MX Mechanical / Miniレビュー。ロープロメカニカルキーの打鍵感とロジクールの安心感が魅力

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橋本新義

橋本新義

IT系とゲーム系のフリーライター(タイプ:出オチ)

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PCとキーボードやディスプレイなどの周辺機器、スマートフォン、シューティングゲームなどを好むおじさん。隙あれば出オチやネタ、製品にまつわる余談やいい話を組み込もうとして記事が長くなる程度の能力を持つ。アイコンは漫画家『餅月あんこ』先生の筆による似顔絵です。

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MX Mechanical / Miniレビュー。ロープロメカニカルキーの打鍵感とロジクールの安心感が魅力
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ロジクールが販売中の高級キーボード『MX Mechanical』『MX Mechanical Mini』は、現状では非常に少ない「ゲーミング指向ではないロープロファイル・メカニカルキーボード」というジャンルに、PC周辺機器の世界最大手企業であるロジクール/Logitechが本気で参入した製品。

▲MX Mechanical Mini(上)とMX Mechanical。Miniは一般的なテンキーレス版よりさらにコンパクトです

直販価格はMX Mechanical(テンキー付きモデル)が2万790円(税込)、MX Mechanical Mini(コンパクトモデル)が1万8700円(同)。

高級機であるMXシリーズに属するだけあり、キーボードとしてはかなり高価です。が、実際に使ってみると、価格なりの価値はある、という説得力が十二分にある製品でした。

『メカニカルキーボード』とは、キー1個1個に独立したスイッチ(キースイッチ)を備えるタイプのキーボード。一般的なメンブレンタイプと呼ばれる構造に比べて、製造コストは非常に高価となりますが、一般的に打鍵感や入力精度に優れ、入力ミスを減らせるのが利点。精密なキー操作が求められるゲーミングモデルを中心に、高級キーボードで高い人気となっています。

また、本機が採用する『ロープロファイル(スイッチ)』とは、ここ3、4年ほどで普及してきた、一般的なスイッチに比べて薄型(低背)なタイプ。深く押しこまなくても入力が可能なため慣れると素早い入力が可能で、またノートPCなどの薄型キーボードに慣れたユーザーでも移行への違和感が薄い点が特徴です。

今回紹介する2モデルは、こうした「ロープロ(ファイル)メカニカル」タイプのスイッチを採用したジャンルの製品というわけです。

今回は、少しこじらせ気味のロジ(クール)好きを公言する筆者が、この2機種をじっくりと触ってのレビューをお届けします。なお今回は、MX Mechanicalの茶軸モデルと、MX Mechanical Miniの赤軸と青軸モデルを試用しています(○軸については後述します)。



▲キーボードバックライトはゲーミング機と一線を画する、白一色タイプ

「実質的初代機」とは思えない隙のなさ

さて、まずはおおまかな評価から。

個人的に印象深かったのが「非ゲーミングタイプのロープロメカニカルキーボードとしては、ロジ製品でも第一世代にあたるのに、かなり隙がない」点です。

もちろん、Miniの「Enterより右側にキーがある」タイプの配列や、少なくとも現状ではライバル製品に比べてキーカスタマイズの柔軟度が少なめといった点など、気になる点はあります。


しかしそれ以上に、たとえばキートップの形状やBluetooth接続の感度、本体の触感といった基本的な点での完成度が高く、良い意味でさすがロジの高級モデル……といった安心感があるのです。

▲自社ライバル(価格的には上位)となる『G913 TKL』(上)と、Keychron K1(中)とのロープロ・メカニカル対決構図。Miniはさすがに最新モデルだけあります

キーボード好きの方向けに表現すると「『Keychronキラー』として、同社の製品に真っ正面から対抗できる仕様にブラッシュアップしてきた」とも表現できます(Keychronとはメカニカルキーボード専業の新興メーカー。非ゲーミングタイプの無線モデルで急速に人気を得ています)。

そして製品自体の特徴ではないのですが、ある意味で最も「さすがロジ」と感じたのが、「多くの家電量販店店頭で実機が試せる」こと。というのも、実はこの2モデル、1万円台後半から2万円台前半の高級キーボードでありながら、津々浦々の家電量販店にデモ機が並べられているのです。

