米FDA、補聴器の店頭販売を許可。オーディオメーカーの参入に追い風

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Munenori Taniguchi

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米FDA、補聴器の店頭販売を許可。オーディオメーカーの参入に追い風

米食品医薬品局(FDA)が、軽度から中等度の難聴者向け製品を対象に、補聴器の店頭販売を許可する最終規則を発表しました

この最終規則は米国経済における競争を促進するために発行されたバイデン大統領の大統領令に従って発表されており、120日以内に実行しなければなりません。したがって規則が施行される10月中旬には米国の小売店やドラッグストアで市販の、安価な補聴器を購入することができるようになります。

これまで、補聴器の購入には医師の診断と、補聴器技師による調整作業の手間と費用が補聴器とは別に必要でした。また補聴器そのものも決して安価ではなく、経済的に補聴器の購入を断念せざるを得ない人も相当にいたはずです。

FDAによれば、この措置によって米国内で3000万人近くの成人が恩恵を受ける可能性があるとのこと。また推定では新しい規則によって難聴者らは両耳で約2600ドルを節約できる可能性があります。CNNは、米国内数千万人の難聴者のうち、補聴器を使用しているのは約16%に過ぎないと伝えています

米議会は、まだトランプ政権だった2017年に、医療費の削減、補聴器へのアクセスの改善、競争の促進を目的に、広範な超党派の支持を得て市販補聴器を可能にする法案を可決、大統領もこれに署名しました。ただ、その後業界の反発もあり、一向に対応は進まなかったものの、2021年7月にバイデン大統領による米国の競争力促進のための大統領令で、FDAに対し市販補聴器に関する規則を提案が促され、2021年10月にようやくそれが提出されました。これによりGoogleやアップル、サムスンといった多機能なBluetoothイヤホンを開発しているメーカーが補聴器に進出しやすくなりました。

テクノロジー方面ではその間にも補聴器の分野に向けた開発を進める企業が増えています。たとえばJabraは早くから補聴器製品に進出しており、Boseは2018年に利用者が自分で聞こえ具合を調整する「セルフフィッティング補聴器」のFDA認可を取得、「SoundControl」シリーズとして製品化しました。またワイヤレスヘッドホンなどでオーディオの伝送に使われるBluetoothが、2020年に補聴器のサポートを追加し、音楽用でありつつ補聴器としても機能する製品が開発できるようになっています。

なお、Boseは今年5月にヘルスケア部門を閉めることになり、SoundControlの技術はLexie Hearingが引き継いでいます。Lexieは「Powered by Bose」と銘打って、899 ドルの補聴器「B1」を発売しました。新しい補聴器のなかには、その外観が旧来の耳たぶに引っかけるデザインではなく、完全ワイヤレスイヤホンにしか見えないものもあり、補聴器に抵抗感があった人々も装着しやすくなっています。

完全ワイヤレスイヤホンの技術が補聴器を安価に、入手しやすくしているとも言える状況ですが、一方で日がな一日完全ワイヤレスイヤホンで大音量で音楽を聴き過ぎると、それが原因で難聴になる可能性もあります。音量はほどほどに。


《Munenori Taniguchi》
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