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世界の空気は想像よりずっと汚い。ダイソンの空気清浄機ヘッドフォン「Dyson Zone」体験して見えた実用度と狙い(本田雅一)

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本田雅一

本田雅一

ジャーナリスト/コラムニスト

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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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世界の空気は想像よりずっと汚い。ダイソンの空気清浄機ヘッドフォン「Dyson Zone」体験して見えた実用度と狙い(本田雅一)
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「今度、弊社から発売するウェアラブル製品について取材に来ていただけませんか?」

そうダイソンの担当者から尋ねられた時、正直、困惑した。

あれ?ダイソンってウェアラブル製品の開発に取り組んでいたっけ?

まさか空気清浄機が内蔵された「あのヘッドフォン(2022年3月に開発表明とともにビジュアルが公開されていた)」と、ウェアラブル製品というジャンル分けが簡単に自分の中でつながらなかったからだ。

その製品とは「Dyson Zone」。

ダイソンは会社全体の指揮を二代目のジェイク・ダイソンが指揮を執るようになったが、そのジェイク自身がDyson Zoneを装着している写真が話題になったのは2022年3月のこと。

▲チーフエンジニアのジェイク・ダイソン自ら装着したDyson Zone

パンチングホールが開けられたアルミ製シュラウドのイヤーピースに、メタリックのバイザーが口元を覆うビジュアルに、少なからずSFチックな印象を抱いた人は多かったようだ。映画版「キャシャーン」のようだという声も一部から上がったが、口元のバイザーは防護用ではなく、浄化された空気を口元に送り込むためのもの。

そもそもで言えば高性能な空気清浄機を販売する会社だけに、個人向けに自分だけのモバイル空気清浄機を開発するストーリーそのものに疑問はないが、てっきり試作機だと思っていたジェイクが装着している写真だったが、そのままのデザインで発売されるとは思いもしなかった。

正直に言おう。「悪くない」

Dyson Zoneは高級ワイヤレスヘッドフォンではあるが、その本質は空気清浄機だ。空気清浄機が必要ないならば、世の中には優れたヘッドフォンがたくさんある。それででもDyson Zoneが注目されるのは、空気清浄機として0.1ミクロンの粒子までを集塵できるだけでなく、人体への有害性がある酸性ガスの一部を除去できる高性能なHEPAフィルターで濾過した空気を、口元に送り届けてくれるからだ。
とはいえ、そこまでして空気清浄機能を持つデバイスを身につける必要はあるのか?

必要かどうかでいえば、多くの場合「必要ではない」。

加えて製品を体験したダイソン最大の研究開発拠点である英国マルムズベリーは郊外にあり、自然の中、好ましい環境にある。空気汚染とは全く無縁の場所だ。したがって、PM0.1クラスの微粒子を濾過し、一部の酸性ガスまでを吸着するというHEPAフィルターを通した空気は、確かにキレイなのだとは思うが、体感として何かが変化したとは思わなかった。

しかし東京は比較的、空気汚染の度合いが低いとはいえ、グローバルで見れば空気質が悪くなっている都市は容易に想像できるだろう。Dyson Zoneが最初に発売される中国は、石炭発電による粉塵の影響で大気汚染が過去何年もにわたって問題視されてきたし、古い地下鉄など閉鎖された環境での空気質の問題もある。

マルムズベリーでは感じられなかったが、その後、ロンドンに移動して地下鉄に乗り、多くの人でごった返すリージェント通りを歩いていると、Dyson Zoneの発想は悪くないと感じた。

都市部の環境が今後、悪化するだろうことは想像の範疇だろうし、それがかなり細かな地域性を持ったものなら、汚染のひどいエリアを迂回すればいい。

Dyson Zoneには空気質センサーが内蔵されており、さらにノイズを検出するマイクがある。この2つの情報を常に収集し、スマートフォンアプリのMyDysonを通じて可視化されるとともにデータセンターにアップロードされている。

このデータをスマホが付与するGPSデータとともにマッピングすれば、時間帯ごと、位置ごとの空気質と騒音データマップが出来上がる。これはユーザーに対して移動経路について考え直す機会を与えたり、あるいは将来的なインフラ整備など公的な事業、サービスへと繋げることもできるかもしれない。

「未来の社会問題を解決する」上で、Dyson Zoneは興味深い視点を持っている。ただし、こうしたコンセプトを実現した製品第1弾であるDyson Zoneに関していえば、素晴らしい部分と未熟と感じる部分が混在している。

