スイスの大手金融機関UBSが、同国2位の銀行であるクレディ・スイス・グループを買収することを発表しました。
今回の買収は、米シリコンバレー銀行、米シグネチャー銀行がそれぞれ、米国の銀行における2番目と3番目の規模で相次ぎ破綻したことにより、世界市場に金融システムへの不安感をもたらしたことが発端となりました。シリコンバレー銀行は主にシリコンバレーのハイテクベンチャーを相手とする金融機関として、またシグネチャー銀行は暗号通貨関連企業を顧客とした法人取引を行う銀行として知られていました。
かねてから経営不安がささやかれていたクレディ・スイスは、これらの銀行の破綻による金融不安が飛び火する格好で経営の先行きに不安が高まり、株価が急落しました。さらに筆頭株主であるサウジナショナル銀行が財政支援を提供しないとの報道もマイナス要因として伝えられました。こうした流れを受け、スイス国立銀行は急遽、最大500億スイスフラン(7兆1000億円)を融資する用意があることを示し、株価下落の食い止めをはかりましたが、信頼の回復には至らず、顧客による預金や預かり資産の引き出しが加速したとのことです。
プレスリリースによると、UBSによる買収は、クレディ・スイス株価が新型コロナのパンデミック発生時以来、最悪の週次下落を記録した後、週明けの金融市場再開までにとりまとめられました。この取引はスイス政府、スイス連邦金融市場監督機構(FINMA)、スイス国立銀行その他主要な規制当局によって促進され、事前に合意されているため、株主の承認を必要としないとされています。
CNBCは、関係者からの情報として、規制当局が関与する買収ではあるものの、UBSには買収した資産を適切な方法で運用する自律性が与えられ、買収によって発生する余剰人員の大規模な削減もあり得ると伝えています。
なお、2022年末時点でクレディ・スイスのバランスシートは、2008年に破綻した当時のリーマン・ブラザーズの約2倍の規模になっています。複数の海外子会社を抱えるなど国際的な連携も進んでいることから、現状を見極め、整然とした管理体制を維持することが、より重要になっているとのことです。
買収の話が出た当初、UBSは約10億ドル(約1320億円)の買収額を提示したと伝えられています。しかしその額では株主や劣後株式を保有する従業員が損害を被ることになるため、クレディ・スイス側は難色を示していました。そして日曜日の午後には、UBSが10億スイスフランを大きく上回る額で買収に向けた交渉を進めていると伝えられていました。
一連の流れの中で欧州の株式市場は金融株を中心に下落し、ニューヨーク株式市場のダウ平均株価も大幅な値下がりを記録、東京株式市場では16日に日経平均株価が一時500円を超える下げを記録しました。
クレディ・スイスは、もともとはスイスの鉄道網の敷設や工業化を後押ししたスイス信用協会 (SKA)がそのルーツ。現在では世界の多くの富裕層の資産を管理しており、国際的な投資銀行サービスを提供しています。