「奇跡の生還」で話題のパイロットYouTuber、再生数稼ぎで飛行機を墜落させた自演と発覚。懲役20年の可能性も

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Munenori Taniguchi

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Trevor Jacob(YouTube)
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2021年11月、パイロット兼YouTuberのトレバー・ジェイコブ氏は、操縦していた飛行機にトラブルが発生し、急遽パラシュートを着用して脱出、無事に生還を果たしました。

そして、その一部始終を記録した映像はYouTubeに公開され、これまでの間に300万回近い再生数を叩き出しています。

ところが、この奇跡の生還劇が実は自作自演だったことが判明。検察当局は、ジェイコブ氏が墜落事故の捜査を妨害したとして有罪を認めることに同意したと5月11日に発表しました

事故発生当日、ジェイコブ氏はベースジャンプと呼ばれる、高所からパラシュートで飛び降りるエクストリームスポーツの最中に事故死した親友の遺灰をシエラネバダ山頂に散骨するとして、カリフォルニア州サンタバーバラの空港から飛び立ちました。

YouTube投稿者でもある彼は、飛行機の各所にカメラを取り付け、飛行の様子をすべて記録していました。ところが山頂へ向かう途中で、ジェイコブ氏が突然焦り出す様子が映像には捉えられており、ついにはエンジンが停止。ジェイコブ氏は急遽、飛行機のドアを開け、パラシュートによって生還を果たしました。

無事に地上に降り立ったジェイコブ氏は、夕方に近くの農場主に出会うまで、少なくとも6時間は森の中をさまよったと主張しました。

2021年12月24日にYouTubeにアップされた動画は、この日の出来事をきちんと編集してまとめてありました。ところが公開直後から、視聴者やパイロット、航空専門家らからさまざまな疑問の声が湧き上がりました。

たとえば、ジェイコブ氏が飛行機から脱出する際に使っているのは非常用ではなく、スカイダイビング用のパラシュートです。またジェイコブ氏が「エンジンが故障した」と声を上げる前にパイロット用のドアを開けていたことも指摘されています。さらにエンジン停止~脱出に至るまでに、しかるべき事故防止のための対応や、滑空によって着陸可能な場所を探すといった行動を取っていないのは不適切というほかありません。かなりの高度で飛行機を放棄して、制御のない状態で民家や市街地に落ちたりすれば大変なことになります。

ほかにも、脱出の際にジェイコブ氏が手に自撮り棒を持ち、飛び降りたあとでしっかり自分と飛行機をフレームに収めていることや、着地後に避難するのでなく、どこに落ちたかわからないはずの飛行機に向かい、日のあるうちに発見していることなども不自然に思えます。

今回、ジェイコブ氏が有罪を認めることになったのは、連邦捜査官が墜落事故を調査していた数週間、ジェイコブ氏が飛行機の墜落場所を知らないと嘘の証言をしていたこと。ジェイコブ氏は、捜査を妨害するために友人とともにヘリコプターでロス・パドレス国有林内の墜落現場に向かい、残骸を撤去し処分していたことを、検察官との司法取引のために明かしました。

カリフォルニア州中央地区連邦検察局は報告書のなかで、ジェイコブ氏が「最初から目的地に到着する気がなく、飛行中に飛行機から脱出し、パラシュートで地上に降り立つ自分や、降下して墜落する飛行機をビデオに撮るつもりだった」と述べています。

この件で、米連邦航空局(FAA)はすでにジェイコブ氏にパイロット免許の取り消しを通告済み。また本人は司法取引には応じたものの最長20年の懲役が科される可能性があるとのことです。

われわれの国でもYouTuberの行為が問題視され報道されることはありますが、再生数を稼ぐために飛行機を墜落させてしまうというのは、さすがに考えられません。果たしてそれで収益があがるのかは、少し気になるところではあります。ちなみにジェイコブ氏は、今回の墜落を意図した理由はスポンサー契約を結んだ財布の宣伝が目的だったと述べています。


《Munenori Taniguchi》
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