GoogleはなぜChatGPTに後れをとったのか。そしてレイオフを逃れたAIチームは追いつけるのか(Google Tales)

テクノロジー AI
佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

特集

GoogleはなぜChatGPTに後れをとったのか。そしてレイオフを逃れたAIチームは追いつけるのか(Google Tales)
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Google(というかその親会社のAlphabet)が1万2000人のレイオフを発表しました。これでいわゆるGAFA(FacebookはMetaになっちゃったので古い)でリストラを発表していないのはAppleだけに。Apple以外はコロナ禍の2019年~2022年の間、かなり雇用を拡大していた(Alphabetは57%増)ので、予想されていたものではあります。

スンダー・ピチャイCEOは大規模リストラの理由を「AIへの初期投資で生まれた大きなチャンスを完全につかむため」と公式ブログで説明しました

▲Google I/O 2022でAIについて語るスンダー・ピチャイCEO

“初期投資”というように、Googleは2012年ごろからAIに取り組んできました。2014年には英DeepMindを買収し、2016年に「AlphaGo」が世界トップ棋士に勝ったときは、AIの未来を見たような気がしたものでした。

今では「Googleアシスタント」や「Google Lens」が日常で活躍しています(Googleは19日、 さまざまな自社サービスでAIを使っていることをアピールするブログを公開しました)。

ところが、突然現れた(でもないですが)「ChatGPT」にお株を奪われたように見えます。

テクノエッジでも関連記事がたくさん読めるので、説明は不要だと思いますが、ChatGPTはOpenAIが2022年11月30日に公開したテキスト対話型AIツールです。無料で使えて、しかも日本語で質問すると、流暢な日本語で答えてくれるので、日本でもとても話題になりました。

▲ChatGPTは日本語でも答えてくれます

Googleだって、本当はやれば出来る子です。2021年のGoogle I/Oで発表した「LaMDA」(Language Model for Dialogue Applications)は、ChatGPTと同じようなAI言語モデル。発表以来着実に成長していて、昨年6月には開発に携わってきたエンジニアが「LaMDAは集合精神のようなもので、意識を獲得した」と言い出してしまったくらいです(彼はこの後解雇されちゃいました)。

でも、GoogleはOpenAIのように気軽にLaMDAを無料で公開したりはしません。大企業なので、何か問題が発生したときのダメージがOpenAIより大きいからだと思います。

Googleは1月16日、「Why we focus on AI (and to what end)」というタイトルの公式ブログを公開し、「われわれは、AIがまだ発展途上のテクノロジーであり、リスクをもたらすことを理解している。AIを開発し、使うには、これらのリスクに対処する必要がある。だからこそ、われわれは企業として、責任を持ってAIを追求しなければならないと考えている」と説明しました。つまり、拙速なことをしたら怖いことが分かってるから慎重にやってます、ということですね。

ChatGPTは感心するような返事をくれることが多いですが、間違えることも結構あります。

最近CNETがChatGPTを使った記事に誤記が多いと指摘されました。


経済記事なら書けるだろうと任せたら、数字をしれっと間違えていたという恐ろしい話。

人間と違って堂々とまことしやかなことを書くので、間違い探しが大変です。全部裏を取るくらいなら、人間が書いた方が早そうです。

OpenAIはまだまだ小規模な新興企業なので、多少の失敗は大目に見てもらえています。ChatGPTは間違えもするよ、とあらかじめことわっているし。でも、Googleはそうはいきません。間違えられないし、著作権侵害やプライバシー侵害で訴えられたら困ります。

もしかしたらLaMDAの方がChatGPTよりすごいとしても、公開しなかった背景はそこにあるのかもしれません。いろいろな問題が発生しないようになるまではAI Test Kitchenでの限定公開で鍛えるつもりでした。

そういうつもりでしたが、MicrosoftがBingにChatGPTを統合するかもといううわさがあったりして、のんびりしていられない状況になってきました。


それで、AIに集中、となったのでしょう。品行方正で精度の高いAI(なんてことができるかどうかわかりませんが)をなるはやで開発するためには、相当の覚悟と予算が必要です。

うわさでは、Googleも今年のGoogle I/Oでチャットボット機能を備えた検索エンジンのデモを披露するとかしないとか。

でも、チャットボット機能搭載の検索エンジンってどういうデザインになるんでしょうか。今のGoogle検索の検索枠に質問を入力すると、検索結果としてチャットボットが答えてくれるのかな?

▲現在のGoogle.co.jp

もしその回答が間違っていたら困るし、完璧だったらそれはそれで困ります。

だって、Googleの収益のほとんどは検索広告の売り上げだから。検索結果のトップに一番正しい答えが掲載されたら、広告をクリックする必要はなくなります。

▲検索広告がクリックされればGoogleにチャリン

Microsoftにとっては広告収入が総収入に占める割合は微々たるものなので、Bingでの広告収入が減っても大したことはありません(検索結果が大嘘だったら大企業としてどうするんだという懸念はあります)。でも、Googleの総収入の82%が広告によるものです(2022年第3四半期の場合)。

若い人はGoogle検索は使わないという話もあるし、各国の当局から睨まれていて広告のターゲティングが難しくなってきているしで、広告で食べていくのは難しくなってきています。Googleは当然、広告以外の収入源についても模索しているでしょう。

New York Timesによると、ChatGPTのデビュー直後、Google Search(AIを開発しているチーム)の偉い人達は緊急会議を開いて対策を練ったそうです。その中で、Androidアプリを簡単に開発できるツールなど、企業に販売するAIツールについても話し合われたとか。

1万2000人のレイオフはAI以外の広範なチームに影響があるそうで、今のところ、Chrome、Google Cloud、Area 120、NestのOS「Fuchsia」、Androidの従業員が解雇されたことが確認されています。

個人的には、Googleにはこれからも面白いハードウェアやサービスを出し続けてほしいので、元気でいてほしいんですが。

余談ですが、ChatGPTに「LaMDAを知っていますか?」と聞いたところ、OpenAIが開発したと答えました。

▲しれっと自分の手柄に

「LaMDAはGoogleが2021年に発表したのでは?」とたたみかけると、「申し訳ありませんが、私が学習した知識カットオフが2021年であるため、2021年以降にGoogleが発表したLaMDAに関する情報は知らないことがあります。」とのこと。うーん。

▲うーん


追記:連載名を「Google Tales」に変更しました。

《佐藤由紀子》

佐藤由紀子

IT系海外速報を書いたり、翻訳を請け負ったりしています。初めてのスマートフォンはHTC Desire。その後はNexus 5からずっとGoogleさんオリジナルモデルを使っています。

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