イヤホン型で体温・心拍・血中酸素を測るバイタルセンサMedSENS。雪山の救助活動を想定

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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イヤホン型で体温・心拍・血中酸素を測るバイタルセンサMedSENS。雪山の救助活動を想定
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イタリアのEurac Researchが、カナル型イヤホンタイプのバイタルサイン測定器『MedSENS』を開発しました。

雪山など厳しい環境では、低体温症の疑いがある要救助者の体温をできるだけ正確に知る必要があります。しかし、そのような場所では通常の体温計はまともに使えず、かといって鼻を経由して食道にプローブを入れるタイプの機器もなかなか使えないことが多いとされます。

そこでEurac Researchの研究チームは、山岳救助や救急サービスにおける経験から、体温測定と酸素飽和度測定を組み合わせた、いまよりも扱いやすい機器が必要だと考えました。そして思い当たったのが、要救助者に苦痛を与えることなく、耳の穴からさまざまなバイタル値を測定できるイヤホンタイプの測定器だったとのことです。

Eurac Researchの物理学者で山岳救助の経験もあるMichela Masè氏は「耳に挿入する装置はすでに市場にいくつかあるものの、外気温の影響を受けて正確な値が出にくいため、その部分を開発の手始めとした」と述べています。

MedSENSは、耳栓ほどの大きさのプローブに体温のほか、心拍数、血中酸素濃度などのセンサーが詰め込んであり、それを要救助者の耳に装着、冷気を遮断するイヤーパッドで覆って、正確な測定を可能にします。また測定された値はリアルタイムでイヤーパッド上のOLEDディスプレイに表示するため、救助隊は要救助者に関して必要な情報を一目で確認できます。さらに、このデータは救助隊が現地に持ち込む他の機器などにもワイヤレスで送信できるとのこと。

研究チームはこれまで約1年にわたり、40人のボランティアの協力を得てMedSENSの試験をしてきました。イタリア国内にある極限環境シミュレーター「terraXcube」では-10~20°Cの環境で2度の実験が行われ、食道挿入型とMedSENSを同時に使用して、双方の測定値にズレがないかを確認、さらに寒さで手がかじかむ状況でもきちんと装着できることが確認されたとしています。MedSENSは現在、特許も取得して製品化のためのパートナーを探す段階まで来たとのことです。

ちなみに、Eurac Researchの山岳救急医療研究所長Giacomo Strapazzon氏は、MedSENSが救助活動だけでなく病院内でも有用なツールになる可能性がある」と述べ「特に手術室での利用を考えている」としています。この機器のお世話になる機会はないほうが良いものの、いざ必要となったとき、いまより患者の負担が少なくなるのなら、はやく、そして広く普及してほしいものです。

Source:Eurac Research

《Munenori Taniguchi》
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