ポメラ DM250ハンズオン。ユーザーの要求に真摯に応えた決定版

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橋本新義

橋本新義

IT系とゲーム系のフリーライター(タイプ:出オチ)

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PCとキーボードやディスプレイなどの周辺機器、スマートフォン、シューティングゲームなどを好むおじさん。隙あれば出オチやネタ、製品にまつわる余談やいい話を組み込もうとして記事が長くなる程度の能力を持つ。アイコンは漫画家『餅月あんこ』先生の筆による似顔絵です。

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ポメラ DM250ハンズオン。ユーザーの要求に真摯に応えた決定版
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キングジムから本日発表された、デジタルメモの最新モデル『ポメラ DM250』。ここでは、発表会場などで実機に触れて確認できた、ハンズオンレビューをお届けします。

このDM250は、テキスト入力・校正専用機であるポメラシリーズの最新モデル。ポメラはモデル名や本体の大きさなどから、通称「3ケタモデル」と「2ケタモデル」の2シリーズがありますが、本機は前者。現行モデル『DM200』を引き継ぎ、シリーズ最上位となる新機種です。

なお、基本的な仕様や特徴に関しては、発表時の記事を参照ください。

新ポメラDM250発表。WiFiスマホ連携やUSB-C対応、親指シフトやATOKも進化した6年ぶり高級モデル


▲主な新機能一覧。バッテリー駆動時間の延長やUSB Type-C対応、ATOK強化などが上げられています

先に結論をまとめておきますと、DM200で、というより歴代のポメラで「どうしてこれがなかったのか」的な機能の多くを導入した、ブラッシュアップ(というにはあまりに改良点の大きな)モデルとも呼べる位置づけ。

中でも文章作成中に常時表示される文字数カウントやバッテリー残量表示、1ファイル20万字までの容量増加、検索や置換での正規表現対応や、“ドライブレベルで保存領域を分けた”バックアップやゴミ箱機能、US風や2種類目の親指シフトへのキー配列変更機能など、ヘビーユーザーの声を取り入れて改善したであろう機能が満載となっています。

▲充電端子はUSB Type-Cに。ぱっと見でわかりやすい変更点でもあります

さらにハード的な改善点も、数こそ多くはないものの、時代に合わせた改良や、従来からのユーザーの声を丁寧に拾ったもの。
充電端子のUSB Type-Cへの変更や、内蔵Wi-Fiがスマホ連携でも使えるようになった点、充電インジケーターをUSB端子脇に搭載する点、そしてSDカードを装着してもはみ出さなくなった点など、やはり既存ユーザーに嬉しいポイントを幅広く網羅します。

もちろん、かな漢字変換である『ATOK for pomera[Professional]』の機能強化(誤字や慣用表現の誤りに対する指摘と自動訂正)なども、Windows版などで先行導入されていただけに、待望の強化と呼べるでしょう。

一方で、バッテリー容量増(公称24時間:DM200は18時間)こそあるものの、本体重量も増え、DM200から40g増加の約620gに。また価格の上昇(税込6万280円。DM200は5万4780円で5500円アップ)といった点もありますが、DM200を使い倒していたユーザーは、乗り換える価値は高そうです。


▲発売記念モデルとして、同社直販限定のホワイトも用意。なお台数は250台のみ……

さてここからは、筆者が発表会で実機に触れて、気になったポイントをいくつか紹介します。

まずは内部の改良に関して。これは質疑応答にて語られたものですが、実は本機の内部設計に関しては、マザーボードなどを中心に、DM200からほぼすべてを作り直しているとのこと。

外観的にはキートップの印字やUSB Type-Cへの変更などを除き、DM200をほぼそのまま継承したかのように見えますが、中身は大きく違っているというわけです。

また、ディスプレイパネルはDM200を継承しますが、2ケタモデルである『DM30』で導入された電子ペーパーを採用しなかった理由に関しては、本機で要求される(解像度をはじめとする)条件では、最適なディスプレイパネルが他にないから、とのことでした。なお表示品質に関しては、DM200と同等パネルだけあり、印象的なコントラストの高さなどはそのままです。

▲編集画面下部には待望の文字数カウントとバッテリー残量表示が

さて、実際に触れてみて地味ながら大きな改良と感じたのは、編集画面の下部に常時、文字数カウントとバッテリー残量が表示されている点。従来モデルではおそらく、「執筆時に気を取られる情報を減らす」というコンセプトから表示しなかったのでしょう。

