「AIは特許を取得できない」米連邦控訴裁判所が判決。発明者の条件は「生身の人間」であること

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Munenori Taniguchi

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「AIは特許を取得できない」米連邦控訴裁判所が判決。発明者の条件は「生身の人間」であること

米国連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)は、AI(人工知能)が発明したとされるフードコンテナと、人の目をひきやすいと謳う点滅灯のふたつについて、特許を認めることはできないとの判断を下しました。

この裁判はコンピュータ科学者のスティーブン・ターラー氏が申し立てていたもの。ターラー氏はこれまでにもEUや英国、オーストラリアで自身が開発したDABUSと称するAIシステムが生み出したと主張する特許を申請してきたものの、いずれも却下されています。

今回もターラー氏は、DABUSの名は "Device for the Autonomous Bootstrapping of Unified Sentience "の略であり、権利の対象とされる自然人と同じく「自然」かつ意識を備えた存在であると主張して、DABUSを発明者として認めるよう訴えかけていました。

米連邦巡回区控訴裁判所はターラー氏の訴えに対して「法令には、しばしば複数の合理的な解釈ができる余地がある」としつつ、「しかし今回はそうではなく、単なる文の解釈で事足りる場合である。特許の発明者はそれを発明または発見した個人、また共同発明ならば個人の集合」だとし、「特許法は、発明者が”natural persons”(つまり人間)でなければならないことを要求している」と述べ、「AIは発明者にはなり得ない」と結論づけました。

さらに裁判所は、判決は「人間がAIを使って行った発明が特許の対象になるかどうかを判断するものではない」と説明。ターラー氏が主張した「AIに特許を与えればイノベーションが促進される」という意見も、「憶測にすぎない」と退けています。

ターラー氏の弁護士はこの判決に対して「(科学と有用な技術の発展を促すという) 特許法の目的を無視している」「社会的に悪影響を及ぼす」とコメント。さらに控訴する意向を表明しました。

ちなみに、ターラー氏は昨年、南アフリカとオーストラリアでDABUSを発明者とする特許の取得を認められて話題となっていました。ただ、南アフリカの特許法は英国や欧米の特許法とは大きく仕組みが異なり、実体審査がないため、出願が完了すればすぐに特許を得られるとされています。さらに特許法および特許規則には「発明者」の定義さえもなく、出願書類で「発明者」が形式的にでも特定されていれば、それで認められてしまうのが実情とのことです。

一方、オーストラリアでは連邦裁判所が当初、DABUSがオーストラリアの法律に基づく特許出願の発明者に該当すると判断したものの、特許庁の上訴によって今年4月に行われた控訴審で判決が覆されています

《Munenori Taniguchi》
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