フライパン製造で太陽より高温ってありうる? シャークニンジャの主張が誤解を招くとして集団訴訟に直面

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Munenori Taniguchi

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掃除機やキッチン用品などで知られるシャークニンジャ(SharkNinja)が、販売するフライパンの焦げ付き防止加工を最大3万度(華氏)で行っていると主張していることに関し、集団訴訟を起こされました。

シャークニンジャは問題の製品の紹介文で、他社が「ほんの900度(華氏。摂氏では約480℃)」でフライパンを作っているのに対し「Ninja Neverstick Premiumシリーズ」は「最大製造温度が華氏3万度(約1.7万℃)」だと主張、これによってフライパンや鍋の表面に「プラズマセラミック粒子」を融合し「超硬度でざらつきのある表面を形成する」と述べています。

今回訴訟を起こしたニュージャージー州に住むパトリシア・ブラウン氏は、この製品を2つ購入した後で、この主張がどれだけすごいのかをインターネットで調べてみました。すると、華氏3万度という温度が太陽表面(華氏約1万度、約5500℃)のおよそ3倍も高温であることがすぐにわかり、さらにアルミニウムが華氏4478度(2470℃)で融解してしまうことも知りました。

つまり、シャークニンジャのあきらかに熱力学の法則に反した主張を行っており、そうであればニュージャージー州の法律にも違反していることになると、ブラウン氏は主張。そしてシャークニンジャが「一般消費者に対し、自社の焦げ付き防止フライパンが、アルミニウム鍋の母材が蒸発してしてしまうような温度で製造されていると信じ込ませようとしたと訴状で述べています。

ただ、フライパンや鍋の表面加工には、プラズマ溶射と呼ばれる加工方法がよく用いられています。この方法は、例えばアルゴンやヘリウムといった不活性ガスに非常に高いエネルギーを加えて発生させた超高温のプラズマを使って、フッ素樹脂やセラミックとなどのコーティング材の粒子を溶かし、爆発的に膨張するガスとともにフライパンや鍋のアルミ母材の表面に噴射して、溶射皮膜を形成します。このプラズマプルームの温度が、最高で華氏3万度になると説明されています。ただ、アルミ母材のほうは溶けた粒子を吹き付けられるだけなのでそれほど高温にはなりません。

華氏3万度というのが噴射されるプラズマの温度を指しているのなら、シャークニンジャの説明は技術的には正しそうです。ただ、その宣伝の仕方や説明文の表現が、フライパンそのものを超高温で加工しているように思わせているとすれば、裁判ではそのあたりが争点になるのかもしれません。ブラウン氏は、シャークニンジャの主張は「派手で欺瞞的なマーケティング手法」だとしています。一方、シャークニンジャはこの件に関するメディアからの問い合わせに対し、返答をしていません。

なお、問題の製品は日本のアマゾンでも見つけることができますが、紹介文では「NeverStick 調理器具は華氏-2度で作成され」ていたり、「最大製造温度は-10°F」だったりと、この部分の表記がおかしなことになっています。



《Munenori Taniguchi》
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