しかし表示を実際に見てみると、「いざという時に慌てないという点では、むしろ表示されていたほうが気が散らない」という思いを強くしました。発表会場でも「やはりこのぐらいはあったほうが良い」といった声が現行機ユーザーから漏れていたのが印象的です。


▲キーボード配列はDM200に準拠。物理的なキー配列も同一です

また当然ながら、ポメラで重要なのはキーボードでしょう。今回はキートップ印字の変更や打鍵音の低減といった点が改良として挙げられていますが、とくに後者によって打鍵感の違いがあるのかが気になるところ。

個人的な感触を紹介すると、“3ケタ系ポメラ”の特徴的なタッチ――昨今の薄型キーとしては重めの押下圧や強めの跳ね返りなど――を継承しつつも、打鍵音などに関してはアピール通り小さめになっているという印象です。
今回は発表会場での体験でごく短時間の試用でしたが、DM100や200から移行してもそこまで違和感はなさそうに思えました。

▲キー配列の変更は、キー設定メニューから常時可能。実際に変更するかはともかく、気軽に変えられます

キーボードの改良という点で特筆すべきは、US(風)配列をサポートする点。DM200でも親指シフト風の配列はありましたが、今回は2種類目の親指シフト風(シフトキーの感覚を実機に近づける点を重視した設定)と合わせて、一部記号などをUSキーボードに合わせたモードとして搭載されています。

▲本体に付属するキートップステッカー。キートップに貼り付けて使用します

なお、キー配列の変更に際しては、キートップに貼って印字を合わせるための『キートップステッカー』も付属。「キー配列カスタマイズあるある」な、印字と入力される文字が異なって面倒という点のサポートもなされています。


▲本体情報からは、本体メモリ(メインストレージ)とは別のバックアップとゴミ箱領域が確認できます

そして個人的に驚いたのは、新搭載された『オートバックアップ』と『ゴミ箱』機能です。本機では最大容量が1ファイルあたり20万文字までと、DM200に比べて2倍にまで拡張されていますが、それゆえにバックアップは大事になってきます。

機能名だけ聞くと、PCに搭載されたそれらのように、簡易的なファイルバックアップに思えますが、実はさにあらず。実は「本体メモリとは別の領域(パーティション)にバックアップ領域やゴミ箱の領域を設ける」という、より厳重な、そして確実性に優れた機能だったのです。

本体情報の画面を見ても、本体メモリ(ストレージ領域)は1.3GBですが、バックアップ領域も同等の1.3GBが、さらにゴミ箱は約半分の約670MBが確保されています。

つまり本機のオートバックアップをPC風に表現すると、“自動で別ドライブにバックアップファイルを作って保管しておく”ということになるわけです。同じくゴミ箱も、別ドライブ(専用ドライブ)への保管的な意味合いを持ちます(もちろんPCやMacなどと同じく、誤って削除したファイルの復旧も容易です)。

さすがに物理ドライブは同一のため、本体ごとの紛失やハードウェア的な事故まではカバーしきれませんが「標準ストレージと同容量のバックアップ専用ドライブが常時動作している状態」となれば、かなり安心感が強まるところ。

正直なところ、この機能をオートバックアップとゴミ箱とだけ紹介するのは、実体に即しておらず、もったいないな……と思うところです。


もう一つの注目点は、新スマホアプリ『pomera Link』との連携がスムーズになった点。なんといっても注目は、ついに(DM200からハードウェアとしては搭載されていた)Wi-Fiでの接続が可能になった、という点でしょう。

製品コンセプトなどもありますが、DM200ではせっかくWi-Fiが搭載されているのに、スマホアプリとの連携はQRコード経由で、なおかつファイルの容量に合わせてQRコードの枚数が増加するため、大容量ファイルではけっこう面倒な作業に……という環境でした(FlashAirカード経由という手もありましたが)。

▲スマホアプリ側では従来通りプレーンテキストとして扱われるため、扱いは容易です

対して本機では、Wi-Fi Direct経由でスマホと接続できるため、転送速度などは大きく高速化されます。実はQRコードによる連携も、最大で999枚までに対応するように拡張されていますが(20万文字のファイルに合わせた拡張とのこと)、実用面を考えるとWi-Fi連携が基本となるはずです。

