エレクトロニック・アーツ(EA)が、1980年代・90年代の古典PCゲーム復刻版・移植版25作をSteamで配信しました。
なかでも暴力バイクレースゲーム『ロードラッシュ』と、宇宙戦闘シムの金字塔『ウィングコマンダー』シリーズ6本は、EAの倉庫から発掘された当時のマスターテープや素材を有志が数年かけて整理・リストアし高画質化したシネマティックと、現代のPCで快適に遊べるQoL改善MODを組み込んだ『アニバーサリーエディション』として発売します。

ほか、RPGの歴史を作った『ウルティマ』シリーズの初代から最終作『Ultima IX: Ascension』まで、3D迷宮探索スピンオフ『ウルティマ アンダーワールド』2作品、『クルセイダー』シリーズ2作品、『テーマホスピタル』ほか18作品を含めて、Steamでの初配信を記念した半額セールで販売中です。
■ 打撃ありバイクレース『ロードラッシュ』、幻のPC版が初デジタル化
『ロードラッシュ』は、ライバルを蹴ったり、武器で攻撃したりできるバイクレースゲーム。1991年に出たオリジナルのSEGA Genesis (メガドライブ)版が好評を博したため多数のシリーズ作が作られており、復刻レトロゲーム機のメガドライブミニにも『ロード・ラッシュII』が収録されています。

今回30周年アニバーサリーエディションとして発売されたのは、1996年のPC版『ロードラッシュ』。当時の最新技術だったフル画面のシネマティックや、実在のバンドからライセンスしたロックミュージックのBGMを使った豪華なバージョンでしたが、デジタル版の配信がなく、ながらく入手が難しかった作品です。

EAのシニアプロデューサー、ジム・ヴェセラ氏によれば、30年以上デジタルで入手できなかった作品の復元はEAとして初めての取り組み。
EAで長年レトロタイトルの復刻を支えてきたテクニカルディレクターのブライアン・バーンズ氏が、PC版のソースコードをもとに60fps化やモダンなコントローラ操作と振動対応などを追加しています。
▲ 14曲すべてのバンドと交渉し再ライセンス獲得、CD版の原曲再生
レトロゲームの復刻で難しいのが、ゲーム本体の権利関係もさることながら、音楽や映像について別の権利元が存在する場合。PC版ロードラッシュはサウンドガーデン、モンスター・マグネットなどロックバンドの楽曲14曲を含んでいたため、EAは1年以上かけてレーベルとバンドメンバー全員を見つけ出し、再ライセンスを獲得しました。復刻プロジェクトを率いたヴェセラ氏によれば、最後のひとりと連絡がついたのは発売直前の2026年9月。
元のPC版ではMIDI再生でしたが、今回はセガCD(メガCD)版にあった、レース中に原曲を流すオプションも選択可能になっています。
■ 『ウィングコマンダーIII』はマスターテープから約1000クリップをリストア収録

ヴェセラ氏いわく、今回の復刻プロジェクトの発端は、2022年3月にEAのレッドウッドショアーズキャンパスで、大量のベータカム・VHS・D1テープ・フィルムなどが収められたアーカイブを発見したこと。
社内有志が空き時間に整理分類を進めたところ、約2万点のアーカイブ資料が見つかり、なかには『ロードラッシュ』と、特に大量のシネマティックやキャラクター間の通信クリップで知られる『ウィングコマンダー』シリーズのマスターテープも含まれていました。

その後は正式なプロジェクトとしてデジタル化を進め、2026年4月までに約6000点、推定2500時間分の映像をデジタル化。
各アニバーサリーエディションでは、シネマティックを当時そのままの粗い映像、マスターテープから対応部分を探し出し差し替えたバージョン、さらにAI高解像度化したバージョンから選択可能になっています。

このAIアップスケールについては、ウィングコマンダーのファンコミュニティで、オリジナルのゲームの動画を高画質化するMODを開発してきた人物が助言しています。
■ Wing Commanderはファン製Modを公式に収録
『Wing Commander』シリーズのアニバーサリーエディションは全6作(1・2作目は35th、III・IV・Prophecy・Privateer 2は30th Anniversary Edition)。
IIIとIVについては、マスターテープから膨大な労力をかけて映像をアップグレードしていますが、初代のウィングコマンダーと続編ウィングコマンダーIIについては、そもそも実写動画シネマティックを含まない作品だったため、現在のPCで快適に遊べるQoL改善を中心に復刻したバージョンです。
過去にGOGやEA Appで旧作・旧版を入手していたプレーヤーは、それぞれのストアでアニバーサリーエディションに無料アップグレードできます。
■ ウルティマ全9作など18作はそのまま移植でSteam配信

『ロードラッシュ』『ウィングコマンダー』6作品以外の18本は、アニバーサリーエディションではない移植版。内訳は『ウルティマ』I~IXと、現在のオープンワールドRPGに強い影響を与えた『ウルティマ アンダーワールド』I・II、ほか『テーマホスピタル』、『Crusader』2作、『Wing Commander』の外伝3作と『Strike Commander』。
レトロゲームの保全と復刻を旗印に始まったプロジェクトであるGOG (Good Old Games) ではDOSエミュレータなどとセットで配信されていましたが、Steamでは初のリリースとなります。
■ アニバーサリー版は1400円、ほかは700円。セール中は半額
Steamでの価格はアニバーサリーエディション7作が各1400円、残り18作は各700円。SteamとGOGでは、11月19日まで発売記念の半額で販売中です。
ロードラッシュのアニバーサリーエディションについては、日本でも「アメリカのバカバカしいレースゲー」として人気シリーズだったため、珍しいバージョンとしてそのまま楽しめるかもしれません。
ウィングコマンダーについては、FM-TOWNSやメガCD、スーパーファミコンなどで初期作品の移植があり、2000年にはゲームのディレクターであるクリス・ロバーツが監督した実写映画も公開されていたため、改めて原典に触れたいプレーヤーにとっては良い機会。
『ウルティマ』シリーズについては、ゲーム史的に重要な作品で、日本向けコンシューマー移植もあり、またオンラインゲーム黎明期に日本で人気だったウルティマ オンラインの原典でもあるものの、今回のSteam版はオリジナルのそのまま移植。

日本語にも対応していないため、英語版でも苦にならないプレーヤーや、ゲーム史研究的な意味で故きを温ねたい用途向けかもしれません。最終作のアセンションについては、リリース時に不具合が多く最適化も足りず、当時の最新PCでも厳しい動作だったため、別の意味で再訪の意義もあります。

ゲーム史に興味がある現代のゲーマー、もしくは懐古ゲーマーに注目なのは、現代のオープンワールドRPGにつながる画期的なシステムを導入していたウルティマアンダーワールド I・II。

高さの概念もある3Dで描かれた広大なダンジョンを自由に行き来して(あるいは逃げ回り)、それぞれに行動様式や生息域があるNPCのファクションと対立または協力して生き残りを目指す没入感あるデザインは、後のDeus Ex やバイオショック系列につながり、エルダースクロールズの初代Arenaにも強いインスピレーションを与えています。









