空飛ぶクルマ「Alef Model A」、試作機の飛行承認を取得。垂直離陸から横転して飛行

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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遠くから見ればスポーツカーのような外観で、電気自動車として公道を走行でき、なおかつeVTOLとして空を飛ぶ能力も併せ持つ独特な乗り物「Alef Model A」が、米連邦航空局(FAA)の認証を「限定的」ながら取得しました。

他のEVやeVTOLと「Alef Model A」が決定的に違うのは、そのボディワーク。ボンネットからリヤフェンダーまでそのボディ上面はメッシュ構造になっています。そして、このメッシュボディの下には4本のタイヤに加えて8つのローターがあり、eVTOLとして浮上し、飛行することが可能です。

車体中央にあるキャビンは2人が乗れるだけのスペースしかないものの、ジンバルによって支持されているおかげで、機体が傾いても常に水平を保ちます。またキャビンはeVTOLモードの時は90度横に向きを変え、車体側面が正面になります。そして飛行速度を上げるにつれて機体は傾斜してゆき、ある時点でサイドパネルが複葉機の翼のように揚力を発生するようになるという独創的な設計になっています。

今回、Alef Aeronauticsは、FAAからModel Aの「特別耐空証明」を取得したことを発表しました。これは航空機が構造やその強度、飛行性能が安全や環境保全のために必要な技術基準に適合していることを証明するもので、自動車でいえば車検に合格したのと同じような意味合いで捉えるとわかりやすいでしょう。

これによって、これまではスケールモデルでしかできなかった飛行試験を、フルスケールのModel A試作機で行うことが可能になります。そして、飛行試験を重ねることで、将来の市販に向けた開発を煮詰めて行くことができます。

ただし、このFAA証明はあくまで試作機に関するものであり、他のeVTOLメーカーが進めている航空機としての型式認定とは異なります。そのため、試作機の飛行可能な場所と目的は展示会でのデモンストレーションや実験・開発を目的とした飛行に限定されます。

また一部の専門家は、自動車として公道を走行し、途中からそのまま上空に飛び立って飛行できるというコンセプトを実現するのは、Alefのような新興企業には困難だと述べています。公道走行および上空を合法的に使用するには自動車と航空機両方の安全基準を満たさなければならず、FAAその他規制当局の複雑な承認プロセスを地道にこなす持久力も必要になるためです。

たとえば、公道を自動車として走行するには自動車に適用される安全基準をすべて満たさなければなりません。それはModel Aのような構造ではまず実現不可能です。そのため、Alefは公道走行に関しては自動車としてではなく、ゴルフカートなどに適用される「小型低速車」としての分類に当てはめることでクリアしています。ただその名称からわかるように、小型低速車は最高速度が約40km/hに制限されます。

また、航空機として考えた場合は、複葉機状態での飛行の際に、ボディ上面のメッシュ構造がかなりの空気抵抗を生み出してしまうという意見もあるようです。

Alefは、1~2人乗りのModel Aを、2025年に1台30万ドルで発売するとしており、2035年ごろまでには4~6人乗りのセダンタイプ「Model Z」の実現も計画しています。

Jobyなどの、より一般的なeVTOLを開発するベンチャー企業ですら、FAA認証を得るのに長い年月を費やしていることを考えれば、それよりも複雑な機構をもつ空飛ぶクルマが、スムーズに量産・販売にたどり着けると考えるのはかなり楽観的かもしれません。それでもいまのところはAlefの計画は前進しており、いつか、どこかのメーカーから、このような未来の乗り物がわれわれの目の前に現れることを期待させてくれます。




《Munenori Taniguchi》
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