低価格で大容量を実現。CFサイズの超小型HDD「マイクロドライブ」(340MB~、1999年頃~):ロストメモリーズ File017

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宮里圭介

宮里圭介

ディスク収集家

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

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[名称] マイクロドライブ、microdrive、Microdrive
(参考製品名 「IBM 340MB マイクロドライブ」(DMDM-10340))
[種類] HDD
[記録方法] 磁気記録
[メディアサイズ] 42.8×36.4×5mm
[記録部サイズ] 1インチ
[容量] 340MB~8GB
[登場年] 1999年頃~

ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。

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「マイクロドライブ」(microdrive、Microdrive)は、IBMが開発した1インチHDD。コンパクトフラッシュと同じ形状(CF Type II)となるため、デジタルカメラやPDA、ノートPCといった機器で利用できるというというのが強みです。

当時、デジカメ用のメディアとしてフラッシュメモリーは使われていましたが、大容量モデルが少なく、あっても容量単価が高いというのが悩みでした。具体的には、コンパクトフラッシュ(CF)の最大容量が128MBで、価格は5万円台といったところ。これに対しマイクロドライブは340MBが5万8000円(希望小売価格)で発売されたため、圧倒的な容量単価の安さから、大容量を求める人達から支持されました。

とはいえ、メリットばかりではありません。まず、厚みが5mmのCF Type IIとなるため、3.3mmのCF Type I用に作られた機器には物理的に入らないという罠がありました。そのため、機器側のケースやスロットを物理的に削り、強引に使えるよう改造した人もいたとかいないとか……。

▲左がType Iで、右がType II。厚みが違います

また、1インチとはいえプラッターを物理的に回転させるため、使用電力が大きくなるのも問題です。デジカメやPDAであればバッテリーの持ちが悪くなってしまいますし、そもそも、電力不足でマイクロドライブが動作しない、といったこともありました。

これ以外にも、小型とはいえHDDとなるため振動や衝撃に弱く、CFよりも物理的に壊れやすいという弱点もありました。CFと同じ感覚で扱って壊してしまい、財布にも精神的にも大ダメージを負った人は少なくないでしょう。

2000年あたりから、フラッシュメモリーの大容量化・低価格化が激しくなってくると、それと競うかのようにマイクロドライブも大きく変わっていきます。1999年6月に5万8000円だった希望小売価格は、9月には4万9800円になり、翌年2000年6月には3万9800円へ。更に同年9月には2万4800円に引き下げられるなど、たった1年ちょっとの間に半額以下となりました。

また、1999年6月に340MBから始まった容量も、2000年8月頃に1GB、2003年11月頃に4GB、2005年2月頃に6GB、2005年10月頃に8GBが登場するといったように、大容量化していきました。

ちなみに、IBMと日立製作所は2003年にHDD事業を統合し、日立グローバルストレージテクノロジーズ(HGST)を設立。そのため、2003年以降のマイクロドライブはIBMではなく、「HITACHI」のロゴが入っています。

ということで、今回はマイクロドライブの詳細を見ていきましょう。

ほぼ500円玉サイズのプラッターがカワイイ

当然ながら、表面の見た目はCFとほぼ同じ。特徴といえば、角がネジ止めされているあたりに、HDDっぽさがあることくらいでしょうか。なお、ネジは3本見えていますが、シールの下に1本隠れているので合計4本あります。

裏面もそれほど特徴があるわけではありませんが、「DO NOT COVER THIS HOLE」と書かれた通気孔があるあたりで、HDDと気が付きます。あと、振るとカタカタ音がして、中に機械が入ってる感じがあるのもHDDらしいところです。

▲ネジで止めてあるあたりに、HDDっぽさを感じます
▲通気孔があるのはHDDの特徴といっていいでしょう

さらに細かい違いがないかを見比べてみると、CFにあるガイドレールの切り欠きがない、裏面下部に突起(引き抜き時の滑り止め?)がないといった違いがありました。が、あまりに細かいですね。

▲CFにある突起がマイクロドライブにはありません

マイクロドライブの特徴を瞬間的に、そしてわかりやすく知ってもらうには、中身を見てもらうのが一番です。ということで、故障して動かなかった1GBモデルを分解してみました。

