ChatGPT>Bardの評判は想定内。GoogleピチャイCEO、今週中にも性能アップ版投入を確約(Google Tales)

テクノロジー AI
佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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ChatGPT>Bardの評判は想定内。GoogleピチャイCEO、今週中にも性能アップ版投入を確約(Google Tales)
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GoogleがOpenAIのChatGPT対抗のBardを米英で一般公開してから10日ほど経ちました。

評判はあまりよくありません。そんな中、New York Timesのテック系ポッドキャスト「Hard Fork」の3月31日配信回のゲストとして、Googleのスンダー・ピチャイCEOが登場しました。

Hard Forkは、米テック業界について長年記事やコラムを書いているNew York Timesのコラムニスト、ケビン・ルースさんと、やはり業界が長くて、最近新しいテックメディアPlatformerを立ち上げたケイシー・ニュートンさんが、昨年10月から配信しているポッドキャストです。AIやメタバース、暗号資産の登場で、シリコンバレーが大きく動いていることを中心に語っていて、これまで、OpenAI、Microsoft、GoogleのAIについて頻繁に話題にしてきました。

ピチャイさんの登場は、Google側からの申し出で実現。Googleplex(Googleの本社キャンパス)へのご招待です。

▲Googleplexで記念セルフィーを撮るルースさん(右)とニュートンさん

OpenAIやMicrosoftに先を越されて「コードレッド」(緊急事態発令)したGoogle、という報道(最初に報じたのはNew York Timesでした)があふれる中、現状説明をする場としてHard Forkを選んだのでしょう。

鋭い2人はさすが、単刀直入に質問を飛ばしていますが、ピチャイさんからは驚くような発言はなく、いかにもピチャイさんなおだやかな語り口で淡々と答えています。その中から、幾つかの問答を、筆者の心の声(とツッコミ)を交えてご紹介します。

質問BardがChatGPTより劣っているという評判についてどう思います?

▲Bardの画面

ピチャイBardは今のところLaMDAの軽量版を使っているので、こういう反響は想定内です。高性能カーのレースにチューニングしたホンダのシビックで参戦したようなものですから。でも、もうすぐPaLMにアップグレードしますよ。そうなると推論やコーディングなどの性能が向上し、数学的な質問への回答も改善されます。こうした改善を来週中にはお見せできるでしょう。

筆者の心の声それは楽しみですね。早く日本でも提供しないかなぁ。

質問例えばGmailにBardを組み込んだりしないんですか?

ピチャイ既に一部の外部テスターが試しています(発表済みの話です)。安全な方法でパーソナライズしたモデルを提供できれば、非常に便利になるでしょう。技術的には可能ですが、まずは安全性が大事です。

筆者の心の声たしかにGoogleさんなら、私の過去のメール情報に基づいて私専用モデルを構築するのなんて簡単そうです。

質問OpenAIがChatGPTをリリースしたのは無謀だったと思いますか?

ピチャイそんなことはありません。社会にAIについて理解させ、適応する機会を与えるのは合理的な選択です。ただ、私たちにとっては、高品質で信頼できる体験を提供することが重要です。

質問12月にGoogle内でコードレッドが宣言されたと報じられました。本当ですか?

ピチャイそもそもコードレッドなんて出していませんよ。チームに迅速に動くよう求めているのはたしかですが。コードレッドだというメールをよこした人がいたのは本当です。でもそれは私じゃない。そもそも私は2015年からAIファーストを提唱してきました(この後、ラリーとサーゲイにもAIについて相談したというのは本当?という質問には、AIに限らず時々相談してますよ、と回答)。

質問生成型AIのトレーニングを一時停止せよという公開書簡(イーロン・マスクさんや著名な学者も署名していますについてどう思いますか?

▲公開書簡

ピチャイやりかたに同意するかどうかは別として、懸念することは大切です。AIは、規制しないでいるにはあまりにも重要です。また、十分には規制できないほど重要でもあります。1970年代の遺伝子組換えの議論と同様です。遺伝子組換えの場合は、分野のトップ関係者たちが自発的な枠組みを考えました。

質問より高度なAIが人類の破滅につながる可能性は?

ピチャイAIは気候変動と同様に、人類すべてに影響するテーマです。一方的に安全を確保できないという点でも気候変動に似ています。したがって、対処する正しい方法は、熟慮し、懸念し、真摯に取り組むことです。

質問Bardの性能が上がって、Google検索が不要になり、誰も情報源である(われわれのような)パブリッシャーのサイトを開かなくなっってしまったら、どうすればいいでしょう?(さすがの2人も「おたくの主要な収入源である検索広告が成り立たなくなったらどうするの?という聞き方はしなかった)

ピチャイパブリッシャーのエコシステムにはコミットしています。思慮深く進化させていきます。

筆者の心の声具体的な対策は内緒なのか、まだないのかは、わかりませんでしたね。


ピチャイさん、終始おだやかな調子でした。ちなみに、ホンダシビックを例えに出しましたが、乗っているのはポルシェやベンツ、BMWだそうです。

Googleとしては、このインタビューで株主やらユーザーやらを安心させたかったのでしょう。ともあれ、来週にはBardがもう少しおりこうになるらしいことはわかりました。

誰が先陣を切るかとか、市場を制覇するかではなく、人類のためにみんなで安全なAIを構築していかなければなりません、という感じでした。これが本音で、そういう方針をステークホルダーたちも認めているといいんですが。


追記:連載名を「Google Tales」に変更しました。

《佐藤由紀子》

佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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