーム機ライクな操作感に近づけているものの、Windows 11や各社ゲームランチャー側の対応が不完全・不統一。よく言えばソフト面の発展を楽しめる伸び代の塊、悪く言えばコントローラと小さな画面タッチでデスクトップOS操作の縛りプレイ。

サイズ感。同じ7インチ画面のSteam Deckよりはコンパクトで、コントローラの操作感やグリップも良いものの、幅は28センチありスティックも突き出るため、どう持ち歩くかは検討が必要。

バッテリー駆動時間。本格的なグラフィックのゲームは公称で約2時間。最高性能を活かすTurboモードでは1時間以下で切れることも。負荷を下げて伸ばすことはできるが、それでもゲームでは3時間~程度。電源なしで長時間遊ぶ用途は不向き。(30分で50%の急速充電には対応)

Steam Deckの割り切った仕様と比べれば全般に一段上で余裕があり、Windows 11で融通が効くため、PCゲームに慣れていてそろそろこのタイプが欲しいゲーマー、長時間駆動より最高性能が欲しい場合には安心して推せます。

初代ながら平均点の高いハードウェア

主なハードウェア仕様をまとめると、

  • 7インチ 1920 x 1080 TFT液晶、最高120Hz、AMD FreeSync Premium対応

  • AMD Ryzen Z1 Extreme プロセッサ(Zen4 CPU 8コア16スレッド、RDNA3 GPU 12コア)

  • 16GB LPDDR5 統合メモリ(固定)、512GB PCIe 4.0 x4接続SSD、microSDXC

  • ヘッドホン/ヘッドセット端子、USB 3.2 (USB-C端子)、外付けGPU ROG XG Mobile接続端子、Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.1、1w x2スピーカー、2マイクアレイ、4000mAhバッテリー

  • 幅280 x 奥行き111.38 x 高さ21.22 - 32.43mm(スティック突出部40.58mm)、重量608g

Steam Deck、ROG Ally、Nintendo Switchを並べて比較

携帯ゲーム機のようなハンドヘルド型のゲーム用PCは GPD や Ayaneoなど各社が販売していますが、2022年にValveが発売した Steam Deck は低価格と充実したコントローラ、Valve純正のSteam対応で人気商品となりました。

なによりPCゲーム配信プラットフォーム最大手がみずから投入したことで、ゲームパブリッシャー側でも「Steam Deck設定」やポータブル機向け最適化が一般化する動きにつながっています。

ある意味で基準となっている Steam Deck は、ROG Allyと比較すれば二世代ほど古くコア数も少ないAMD APUを採用しつつ、同じ7インチでも1280 x 800という割り切った低解像度のディスプレイで描画負荷を抑え、フレームレートと低消費電力を両立する設計でした。グラフィック性能の目安としては1.6TFlops。あくまで目安ですが、無印PS4が1.8TFlops (fp32)です。

AMD Ryzen Z1 Extreme CPU情報

ROG Allyは細かな文字やUI要素もデスクトップゲーミングと遜色なく描画できる1920 x 1080フルHDを採用しつつ、Ryzen Z1 Extremeの最大8.6TFlopsという高いグラフィック性能でフレームレートを確保します。

AMDの超解像技術 FSRにも対応するため、内部的には低解像度で、描画は物理解像度にスケールする設定でもある程度は画質の維持が可能。ゲームの負荷や好みに応じて、柔軟な設定ができる点はPCゲーミングでは重要です。

コントローラのボタン一つで開くコマンドセンター(クイックメニュー)から画面解像度やフレームレート上限、動作モード(最大消費電力)を設定できるため、同じゲームでも分かりきった周回や収集は低消費電力モードで、対戦や初見のステージは最高性能といった切り替えすらできます

Gears Tactics。低解像度には不向きな情報量の多いストラテジーも無問題

ディスプレイの120Hz(秒間120コマ書き換え)対応は、グラフィック設定を落として低fpsで何とか遊ぶゲームも多いポータブル機で意味ある??と思えますが、実際に大きいのはVRR(可変リフレッシュレート)に対応すること。