▲こちらが内部。小さいながらもHDDそのものです
▲基板も小さいので、相対的にICが大きく見えます

横にあるのは比較用の500円玉。プラッターがほぼ同じサイズだということからも、この小ささが伝わるかと思います。

ちなみに、表面の金属カバーを開けたときに出てくるのは、基板側。裏面のシールをはがしてネジを外すと出てくるのが、内部のプラッターです。

もうひとつのCF Type II型HDD「ST1 Drive」

大容量が求められるデジカメにおいて、CFと置き換えてスグに使える手軽さから注目されたマイクロドライブですが、もうひとつの分野からも注目されていました。それが、携帯オーディオプレーヤーです。

2000年頃は、フラッシュメモリーを使った数多くのシリコンオーディオプレーヤーの黎明期。内蔵フラッシュメモリーのみの製品や、スマートメディアやMMC、メモリースティックといったメディアで容量を拡張できるものなど、多数の製品が発売されました。

競争の焦点となったのは、主に小型化や低価格化。従来のプレーヤー同様、好きな曲を持ち歩けるという利用スタイルで考えられていたためか、数十曲も入れば十分とみなされ、容量はそこまで重視されませんでした。というより、高価なフラッシュメモリーを使うため、値段が高騰してしまうのを嫌って容量を増やせなかった……という方がより正確でしょう。

そこに登場したのが、2001年11月発売の初代iPodです。1.8インチHDDを内蔵することで5GBという大容量を実現し、1000曲を保存でき、いつでもどこでもどんな曲でも聞けるという、新しいスタイルを提案。この「1000曲をポケットに」というスタイルが大ヒットし、携帯オーディオプレーヤーとしては後発なのに、一躍人気商品になりました。

とはいえ、でかい、重い、高いと3拍子揃っていて、それまでの携帯オーディオプレーヤーのトレンドとは正反対。他社からもHDD搭載モデルが登場したほか、時間が経つにつれフラッシュメモリーの価格が下落し、1000曲とまではいかなくとも100曲単位で持ち歩けるようになると、サイズと重量が足を引っ張ることになります。

こうした状況で、2004年1月に投入されたのが「iPod mini」。容量は4GBで、当時最大40GBを誇ったiPodの10分の1しかありませんが、約103gと軽くてコンパクトなのが強み。競合製品は256MBくらいが一般的でしたから、そこそこのサイズと軽さでそれなりの容量というiPod miniは、十分受け入れられる余地がありました。

このiPod miniに使われていたのが、容量単価に優れていたマイクロドライブです。前置きが長くなりましたが、そのiPod miniに使われていたのがこちら。

▲HITACHIのロゴとリンゴマークがあります

iPod miniに使われていたと思いっきりわかる、ロゴマーク入り。フラッシュメモリーでは高額になってしまう4GBも、マイクロドライブなら価格を抑えることができました。

複数のサプライヤーから部品を調達し、価格を叩……下げるのを得意とするアップルなので、当然ながら1社に頼ることはしません。なので、モデルによってはSeagate社のHDDを搭載していることもありました。

▲こちらはSeagate製。リンゴマークは裏面にあります
▲こちらが裏面。おリンゴさまがいます

マイクロドライブはIBMやHGSTの登録商標なので、Seagateの製品はST1 Driveと呼ぶべきですね。まとめて呼ぶなら、CF Type II型HDDでしょうか。

ちなみに、このCF Type II型HDDを採用するオーディオプレーヤーはアップルだけではなく、クリエイティブメディアの「NOMAD MuVo2」という製品もありました。

有名だったのが、マイクロドライブ単体を買うより、iPod miniやNOMAD MuVo2から引っこ抜く方が安かったこと。カメラやPCで使おうと、これらを分解する人も少なくありませんでした。

ただし、iPod miniはマイクロドライブが流用できないという噂があったことから、引っこ抜き目的だとNOMAD MuVo2が圧倒的に人気でした。といっても、手元のST1 Driveは普通にPCで使えたので(マイクロドライブは故障品なので確認不可)、流用できるかどうかはモデルによって違ったのかもしれません。なお、価格ではNOMAD MuVo2のほうが安かったので、そういう意味でもこちらのほうが人気でした。

参考:


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《宮里圭介》
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