未来への投資となる未知のジャンル

まだ日本での発売時期は決まっておらず、ハッキリとした価格はわからない。しかし、おそらく春ぐらいを目処に10数万円台前半のプライスタグが、日本では付けられると思う。

Dyson Zoneはこれまでにないジャンルの製品だけに、短期的に大きな売り上げを築こうというのではなく、まず市場開拓をするために可能な限りの技術を詰め込んだカッティングエッジの製品で可能性を示そうというのがダイソンの考えだろう。

つまり、この製品はダイソンにとって未来に向けての投資と言えるだろう。

都市部に住む誰もが空気汚染を感じ、健康への危険性を認識して生活。すでに北京はそういう状況だと認識しているが、いずれグローバルに広がっていく。

未来を見据えてということならば、確かに必要な製品になっていくかもしれない。

そのためにダイソンは、徹底的にコストをかけてできる限りの技術をDyson Zoneに詰め込んだだけではなく、極めて丁寧な作りになっている。通常、ここまでのコストを量産製品にかけることはないのでは?と思うほどだ。

空気吸入部のアルミ製シュラウドは見えない裏側とパンチングホールの側面だけが着色されており、ほんのりとパンチングホールに色味を付け、フィルター交換時に外すとそこで初めて全貌が見える。

側圧が強すぎないヘッドバンドにはバッテリーも統合されており、頭との接触パッドを兼ねている。イヤーパッドの素材も含め、耳あたりの良いスエード調素材は柔らかめの低反発で、本体の重さを感じさせない装着感の良さだ。

とてもではないが、ヘッドフォンを初めて作ったとは思えない。

これだけ贅沢に個々の要素を詰めて作っているのは、未来に向けてまずは新ジャンルの製品に投資をしてくれる人たちに向けて、出来うる限りの体験価値を提供しようということなのだろう。

志の高さと深みあるモノづくり。しかし残るジレンマ

今回はグローバルで新ジャンル製品の立ち上げを行うため、ごく少数のメディアがダイソン最大の研究開発拠点に呼ばれたもので、試したのは製品版とのことだが、各国の環境でのレビューテストは“これから”ということになる。

細かなインプレッションは製品版で述べることにしたいが、空気清浄機能とノイズキャンセリングヘッドフォン機能は馴染みの良い部分もあるものの、一方で競合する要素もある。

耳元で高性能HEPAフィルターに空気を通すだけの高性能コンプレッサを動かせば、当然ながらその動作音は気になってしまう。共振周波数が異なる素材を組み合わせつつ、合わせ部分の接合にも気を払いながら開発するとともに、ノイズキャンセリング機能でも動作音を打ち消すことで、耳の真横で空気清浄機が動いているような気分を味合わずに済む。わずかにキュイーンという高域ノイズが残るが音楽をかければ軽くマスキングされる程度のものだ。

これはプラスの要因だが、アクティブノイズキャンセル機能と不可分であるため、街中を歩きながらこの手の製品を使うときに必須となりつつあるトランスペアレントモードとの相性が良くない。

空気清浄機が動作していない時には、モード切り替えで周囲環境を取り込んで周囲の状況を把握しやすくできるが、空気清浄機が動作し始めるととたんに不自然な取り込み音となる。マイクからはコンプレッサーの音も拾っており、それだけを簡単に消す方法がないからだろう。

また、ワイヤレスイヤホンとしては異例の50時間という長時間駆動が可能な大容量バッテリを搭載しているが、コンプレッサーの動作には十分とは言えない。三段階に切り替え可能な空気清浄モードを低にしても3時間、高では1.5時間でバッテリーが空になる。

空気を口元に届けるバイザーはマグネットで簡単に脱着可能だが、呼気拡散を遮断するわけではない(何もないよりは拡散を抑制するそうだが、マスク的な機能は期待できない)ため、マスクが必要な場所では別途付属予定のアダプタをバイザーに装着する必要もあるようだ。

地球全体で空気汚染の進行が叫ばれる中、将来に向けての投資とするなら個人的には応援したい。丁寧な作り込みの深さは、例えばダイソンが最初にヘアドライヤーを発売した時に通じる丁寧さを感じる。その後、髪の毛に関する知見を深め、創意工夫の中で自在にヘアスタイルを操りつつ艶感を出すスタイラーへと進化させたことを考えれば、Dyson Zoneには第二章へと繋がる道もあるだろう。

第一弾の志の高さと深みある作り込みは評価したい。あとはいくつかのジレンマについての答え、あるいはそれら懸念を超越する価値体験を期待したい。


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《本田雅一》
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