ブロードバンドを名乗るには最低「下り100Mbps」、米連邦通信委員会が定義引き上げ

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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米国連邦通信委員会(FCC)は、コンピューターネットワークの通信速度における「ブロードバンド」の定義を引き上げたことを発表しました。今後、米国内でブロードバンドを名乗るにはネットワークの速度が「下り100Mbps以上、上り20Mbps以上」であることが条件になります。

米国では、前回の改定があった2015年からいままで、プロバイダーがブロードバンド回線を名乗るには「25Mbps / 3Mbps」以上の速度があれば良いとされてきました。2021年にFCC委員長を退任したアジット・パイ氏は当時、ユーザーが「高品質の音声、データ、グラフィックス、およびビデオ通信を発信および受信するため」には速度が25Mbps / 3Mbpsあれば十分だとしています。

ただ、2015年の引き上げ以降、米国の上院議員、米国会計検査院 (GAO)、またFCC内部からも、米国のインターネットサービスやアプリへの依存度が高まっていることを理由に、ブロードバンドの指標をさらに引き上げるよう求める声は出ていました。

実際、2021年にFCC委員長に就任したジェシカ・ローゼンウォーセル氏は、2022年7月にブロードバンド定義を「100Mbps/20Mbps」に引き上げる提案を行っています。しかし、当時FCCの議席は速度引き上げを推進する民主党と、速度据え置きを支持する共和党が2議席ずつで膠着状態にあり、提案を採決によって決定することができませんでした。

その後、この席はバイデン大統領が指名した人物が拒否されたこともあって空いた状態が続き、昨年9月になってようやく、2009年から2023年まで米国家電気通信情報局(NTIA)副次官補を務めたアンナ・ゴメス氏が就くことが承認されました。これによりFCCの議席は民主党優位が形成され、ブロードバンドの定義の改定も可能になったという格好です。

ローゼンウォーセル委員長は、今回のブロードバンド定義の引き上げについて「この修正は遅きに失した」と述べつつも「低所得者層や地方のコミュニティに、どの程度サービスが行き届いていないかをより明確にする助けにもなるだろう」と付け加えています。


今回のFCCの発表に記された統計によると、約2400万人の米国人にはいまだ地上固定ブロードバンドサービスが導入されていないことがわかります。これには農村地域の米国人約28%、何らかの部族の土地の住民23%以上が含まれています。また、推定で4500万人の米国人が「100/20Mbpsの固定サービスと、35/3Mbpsのモバイル5G-NRサービスの両方にアクセスできていない」とのことです(Starlinkなどの衛星インターネットサービスはここに含まれていません)。

FCCは今回、ブロードバンドの定義を「100/20Mbps」へ引き上げることを決定するとともに、今後の長期目標としてこの数字を将来的に「下り1000Mbps、上り500Mbps」にすることも決定しました。ローゼンウォーセル氏は「農村部、都市部、部族社会の何百万人もの人々が、現代生活に完全に参加するために必要なブロードバンドをまだ持っていない。我々はそれに取り組んでいく」としています。

ちなみに日本では、インターネット回線はほとんどすべてがブロードバンドになっているとされ、総務省が発表した報道資料「令和4年通信利用動向調査の結果」によれば企業の96.2%が、また個人宅の94.1%がインターネットへの接続にブロードバンド回線を利用しているとされています。技術的には、ブロードバンドと呼ばれる速度についての明確な定義はなく、名目上、下り/上りともに速度が30Mbps以上あればブロードバンドと分類されています。


《Munenori Taniguchi》
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