グラフィック性能あるいはバッテリーに余裕がなく、60fpsで固定できなかったりフレームレートがふらつくポータブル機こそVRRの恩恵を受けられます。

RAMが高速ながら16GB固定なのは、RAM量依存の特定ゲームを遊ぶ場合は要注意の点。統合メモリなのでGPUもここから使います。初期設定では4GB確保、変更可能。

消費電力からも当然冷却ファンを搭載しますが、低速では静かな環境でないとほとんど聞こえないレベルで静音性に優れています。最高性能を出せばファンも全力で回りますが、耳につく成分が少なくストレスに感じにくい音です。排気口に手をやって初めて熱さに気づく優れた熱設計は、ゲーミングブランドROGの面目躍如といったところ。

内蔵512GBストレージのみ、高速microSDXCで拡張対応

ストレージ512GBは、100GB近い大作PCゲームも多いなかではあまり余裕がなく、遊びたいゲームを片っ端からインストールしていると音速で足りなくなります。とはいえ大作でも出先で遊びたいタイトル数本は常用でき、内蔵SSDよりわずかに遅くなるものの microSDXC から起動も可能です。

このあたりはゲームとの付き合い方のスタイルで大きく変わるところですが、とりあえず「遊ぶかもしれない」で埋めてしまう習性があるゲーマーは、仮に大容量ストレージのゲーミングPCでも常に上限までインストールしてしまい、新作を買うたびどれを消すか悩むことになるため、運用上はあまり変わらない説もあります。

大容量が常に正義ではあるものの、ROG Allyに関しては512GBモデルしか存在しないため、価格差やGB単価で悩む余地はありません。

コントローラはフルサイズ、背面ボタンあり

コントローラとしてはスティックのサイズも余裕があり、押し込みもしやすい合格点。グリップも握れる形状です。トリガーもしっかりアナログ。抵抗は軽めでトラベルもしっかり確保しています。

(贅沢をいえば、トリガーはEliteコントローラやDualSense Edgeのように物理スイッチで浅く変更可能にしてほしかったところ)

初期のサンプルではABXYボタンがくっつく(戻りが悪い)報告があったようですが、手元では発生していません。

Steam Deck と同様に背面ボタンも二つ搭載しており、初期で方向キーやボタンと同時押しでWindowsのアプリ切り替えやタスクマネージャ、ソフトウェアキーボード表示、スクリーンショット撮影といったショートカットが割り振られています。

基本的にアプリ(ゲーム)を全画面で、かつキーボードもマウスも接続せず使うPCなので、ショートカットでアプリ切り替え等ができるのは重要。ゲーム専用機とは異なり、標準で普通にマルチタスク動作できる / してしまう Windowsでは発生しがちな無応答アプリもパニックにならず落とせます。

背面ボタンがどうあるべきか、特に握り込んでうっかり押してしまう問題はコンシューマも含め各社が試行錯誤している現状ですが、ROG Ally はSteam Deck ほどではないもののやや重く、押せる方向を限定して暴発を防ぐ方向です。

Xbox Elite ワイヤレスコントローラや DualSense Edge のような着脱式や、わずかな力で反応するヘアトリガー系ではないため、どちらかといえば低頻度のボタンやショートカット用のトリガーとして使うほうが向いています。

このほか、いわゆる「スタート・セレクト」や「メニュー・オプション」にあたる部分に二つの追加ボタンがあり、それぞれROG Ally 独自のクイックメニューである「コマンドセンター」と、汎用アプリ「Armoury Crate SE」が起動してゲーム機ライクな使い勝手を助けています。

Windowsアプリなら原則なんでも

Nintendo Switchのようなゲーム専用機、あるいは Steam専用にしてゲーム専用機ライクな操作感を実現した Steam Deck との最大の差は、デスクトップと全く同じ Windows 11が動くこと。

起動時もデスクトップそのままのサインイン画面で、アプリアイコンやゴミ箱が並ぶWindowsのデスクトップになります。

本当にそのままWindows 11なので、Windows環境でなければ動かないアプリ、Epic や GOG Galaxy や Xbox Game Pass (PC Game Pass)といった各社のゲームランチャー、そのほか Windows 11に対応するあらゆるアプリやゲームが原則動きます。

