四肢麻痺の元レーサー、頭の動きと呼吸でマクラーレンを操りグッドウッドを疾走

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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Image:Business Wire

英国で開催のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで、四肢麻痺のドライバーが頭の動きと呼吸で操縦できるマクラーレン720Sスパイダーを駆使し、伝統のヒルクライムコースを疾走しました。

このレーシングドライバー、サム・シュミット氏は、かつてフォーミュラカーのもう一つの頂点、インディカーで勝利するなど活躍した人物。2000年初頭のテスト走行中の事故で四肢麻痺になってしまったものの、交通事故で車椅子生活になってもF1チームの指揮を続けたフランク・ウィリアムズ卿に触発されてサム・シュミット・モータースポーツを設立。近年はマクラーレンとともにArrowマクラーレンSPとしてインディカーチームを率いています。

今回の特別仕様のマクラーレンも、インディカーに共同参戦しているマクラーレンと、そのチームのスポンサーであるArrow Electronicsの手によって開発されています。マシンのドライビングには、ハンドル操作と加減速操作が必要になりますが、この特別にしつらえたマクラーレンは、ドライバーの頭の動きをカメラでとらえて左右のステアリング操作に変換し、さらにドライバーが息を吐き出すと加速、吸い込むと減速するように改造されています。

シュミット氏の走行は5分15秒あたりから

実際の走行を見ればわかるように、シュミット氏はアクセル全開でスタート。ときおりコーナーの内側にタイヤを落とすほどのアグレッシブさで、現役時代を彷彿とさせる本気モードのアタックを披露しました。

また、シュミット氏はこの日、Arrowとテネシー州のヴァンダービルト大学が開発した半自律型外骨格スーツを装着、立ち上がってゆっくりながら歩行する姿を見せています。このスーツは健常な人の運動・動作を補強するだけの外骨格スーツではなく、麻痺患者の胴体、腕、下肢をサポートするために機能が拡張されているとのこと。

これらはArrowによる障害者に自由と選択肢を与えるための技術開発の一環で、サム・シュミット氏の名にちなみ「Semi-Autonomous Mobility」テクノロジーとして提供され、それぞれSAMカー、SAMスーツと呼ばれています。

もちろん、自動運転技術の開発が進めば、四肢麻痺の人が自分で車を運転できるようにするための技術開発にはそれほどの需要がなくなってしまわないとも限りません。ただ現実的に見て、自動運転車があらゆる公道を完全に安全に走行できるようになるにはまだまだ時間がかかります。また、ドライバーとして自動車の運転を楽しみたいという需要が、自動運転にすべて取って代わられるわけでもないはずです。

Source:GoodwoodFestival of Speed(YouTube), Arrow Electronics

《Munenori Taniguchi》
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