Metaがスマートグラスの新製品、Oakley Meta シリーズを発表しました。
限定モデルの Oakley Meta HSTN は499ドル。日本を含まない15か国で7月11日より予約受付を開始します。
限定ではないカラーやレンズのモデルは399ドルでこの夏発売予定。(HSTNの読みは「HOW-stuhn」ハウスタン?)。
ディスプレイは非搭載。カメラ・マイク・スピーカーとMeta AI連携
Oakley Meta は、その名のとおりオークリーとMetaが協業したスマートグラス。カメラ・マイク・スピーカー内蔵とMeta AI対応が一般的なサングラスとの違いです。
うわさのディスプレイは非搭載。基本の機能としては既存の Ray-Ban Meta と変わらず、動画撮影画素数やバッテリー等の性能がアップしました。

できることは内蔵スピーカーとマイクで通話、音楽を聴く、Meta AIと会話する、会話をリアルタイム通訳。カメラで写真や動画撮影・WhatsAppやメッセンジャーでビデオ通話・Instagramライブ等への動画配信(コメント読み上げ対応)、メニューや看板等いま見ているものをMeta AIに見せて質問・翻訳、構内地図や駐車場所等を「これ覚えておいて」でリマインダとして記録など。
Ray-Ban Meta スマートグラスとの違い

・バッテリー駆動時間の延長。通常仕様で8時間、スタンバイで19時間、充電ケースのバッテリー併用で48時間、20分で50%まで充電。
・カメラの撮影画素数向上。レイバンは1080pフルHDだったのに対して、オークリーは3K動画の撮影に対応。
・アスリート向けのスタイル。使えるレンズ。
Meta AI機能については、基本的にはスマホアプリとクラウド側で動くこともあり、現時点で明確な差としては挙げられていません。
ただしカメラの差がMeta AIに渡す内部解像度や画質にも影響を与えるとすれば、メニューや注意書きの翻訳を頼んだ際、AIが認識しやすくなる差はあるかもしれません。
(Ray-Ban Metaのカメラは視界に近くするためかなり広角寄りで、メガネに収めるためセンサーもさほど大きくないため、低照度や反射など撮影条件の悪い場合、人間に読めてもMeta AIには認識できないことが増える。ただし、見せて質問した際には写真としても記録するため、後からスマホで人間が読んだり他のアプリに渡すことは可能です)
Oakley Meta / Ray-Ban Metaは日本で使える?
技適
おそらく「使ってはいけない」「Meta AI機能は公式に使えない」。オークリーメタはまだ発売されていないため、あくまでRay-Ban Metaを前提にしますが、Wi-Fi とBluetoothを利用する無線機器でありながら、日本の電波法令で定められた基準に適合していることを示す技術基準適合証明、いわゆる「技適」マークがありません。
幸い米国FCC等の認証は得ており、使う周波数帯等も分かっているため、実験や研究目的として届け出をして、期間内・範囲内で試す以外には、厳密にいえば違法ということになります。
総務省 電波利用ポータル|その他|技適未取得機器を用いた実験等の特例制度
スマホと通信せず、純粋にカメラとして使うモード(機内モード相当)は非搭載。電波を出さないためには電源を切って純粋なサングラスとして使うしかありません。
Meta AI と提供地域について

Meta AIは今のところ日本語には非対応。設定言語になく、通訳機能の対応言語にも入っていません。
(Meta AI はChatGPTのようなLLM(大規模言語モデル)ベースなので、知識として得ている範囲では日本語についても会話のなかで翻訳してくれたり教えてくれることはあります。たとえば「日本語で10まで数えて!」や、回答として「アーティスト紹介は非対応言語の日本語だったので英語に翻訳してお答えします」等)。
しかし、あくまで英語話者として設定されているため、日本語のローマ字綴りを英語読みする等、実用的に日本語で話してくれるわけではありません。)
また地域設定やIPアドレスベースの検出で、日本を含む非対応地域では Meta AI そのものが無効化される(アプリからタブが消える)ため、想定された範囲の通常のセットアップでは Meta AI の利用は不可。
Metaアカウントを対応地域内で新しく作る、VPN等で地域検出を誤魔化す、スマートフォン側の位置情報を与えない等の工夫で対応地域にいるふりをしてセットアップすれば利用できないこともありませんが、おそらく規約に違反しているうえに、ソフトウェア更新等のタイミングで頻繁に無効化されます。
Oakley Meta は米欧15か国のほか、年内にはメキシコ・インド・UAEでも発売予定。
Ray-Ban Metaの時代から製品ページは日本語化されていますが、日本での販売については今のところ情報がなく、「年内予定」の拡大地域にも含まれていません。
Ray-Ban Metaユーザーからの所感
・バッテリー駆動時間延長は朗報。特に動画配信など高負荷利用で有利
レイバンメタは通常利用で約4時間、オークリーメタは約8時間。この「一般的な利用で」が曲者で、4時間や8時間経ったら突然切れるわけではなく、音楽を訊いたり、写真や動画を撮ったり、通話したり、Meta AIとの問答を組み合わせて「4時間」。あまり直感的ではありません。
レイバンメタについていえば、スマホからのBluetooth転送で音楽を聴く、たまに写真を数枚取る、Meta AIにバッテリーや天気や再生中のアーティストや見かけたものについて訊く、程度の使い方で、体感としては半日保つ程度。
1日中ずっと音楽を聞いてMeta AIと会話しているわけではなく、主に移動中や、オープンイヤー式で音楽を聞いても良い場所での作業中等なので「4時間」は体感よりも短く感じるものの、合計したらその程度と言われれば納得します。
これが8時間になれば、上記のような低負荷の使い方ならば1日は充電を意識せずに使えそうです。
(カメラ搭載なのでどこにでも着用してゆけるわけではなく、ケースにしまうタイミングで充電されるため、公称4時間でも上記のような使い方ならばあまり困らないという話もあります)。