古典FPS『Quake』 (リマスター)なら低TDP設定でも120fps動作

ソフトによっては低解像度での動作を想定しておらず、縦720や800ピクセルの端末では画面外にはみ出て困る場合もありますが、ROG Allyならば最低限の画面サイズとして一般的なフルHDをそのまま表示できます(Windowsデスクトップ側の設定で、表示スケールを変更する必要はあるかもしれませんが)。

ボタンひとつで開ける独自アプリ Armoury Crate SEの機能は、Steamほか各社ランチャーの導入ショートカット、各種ハードウェア設定、そして「ホーム画面」的にゲーム(アプリ)を簡単起動できる Game Library。

Steamのゲームでも Microsoft Storeでも Epic でも、あるいはゲーム以外のアプリでも、手順を意識せずコントローラとボタンだけで起動でき、ゲーム機や Steamの Big Picture Mode的な操作に近づけるためのアプリです。

パフォーマンスの例

「AAA大作ゲームがどこでも遊べる」は嘘ではありませんが、体積も消費電力も桁が違うデスクトップの本格的なゲーミングPCと遜色なく動くわけではありません。念のため。

Forza Horizon 5 は中設定720pで80fps近く、1080pでも60fps達成

より正確に言うなら「AAA大作ゲームの多くが、グラフィック設定を調整すればそれなり~快適に遊べる」くらい。

標準設定で何の問題もなく滑らかに100fps超動作するゲームもあれば、設定を妥協してやっと前世代の家庭用ゲーム機程度の場合もあり、デスクトップでも負荷が高いゲームのなかには快適に遊べないものもあります。

特定の遊びたいゲームがある場合、8コア16スレッドのRyzen Z1 Extremeと16GB統合メモリでどこまで動くか、許容できる設定があるかは要確認。

逆にデスクトップでは動作要件が厳しく重いと有名なゲームでも、小さな画面にあわせた解像度などグラフィック設定を下げれば意外なほど遊べるフレームレートで動く場合もあります。

最近では Steam Deck が注目を集めたため、ゲーム側が低TDPに最適なプリセットを最初から用意することも増えてきました。

あくまで目安として、公称では

『Cyberpunk 2077』41fps
『モンスターハンターライズ』109fps
『ホグワーツレガシー』59fps
『Call of Duty Modern Warfare II 2022』94fps

この数字は電源接続の Turboモード・1920 x 1080ピクセル表示・標準グラフィック設定の場合。

寝転がってPCゲームがしたいときなど、電源に接続できる場合はどこまでいけるかの目安です。

サイバーパンク2077は中設定・1080p ・FSR 2.1有効で45fps前後

電源に接続していないときや、バッテリー駆動時間を伸ばすための低TDP動作モードではfpsが低下しますが、グラフィック設定を低くすることで滑らかさを優先する、駆動時間を優先するなど、遊ぶゲームと内容、状況と好みで選択することになります。

ひとつ留意すべきなのは、少なくとも現状の ROG Ally は低消費電力よりも高TDPの最高性能で真価を発揮すること。

OSもハードウェア構成も違い1:1の比較は難しいものの、10Wなどの極端に低いTDP設定では、世代遅れのSteam Deckと変わらないあるいは逆転する現象が起きます。
(逆にいえば、コア数も少ないSteam DeckのAPUは超低消費電力動作と長時間駆動に強みがあるともいえる)。

動作モードは手動設定も可能

多機能な独自アプリ。課題あるいは「伸びしろ」も広大

Windowsをコントローラだけでゲーム機ライクに使いやすくするため、右側のメニューボタン下には独自アプリ「Armoury Crate」ボタン、左側にはクイックメニューにあたる「コマンドセンター」ボタンがあります。

