マイクロソフト、1月25日に発生した大規模障害の原因報告と今後の対策を公開

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新野淳一

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。

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マイクロソフト、1月25日に発生した大規模障害の原因報告と今後の対策を公開

マイクロソフトは、日本時間で先週の1月25日午後4時頃から最大で約5時間半に渡り、Microsoft AzureやMicrosoft 365、Microsoft Teamsなど幅広いサービスがほぼ全世界で利用できなくなっていた大規模障害についての報告書を公開しました

WAN内の全てのルーターに誤ったメッセージが送信

報告書の原因について説明している部分を引用します。

まず原因について。同社のワイドエリアネットワークに対して行われた設定変更が全体に影響したと説明しています。

We determined that a change made to the Microsoft Wide Area Network (WAN) impacted connectivity between clients on the internet to Azure, connectivity across regions, as well as cross-premises connectivity via ExpressRoute.

原因としては、Microsoft Wide Area Network (WAN) に対して加えられた変更が、Azureとインターネット上のクライアントとの接続やリージョン間の接続、ExpressRouteを介した企業間の接続などに影響を与えた結果であると判断しました。

具体的には設定変更のため、あるルーターにコマンドを送ったところ、そのルーターがWAN内のすべてのルーターに対して誤ったメッセージを送信。その結果、WAN内のすべてのルーターが再計算状態に突入し、適切にパケットを転送できなくなったのが原因とのこと。

As part of a planned change to update the IP address on a WAN router, a command given to the router caused it to send messages to all other routers in the WAN, which resulted in all of them recomputing their adjacency and forwarding tables. During this re-computation process, the routers were unable to correctly forward packets traversing them.

計画的な設定変更の一環としてあるWANルーターのIPアドレスをアップデートしたところ、そのルーターに送られたコマンドによって、そのルーターからWAN内の他のすべてのルーターにメッセージが送信されました。その結果、すべてのルーターで隣接テーブルと転送テーブルの再計算が引き起こされたのです。そして再計算の間、ルーターは通過するパケットを適切に転送できませんでした。

問題の発端となったルーターは、マイクロソフトの認証プロセスで検証されていなかったことも付け加えられています。

The command that caused the issue has different behaviors on different network devices, and the command had not been vetted using our full qualification process on the router on which it was executed.

その問題を引き起こしたコマンドは、ネットワーク機器ごとに動作が異なる上、問題のコマンドが実行されたルーターは、当社の完全な認証プロセスでの検証が行われていませんでした。

2時間後にはほぼ自動回復、健全性維持システムを再起動

障害発生後のマイクロソフトの対応と、今後の対策についても報告書に書かれていますので、簡単にまとめておきましょう。

同社としては、障害発生から約7分後に、DNSとWANに関する問題を検出し調査を開始。発生から1時間5分後にネットワークが自動的に回復し始め、ほぼ同じくして問題の引き金となった問題のあるコマンドが特定されたとのことです。

2時間後にはほぼすべてのネットワーク機器が回復したことが観測され、2時間半後にはネットワークが最終的に復帰したことが確認されたと報告されています。

ただしWAN自身が備えていた健全性維持システム、例えば健全でないデバイスを特定して削除するシステム、ネットワーク上のデータの流れを最適化するトラフィックエンジニアリングシステムなどがWAN自身の障害によって停止してしまっていたため、これらを手動で再起動。

それによりWANを最適な動作状態に回復させるまでネットワークの一部でパケットの損失が増加し、約5時間時40分後に正常化したとのことです。

マイクロソフトは今後の対策として、影響度の高いコマンドの実行を遮断し、デバイス上でのコマンド実行は、安全な変更ガイドラインに従うことを義務付ける予定としています。

なお、今回の報告は暫定的な報告書と位置づけられており、今後改めて詳細な発表が行われる見込みです。


この記事は新野淳一氏が運営するメディア「Publickey」が2023年2月1日に掲載した『マイクロソフト、AzureやMicrosoft 365などに影響した先週の大規模障害の原因報告。WAN内の全ルータが再計算状態に突入し、パケット転送が不可に』を、テクノエッジ編集部にて編集し、転載したものです。


《新野淳一》
新野淳一

ITジャーナリスト/Publickeyブロガー。IT系の雑誌編集者、オンラインメディア発行人を経て独立。2009年にPublickeyを開始しました。

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