▲MXシリーズの先輩である『MX Keys Mini』(上)とMechanical Mini、G913 TKL(下)の比較。意外なまでにサイズが異なります

記事としてはある意味で敗北ですが、やはりキーボードは最終的に触ってみてナンボの製品です。ですがこのクラスの高級キーボードとなると、PCに強いショップでないと「在庫はあっても展示機はなし」状態もザラ。
対してこれら2モデルは、タイプ感の異なるスイッチバリエーション3種を網羅した状態で展示されていることが多く、それこそPCにあまり強くない量販店であろうとも、デモ機が置いてある店舗が相応に見られます。

こうした、高級キーボードではあまり使えない「気になった方は実際に触ってみてほしい」というフレーズが書ける製品である……という点は、購入時には非常に頼もしい要素。ともすればここは製品仕様以上に、製品選びの際大きなアピールポイントとなるはずです。


▲搭載キースイッチをアップで見ると、軸の底側に『Kailh』の刻印が

重要な細部からチェック

続いて、すでに気になっている読者の背中を押すであろう細かなポイントに関してざっと紹介します。実際の使用感から知りたい方は下まで読み飛ばしてください。

まずキースイッチに関して。一説にはオリジナルとも呼ばれていますが、これはKailh(カイル)ブランドの、いわゆる『CHOC V2』が搭載されています。
ロジでKailh製のスイッチと聞くと、詳しい方はゲーミングキーボードのG913/TKLやG813の『GLスイッチ』を連想するでしょう。が、これらがキートップ形状などでロジカスタムが入った仕様だったのに対し、今回は少なくとも見た目はそのまま。もちろんKailhロゴも入っています。

▲Fnキーは英字キーの右手側にのみ配置。カーソルと合わせても右手のみで押せる配置ではあります
▲余談ですが、MX KeysとMiniでは、Fnキーは左手側でした(写真上側)。正直「どうして」感があります

そして、ユーザーによっては非常に大きなポイントが、『Page Up/DownやHome/Endは、専用キーのほかに、Fn+矢印キーでも入力ができる』という点。実はこのキーコンビネーションは、先行していたMX Keys Miniなどでも使えた隠し(的)操作です。

とくにMX Mechanical Miniでは、これらのキーがEnterの右にあり、使いにくいのではないかと気になっている方も相応にいるはず。ですが、この“ノートPC的操作”が使えるのであれば安心できる、という方もいるのではないでしょうか。

▲MX Mechanical MiniではF4より右の最上段キーと、Page Up/Downなどがカスタム可能
▲MX Mechanicalでは、さらにテンキー部最上段のキーもカスタム可能です

また、専用ユーティリティ『Logicool Options+』にて、FキーやPage Up/Downなどの一部キーは、無効化を含めたカスタマイズが可能である点も紹介しておきたいところ。

ここで、先ほど紹介したPage Up/DownとHome/EndはFn+矢印で代替できるという点を合わせると、これらのキーを無効化しても機能は使えるということに。筆者の場合は、Miniの最右列キーは、左隣りにあるキーと同じ設定(たとえばHomeキーはBackSpaceに、EndとPage UpはEnterに)と設定して使っています。

ただし、残念ながら「Fnキーを左手側に持っていく」カスタマイズは現状では不可能ですし、InsertやScroll Lockは代替が効きません。

▲いわゆるメディアキーの配置は、ロジの最新仕様。F7は顔文字パレットで、F8が切り取り&スケッチ起動、F9はマイクオン/オフです

そして、昨今のロジ製キーボードらしく、『Print Screen』キーもMechanicalとMiniともに省略されている仕様なのですが、こちらもカスタムして対処しました(代わりにFn+F8キーで『切り取り&スケッチ』が呼び出せるのですが、Xbox Game Bar経由ではPrint Screenが必要なため)。

加えて筆者が確認した範囲では、これらのキーカスタマイズは、Options+の入っていない本体では無効化されてしまいます(デフォルトに戻される)。言い換えれば、オンボード記録(キーボード側のフラッシュメモリに記録しておき、専用アプリの入っていない本体でも継続して使える機能)には、少なくとも現状では非対応、というわけです。このあたりは留意しておく必要があるでしょう。