コマンドセンターの機能はスクリーンショット撮影、音量や輝度調整、画面解像度切り替え(720p / 1080p)、動作モード選択(TDP10Wのサイレント・15Wのパフォーマンス・25Wのターボ、およびカスタム)、消費電力やFPSのリアルタイムカウンターオンオフなど。Windowsの設定に深く潜ったり、別アプリからオプションを操作する必要はありません。

スティックのRGBライトはレインボーもCPU/GPU温度連動も

Armoury Crateは、ASUS ROGゲーミングPCが標準搭載する総合ユーティリティ的なアプリ。ROG Ally ではスタートアップで自動起動し専用ボタンで開く Armoury Crate SE がホーム画面的な役割を果たします。

標準の「Game Library」画面では起動したゲームやアプリがタイルとして並び、方向キーとAボタンだけで起動できます。理想的に動作すればまさにゲーム専用機のようなシンプルさです。

ただし、Armoury Crate SEはゲーム特化のシンプルOSでもGUI環境でもなく、あくまでひとつのアプリ。ショートカットでゲームを起動したあとの面倒は見てくれません。

起動したゲームや配信プラットフォームのランチャーアプリ側は小さな画面とコントローラ操作に最適化しているとは限らないため、小さなエラーメッセージがポップアップしたり、アプリが重なって見えなくなったり、頻繁にWindowsとしての操作が必要になります。

たとえば規定の設定で Steamのゲームを始めようとタイルにあわせてAボタンを押せば、まずWindowsデスクトップに戻ってSteamがデスクトップモードで起動し、更新やログインが挟まり、ストアのポップアップが開いたうえで、ようやくゲームが起動します。

ゲームによっては規定でウィンドウモードで開くため、ほかのウィンドウに隠れてどこに行ったか分からなくなることもあります。タスクスイッチのショートカットや画面タップで前面にして、ゲームごとの設定に辿り着いてフルスクリーンにして、ようやくゲーム機らしく遊べるといった手間も。

各社のランチャーやゲームによって挙動が違い、何枚もウィンドウが開いたり画面外にはみ出たり、ソフトウェアキーボードでログインして情報を保存する等々。落ち着いて遊べるまでの手間は、うまく設定すれば次回以降は軽減できるものの、物理キーボードやマウスがないだけデスクトップのWindows PCと以上の煩雑さになることもあります。

同じ理由で、ゲームをすばやく安全に閉じたり、切り替える統一された方法もありません。

ゲーム中に Armoury Crateボタンを押して、次に遊びたいゲームを起動すると、単純にマルチタスクで重いゲームを同時に動かそうとします。

コントローラ操作についていえば、通常はスティックでマウスカーソルを動かすデスクトップモードで、ゲーム中はゲームパッドとしてシームレスに動くはずですが、往々にしてこの自動切り替えがうまくゆかず、コマンドセンターから切り替えて試行錯誤を強いられることもありました。

純粋な不具合らしきものについては、当初はコントローラの入力が効かなくなる、コマンドセンター(クイックメニュー)と背面のゲームで二重に入力される、一度だけ入力しても必ず二回入力になる等々も多発しましたが、発売直後のアップデートで急速に改善しています。

こうした現象には、そもそもWindows 11の仕様であるもの、各社のゲームランチャーがハンドヘルド操作を想定していないことによる不便、独自アプリの謎挙動や不具合などが複雑に関係しており、ASUSだけを責めることはできませんが、逆にASUSだけがいくら頑張っても本質的には改善が難しい部分もあります。

理想的にはマイクロソフトがWindowsのゲームモード的UIを作り、ゲームの終了やセーブ、レジュームといった動作を統一して、かつゲーム側が導入すれば Steam Deckやゲーム専用機の使い勝手になるはずですが、各社が自由にアプリやプラットフォームを設計できる多様性こそPCゲーミングの強さという面もあります。

マイクロソフト的には「ゲーム専用機としての使い勝手」はXboxとして展開していること、WindowsのなかでPC Game Pass や Microsoft Store が他社と競合関係にあることを考えると、短期間での解決は難しいのかもしれません。

周辺機器でPC作業も実用域、メガネ型ディスプレイと好相性

Windows 11 PCそのものであることは携帯ゲーム機としては裏目に出ることもありますが、一方でキーボードが付いていないだけのPCとして使えるのは魅力でもあります。

