広告最大手オムニコム、Twitter広告の一時停止を企業に勧告。ブランドの安全性に高いリスク

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Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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実業家のイーロン・マスクが買収してCFOに就任して以来、Twitterではシステム見直しや経営再建をめざす「破壊と再生」のうち前者が目立つ混乱が生じています。

その最たるものが、「有料プランTwitter Blueに加入すれば、誰もが認証済バッジをもらえる」リニューアルに伴う事態でしょう。悪ふざけで「公式アカウント」へのなりすましが横行し、たとえば「うる星やつら」TVアニメ公式などが注意喚起することにも繋がっています。

そんな状況のなか、世界最大手の広告代理店グループOmnicom Media Group(以下「オムニコム」)が取引先にTwitterへの出費を一時ストップするよう勧めている噂が報じられています。

このニュースはテックメディアThe Vergeが入手したという社内メモを情報源として最初に伝え、ロイターなど複数の報道機関が独立して追認しています。

オムニコムはマクドナルドやアップル、ペプシコとも取引がある、広告最大手2位のグループ(1位はWPP)。ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシアから撤退すると発表したときも、現地の広告会社にとって大きな痛手になると言われていました。

さて問題の社内メモは「Twitter - Continued Brand Safety Concerns( ブランドの安全性に関する懸念)」と題されているとのこと。その結論は「短期的にはTwitterでの活動(広告)を一時停止」するよう勧告するもの。

その根拠としては、ここ数日のTwitterでの出来事が「潜在的な深刻な影響」を及ぼしうることが挙げられています。取引先のブランドの安全性に対するリスクが「ほとんど受け入れがたいレベルまで急激に高まっている」と口を極めている有様です。

特に問題視されているのが、信頼・安全性チームの大規模な解雇(15%との報道もあり)と責任者の辞任、「認証済」なりすましアカウントの多発など。ここに付け加えるとすれば、10日(現地時間)に最高情報セキュリティ責任者(CISO)レア・キスナー氏、および最高プライバシー責任者Damien Kieran氏も辞任を表明しています。

そしてオムニコムがTwitterに求めるのは「許容レベルまで安全対策を再導入し、環境のコントロールを取り戻したと証明」すること。

実際に同社はTwitterに、続発している問題がコンプライアンス手続きや、オペレーション、製品やブランドの安全性、クライアントへの投資になんら影響を与えないと保証するよう正式に要請したとされています。

が、上記のようにキスナー(元)CISOを初めとして「これらの分野で現在、上級リーダーがいない」ため、Twitterはオムニコムに対して保証を与えられない状況です。

ほか、同じく広告大手のIPGも先週クライアントにTwitterへの広告出稿を中止するよう勧めたと報じられていました

またフォルクスワーゲンやGMなど自動車大手も相次いで有料広告を止める動きに出ており、オムニコムは事態を注視した上での決断と思われます。

たしかに月額8ドルを課金するだけで「任天堂アメリカ」が中指を突き立てる偽アカウントが認証バッジを付けたとなれば、大手企業が広告出稿を一時的に止めるのもやむを得ないことでしょう(下記は凍結済みアカウントのスクリーンショット。他にも目撃したとの証言あり)。ほとんどは数時間ほどで消されており、一応セキュリティチームは機能しているようです。

今までTwitterの収益のほとんどは広告から来るもので、マスク氏はその構造をTwitter Blueなどユーザーからの収入を主軸にする転換を図っていると思われます。が、その移行の一環として「認証済」バッジを8ドルで配ったところ、現在の経営を支えている広告主の利害と正面衝突してしまった格好です。

しかも、数日前に始めたばかりの新Twitter Blue加入受付を停止し、新規の有料ユーザーもせき止めています。マスク氏はこれから数ヶ月は試行錯誤を繰り返すと宣言していますが、それに付き合う義理もない大手広告クライアントとの関係性を見守りたいところです。

《Kiyoshi Tane》
Kiyoshi Tane

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フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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