また余談ですが、MiniのPage Up/DownとHome/Endの位置は、同じ「Enterキーの右にあるタイプ」でも、たとえばHP製ノートPCなどとも微妙に異なるので注意が必要です(Miniは上からHome、End、Page Up……ですが、HP製ノートはHome、Page Up、Page Down……となっています)。


▲G913 TKL(左:CHOC V1カスタム)では、細い穴2箇所でキートップを固定。対してV2では大きな十字突起でブレを低減します

軽快かつ滑らかな入力感

さて実際の使用感ですが、ロープロファイル(低背型)のメカニカルキースイッチとしては、現在最も支持されているCHOC V2を採用しているだけあり、同スイッチの美点である滑らかな入力感が印象的。

CHOC V1系での弱点だったキートップのわずかなブレとそれに伴うタイピング音も、軸を太くしたことで軽減。これはロジ側がこだわった「(メカニカルとしては)静かなタイピング音」という点にも大きく貢献しています。

CHOC V2の特徴であるアクチュエーションポイント(入力が認識される深さ)が1.3mm、かつキーストロークが約3.2mmと浅い点に関しては、慣れるまでは独特の違和感がありますが、昨今のノートPCに慣れた方であれば、むしろフルサイズのキースイッチより違和感が少なくなるはずです(そもそも、今回ロープロタイプを採用した理由も、このあたりを狙ったためでしょう)。

▲キーボード好きにはおなじみの「3色軸」も網羅。色もそのままで、左から茶軸、青軸、赤軸です

そして、無印とMiniのそれぞれに用意された3種類のキースイッチ――いわゆる赤軸、茶軸、青軸――ですが、これらの違いもしっかりと味わえるようになっており、また事実上の標準である、Cherry MXブランドのスイッチの印象を素直に引き継ぐもの。

赤軸はキーが軽めで、押し込んでも荷重が変わらない昨今のスタンダード。茶軸は一般的なキーボードのように「一定まで押し込むと、負荷が軽くなる」タイプ。青軸はスイッチを押し込むとマウスのようなクリック音が鳴るため入力がわかりやすく、重さは赤軸と同じか、少し重めというタイプです。

Cherry MXキーで「好みの軸色が決まっている」方であれば、ほぼ間違いなく本機でも反映できます。

▲Options+経由でのファームウェア更新にも対応。実際に、発売と同時に更新が掛かっています

また冒頭でも紹介したように、細かなところの完成度や安心感は、良い意味でロジ製品と呼べるもの。


たとえば、設計が甘いキーボードだとすぐに粗が出る無線の安定性(広義の感度)やバッテリー駆動時間(公称では、バックライトオフでは最長10か月、バックライトオンでも15日)、あるいは電源スイッチの感触といったポイントで、使っていて不安となる要素が少ない点が印象的でした。

加えて本体側OSも、WindowsにmacOS(これらはOptons+も動作)のみならず、ChromeOS、Linux、Androidにメーカー公式レベルで対応。このあたりの幅広さも嬉しいところです。


▲新仕様の独自無線Logi Boltはアダプタも付属。付属しなかったMX Keys Miniのユーザーは歯がゆさを感じるところでは

有線接続非対応など、意外な仕様も

一方で個人的には、この価格帯で有線接続非対応という点はあまりにも意外でしたし(動作中に接続しての給電は可能。また独自無線の『Logi Bolt』はUSB-A用アダプタも付属し、すぐに使えます)、価格を考えると、上述したように設定をオンボードメモリに保存できない点も意外感があります(ひょっとするとこのあたり、ファームウェアアップデートで対応してくる可能性もありそうですが)。

そして価格自体に関しても「お買い得度では納得はするけれども、可能であればあと一声安ければ」といったところはあります。


総論


しかし総じて見ると、配列面での主張などはあっても、ロープロメカニカル+ワイヤレスキーボードとしては、非常に優れたモデルであると感じました。とくにMiniは、本体のコンパクトさも相まって、刺さるユーザーには「他に替えのない」モデルとなり得る存在。

少しでも気になった、という方は、ぜひとも「店頭で触れてみて」ほしいモデルです。



●Source:ロジクール 製品ページ

《橋本新義》
橋本新義

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