Twitterは先日、長年提供されてきたサードパーティ製のクライアントアプリを禁止することを明らかにしました。そして、Twitterクライアントアプリの開発者らは、つぎつぎとMastodonのクライアントアプリ開発へと移行しています。
アプリを提供してきた開発者や企業の多くは、告知もなくAPIを遮断されたことに対しておそらく不満に思うこともあるはずです。しかしそれよりも、まずはこれまでアプリを使ってきたユーザーに感謝を述べ、そして新しくMastodonのクライアントアプリ開発に着手している模様です。
Tweetbotの開発元であるTapbotsは最近、TweetbotをベースとしたMastodonクライアント「Ivory」を早期アクセス版ながらリリースしています。同じく人気クライアントだったFenixの開発者Matteo Villa氏は「Wooly」と名付けたMastodonクライアントをテスト中だと明らかにしました。featherはMastodonクライアントかどうかは明かしていないものの「近いうちに新しい"何か"を発表できることを楽しみにしています！」とツイートしました。
ほかにも、TwitterクライアントSpringの開発者Junyu Kuang氏は「Mona」と呼ばれるMastodonクライアントアプリ、Aviary開発者Shihab Mehboob氏は「Mammoth」と称するMastodonクライアントアプリをもうすぐリリースする予定だとしています。
ただMastodonには先行するクライアントアプリもすでにたくさんあります。今年1月19日にiOS版をリリースしたばかりのMastodonクライアント「Ice Cubes」を開発したThomas Ricouard氏は、かつてはTwitterクライアントアプリを開発しようとしていましたが、どんどん制限がかかっていくように感じ、むしろ「Matodonにチャンスがあると思った」と述べています。
Ice Cubesはレビューも好評で、GitHubのページにもコントリビューターが大勢ついています。そのなかには、Twitterの共同創業者Ev Williams氏も含まれ、このアプリでMastodonを使っているのだそう。
Mastodonは自前のモバイルアプリも提供しています。したがって上に紹介したアプリはライバルでもあります。しかしそれでも、開発者たちがプラットフォームに対応するクライアントアプリを作ることを歓迎しています。
Mastodon創設者のEugen Rochko氏は「有能な人々がたくさん集まって、われわれのプラットフォームとエコシステムに時間とリソースを費やしているのはとても刺激的なことだ」とし「サードパーティのアプリケーションはプラットフォームにとって途轍もなく価値あるものだと思います」と述べています。
もちろん、Mastodonへ移行するかを決めていないTwitterクライアントアプリ開発者もいます。Twitterrificの開発者は「私がMastodonアプリを作るかはまだわからないが、すでに取り組んでいるほかの開発者の様子もご確認ください」とツイートしています。
Twitterは長年サードパーティ製クライアントアプリとの共生関係を保ち、それらアプリはそれぞれの使い勝手の良さを提供してユーザー層の拡大にも寄与してきました。しかし広告が収益のほとんどを占めているTwitterにとって、広告を表示しないクライアントアプリは価値を生み出しません。新オーナーのイーロン・マスク氏がそれを見て、APIの提供に意味がないと思っても不思議はなさそうです。
ただ大量の人員削減や、問題ある発言または行動でアカウントを永久停止されたユーザーを次々に復活させはじめたTwitterの運営を懸念した広告主はTwitterを離れ、広告支出は2023年11月で前年比55%減、12月は前年比71%減だったと伝えられています。素人考えながら、サードパーティのクライアントアプリを切り捨てるよりも、それらのアプリにも広告を表示させてエンゲージメント数を稼ぐといったことができなかったのだろうか、という気はしないでもありません。
ちなみにアプリ開発者ではないものの、先日Twitterから離脱した模様だと伝えられていたアップルのフェロー、フィル・シラー氏は、Mastodonでアカウントを開設し、それが本人であることが確認されたとのこと。Mastodonでは、TapbotsのIvoryに関するトゥートもしています。