タッチやオンスクリーンキーボード操作はあまり快適とはいえませんが、Bluetoothでキーボードやマウスを接続すれば何の問題もなくPCとして利用可能です。USB-Cやワイヤレスディスプレイで外部モニタに接続もできます。

Windows PC用の周辺機器がそのまま使えるのも、当然とはいえ便利なところ。特にゲーム機としてもPCとしても相性が良いのは、XREAL (旧nreal) Air やVITURE OneといったUSB-C接続のメガネ型ディスプレイ。

7インチディスプレイに縛られず、空中に浮かぶ鮮明な大画面でゲームを遊んだり、あるいはPC作業もできます。

まとめ

ポータブルゲーミングPCのカテゴリは急速なメインストリーム化の過渡期にあり、ASUSとしては初代機でもあるため、まだ使い方を選ぶゲーマー向けではあるものの、どこでもPCゲームができると思うと持ち歩いているだけで嬉しく、Windows 11 PCとして十二分に使える製品。

家に帰れば好きなものが待っているから多少のことには耐えられるという「生ハム原木」なるネットミームがありましたが、ROG Allyを持ち歩けば帰宅を待つまでもなく、「かばんにナイトシティと狭間の地とゲームパスがあるんだが?何ならここで立ったままSteamの積みゲーを崩せるが??」と、誰に何をイキっているのか分からない謎の無敵感すら覚えます。

一方で、外見こそゲーム機でも起動終了の操作感や駆動時間、手軽さや洗練はゲーム専用機やSteam Deckに及ばないため、従来どおりのPCゲーミング環境を手持ちで使うものと思って買うことが大事です。

期待値をそこに設定すれば、アップデートや改良で使い勝手が向上することも、いわゆる「運用」で自分なりの使い方を確立してゆくのも楽しみになります。

余談:ROG Allyは令和のゲーミングEee PCになるか

以下唐突な余談。今年の春に取材で台北のASUS本社を訪れた際、明るく緑豊かな新社屋のロビーで印象に残ったのは、グループの歴史でも重要な一幕としてあの「Eee PC」が飾られていたことでした。

Eee PCとは、最初の iPhoneと同じ2007年に発売されたA5サイズの小型ノートPC。当時も高価な超小型PCは存在しなかったわけではなく、特に日本ではいわゆる「サブノート」と呼ばれるジャンルがローカルな人気を保っていましたが、Eee PCはシンプルな仕様ながらインテル製プロセッサでフル機能のWindows XPが動き、かつ300ドル台からという衝撃的な価格でPC業界に大きなインパクトを与え、各社がこぞって参入する netbook ジャンルの嚆矢となりました。

台湾のASUS本社ロビーに飾られたEee PC

ポータブルでは現状最高レベルのプロセッサを備えるゲーマー向け製品のROG Ally と、大胆に割り切った構成と低価格で広い層にPCを届けたかつての Eee PCでは狙いも位置付けもまるで異なりますが、狭いニッチだったジャンルにASUSがハイレベルな製品を投入して業界全体に刺激を与え、メインストリーム化を促進する意味で、ROG Allyには携帯WindowsゲーミングPCのEee PCとなり得るポテンシャルを感じられます。

ROG AllyがSteam Deckや各社とともにポータブルゲーミングPCジャンルを活性化し、ハンドヘルド向けUIにSteam以外のプラットフォームも本格対応するようになり、あるいはマイクロソフトもWindowsのハンドヘルドゲーミング対応を向上してくれれば、その時こそROG Allyかその後継は、ハードウェアの潜在能力を十二分に活かす使い勝手も手に入れるはずです。

台北のROGストア

半年や一年では実現しない可能性の話ではありますが、こう思えばROG Allyは現状でも額面どおりの「どこでもPCゲーミング」環境が高コスパで手に入るうえに、更新や環境の進展を通じてPCゲーミングの未来も最前線で体験できる、特等席のチケットのようなデバイスです。




《Ittousai》
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