なお、Wi-Fi Directでの接続となるため、ルーターが存在しない場所などでも使えるのは、ある意味でポメラらしいな、と感じたところでした。


▲新画面モードとなる『シナリオモード』。文字通り、脚本などの執筆には便利そうです

ソフトウェア的な改良点で嬉しいのは、ATOKの強化でしょう。Windows版で導入されていた誤字や慣用表現の誤りに対する自動チェック、自動訂正は、入力効率をほぼ着実にと言って良いほど向上させてくれる機能だけに、従来からのユーザーにとっては「ついに」とも思えるところでしょう。

また個人的には、確定アンドゥ(変換した漢字を読みに戻して再変換できる機能)が、連続使用できるように拡張された点が、それ以上に嬉しいところです(Windows版でATOKを使い慣れていると、ここが大きな違和感でした)。

また、新搭載された編集画面モード『シナリオモード』も、良い意味でポメラらしいモードと感じました。これは演劇の脚本や台本に合わせて、側注(場面などが入ります)を含めた縦書き表示で執筆できるモード。
従来モデルから継承されている原稿用紙風表示などと合わせて、実用面だけでなく、気分を盛り上げるという面でも有用な機能でしょう。

▲検索などには、ついに正規表現のオプションが

もちろん、ヘビーユーザーにとっては、検索や置換で正規表現が使えるようになったという点も見逃せないところです(こちらに関しては、なぜいままで非対応だったのか、とも思いますが)。


▲底面の電圧・電流仕様表示も『5V 3A』に。15W出力ACアダプタであれば仕様を活かした充電が可能です

ハードウェア面での嬉しい改良は、バッテリー容量の拡大でしょう。もともと機能面のシンプルさゆえ、バッテリー駆動時間の長いポメラですが、本機ではシリーズの“基準”となっていた公称20時間を超え、24時間の連続動作を実現。DM200では18時間だったため、一気に6時間伸びたこととなります。

ただし一方で、本体重量は40g増加しているわけですが、ここは止むなしといったところでしょう(と言っても、620gという数値を見てしまうと、正直もう一声軽く、とも思うわけですが)。

そして地味ながら利便性が高そうなのが、充電用USB端子がType-Cに変更された点。昨今はもはや各種ガジェットでも「Type-Cシフトが決した(Lightning搭載機以外では)」感があるため、個人的には嬉しいところです。

そして地味ながら大きな改良点が、USB端子隣りに搭載された電源インジケーターと、充電は時間が4時間へ短くなった点(DM200は5時間なので1時間短縮)。前者はなぜこれまで搭載されていなかったのが不思議なほどで、接続ミスなどを防ぐのにありがたい機能。また後者は、充電時最大電力が5V/3A(15W)になったことで実現されています。

▲SDカードを併用するユーザー待望の「はみ出さないスロット」がついに……!!

そして、個人的に白眉と感じたのは、DM200ユーザー(とくにLinux化改造している層)の間で惜しいところと言われていた「SDカードがはみ出る問題」に関して対策された点
本機ではついに、フルサイズ(標準)SDカードがピッタリ収まるようになっており、「持ち運んでいるうちにSDカードが(物理的に押されたなどで)マウントが外されてしまう」というトラブルが解消されています。

本機では本体ストレージ側にもバックアップ領域があるとはいえ、やはりバックアップは物理的にも別ドライブでないと……というユーザーにとっても、SDカードを装着した状態で安心して持ち運べる、というのは嬉しい改良点となるはず。このあたりも、従来機ユーザーの要望に応えた改良である、と感じました。


このようにDM250は、一見地味ながら、使い勝手の改善という面では非常に大きな改良点が多く入ったモデル。

正直なところを言えば「なんで今まで、この機能が搭載されていなかったのか?」といった箇所が多い点は気になるところですが、ともあれ、これだけ多数の箇所が的確に改善されている、という点は、ポメラニアン(ポメラファンの愛称)のみならず、新規で触れるユーザーにとっても大きなアピールポイントとなるはず。

キングジム側の紹介では、「現時点でのポメラの決定版」という旨の、ともすれば定型句とも取れる紹介もありましたが、実際に触って見ると、「なるほど、これは確かに“決定版”と呼ぶのが妥当では」と感じ入るところがありました。

なお、発表会場内でもう一つ注目されていたのが、キングジム直販限定となるホワイトモデルの台数の少なさ。なんと250台のみの限定です。これはモデル名と合わせたからのようですが、実機を見ると仕上げが美しいだけに、ごく少数だけの限定というのはもったいないとも思うところです。

▲余談ですが、発表会のサンプル文書では、いわゆる“異世界小説”のテキストが。小説作家も重要なユーザー層ということでしょう

●Source:ポメラ DM250製品ページ

《橋本新義》
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