ただし、既存のレイバンメタでもさほど困らないのは上記のような低負荷時のみ。特に負荷が高い、インスタライブへの配信などでは、動画を撮影しつつスマートフォンにリアルタイム転送するため、画質が低いわりに約30分から45分程度しか保ちません。
オークリーメタの詳細な連続使用時間は未公表。スマートグラスのように熱設計が厳しい製品では、バッテリー容量とは別に連続使用時間の制限がある場合もありますが、主観配信やビデオ通話メインで考えるなら、あるいは動画撮影を繰り返すなら、バッテリーが強化されたOakley Metaのほうが明らかに有利になります。
・カメラ強化は詳細待ち

参考画像:既存モデルRay-Ban Metaの静止画撮影例。
カメラについては、レイバンメタが1080p までの動画撮影だったのに対して、オークリーメタは3K対応とされています。
(レイバンメタで撮影した実際の動画ファイルは約1500 x 2000画素)。
センサーやレンズ、プロセッサ等の詳細な仕様は未公表。従来のレイバンメタは12MPまたは10MP、3000 x 4000程度の静止画が撮影できましたが、こちらが新型でどう変わるのかもまだ分かりません。
レイバンメタの動画連続撮影時間はアップデートで3分まで伸びました(バッテリーが著しく消耗する等の警告つき)。こちらも新型でどうなるのか未詳。
かなり広角寄りのレンズのため、動画の一部を切り出した利用等も考えると、撮影画素数が増えたのは単純に有利。画質によっては、ハンズオンやVlog的な範疇を超えた使い方にも耐えるかもしれません。
撮影画素数が増えればバッテリーも消耗するため、動画メインならばなおさらオークリーメタのほうが良いことになります。
・レンズはお好みで

どちらも度付きレンズに対応するほか、それぞれのブランド自慢のコーティングやカラーがあり、選べる範囲が異なります。販売期間も長くラインナップも増えたレイバンのほうが現時点ではレンズのバリエーションが多く、トランジション等も複数選べますが、これはオークリーでもラインナップ公開・追加で増えるはず。
オークリーメタ、レイバンメタともにディスプレイは搭載しないため、レンズは他のサングラスと同じただのレンズ。なので、基本的にはメガネ屋さんでカスタムレンズとして交換できます。
既存モデルRay-Ban Meta撮影例(参考)
既存モデルレイバンメタでの静止画撮影例。新モデル Oakley Meta は動画撮影については1080pから3Kにアップグレードしたことを主な更新点として挙げていますが、静止画については未詳です。


曇りでやや薄暗い書店内。

薄暗く、強いライトが向いた屋内。

一般的な蛍光灯の屋内で手元を撮影。画角はこんなイメージ。
蛇足。盗撮の懸念について。
盗撮は極めて深刻な犯罪であり、今後ウェアラブルのカメラ搭載デバイスはさらに増えてゆくこと、特にAIに対して文脈として周辺環境を伝える目的でセンサを載せるデバイスは急増することが予想できます。
レイバンメタ、オークリーメタについても、知らなければ一見して分からないようにカメラを搭載しているため、良からぬ目的に使うユーザーがいないとも限りませんが、メタとしてはアプリで人物の撮影時等には相手に許可をとることを注意するとともに、「撮影時にカメラと反対側のLEDライトが強く光る」「動画撮影時には光りっぱなし」にすることで、間近で目視すれば気づく対策をしています。このLEDの明るさは調整できず、また塞いだり無効にするとカメラ自体が機能しなくなる仕組み。
とはいえ目立たないカメラではあり、眼鏡が光っていても気づかない可能性はある、悪用はできるのではないかともいえますが、その目的であればメタのスマートグラス以外にもっと盗撮に向いたカメラ搭載デバイスは多数あり、わざわざ隠しようのない顔面で光って撮影するデバイスよりも、盗撮を目的とするなら警告ライトがないウェアラブルカメラやスマホ、超小型カメラのほうがより安価でどこでも手に入り有効ではあります。