Anthropicは、オープンソースソフトウェア(OSS)の脆弱性をClaude Mythosなど自社の最上位モデルで検査する「OSS Scanner」について、提供開始から11日間でAI判定の深刻度「緊急」77件、「重要」803件を発見したことを明らかにしました。
■ 人手の検証を待たずに届く脆弱性レポート
OSS Scannerは、OSSプロジェクトのメンテナーからの申込みを受けて、Anthropicが自社環境で解析し、脆弱性を知らせるサービス。
費用は全額Anthropicが負担し、各レポートには再現コード、原因の説明、可能な場合は修正パッチ案が付きます。
特徴は、レポートがモデルの出力そのままで人間のレビューを経ないかわりに、速く頻繁にスキャンできること。このため、人間の検証を経る従来のCVD(協調開示)の取り組みとは異なり、誤った報告が含まれうるとAnthropic自身が明記しています。
▲ 初期検証で88%が基準クリア、深刻度高めに報告する傾向も指摘
Anthropicによれば、初期版が48プロジェクトで出した緊急・重要判定97件を、同社のCVDで検証を担うペネトレーションテスターが検証したところ、85件(88%)が開示基準を満たし、誤検知は1件でした。
一方で、メンテナーからは深刻度を高く付けすぎる、プロジェクトの脅威モデルを誤解しているとの指摘もあったことを報告しています。冒頭の77件と803件もモデルによる判定で、人が検証した件数ではありません。
■ curlの近年最悪級の脆弱性も
目立つ成果が、通信ライブラリー「curl」の脆弱性CVE-2026-92392です。HTTP/2でのアップロード中にサーバーがストリームを中断すると、解放済みのメモリーを使ってしまう(use-after-free)欠陥で、10月14日公開のcurl 8.23.0で修正しました。
curlの開発を率いるDaniel Stenberg氏は、curlで久しぶりの最悪級の脆弱性の一つと評価しています。curlが深刻度Highを付けたのは2021年以降で3件目。
特定の条件がすべて揃えばリモートコード実行が可能だと実証されていますが、curl側は条件が厳しく、攻撃の結果として最もありそうなのはクラッシュだとしています。報告は9月15日で、正式提供前の初期版による発見。curlはこの件を受けてリリースを2週間前倒ししました。
■ 2万9,000件の候補に人手が追いつかない
AnthropicはOSS Scannerを開始する以前から、自社モデルでOSSの脆弱性を探し、外部のセキュリティ企業が検証したものをメンテナーに報告する協調開示を続けてきました。
同社の集計では、10月2日時点で候補29,439件のうち人手でレビューできたのは6,123件。
一方で、人力検証で確定していなくても、脆弱性と思われるものが発見されたなら教えてほしいというメンテナーが増え、すでに5,000件近くを直接送っていました。
エクスプロイトを数分で作れる今、早く知って直せるほうが攻撃者に先手を取れるというのがAnthropicの説明です。
■ 開示期限なし、PoC付きメールは暗号化
スキャンはインターネットから切り離したサンドボックスで実行。メンテナーはビルド用のDockerfileと、任意で深刻度の付け方などを記した脅威モデルを渡します。
未検証のレポートのため、一般的な90日の開示期限は設けず、内容も公開しません。初回の後も定期的に再スキャンします。
担当PMのPunit Shah氏によれば、脆弱性を検証するコンセプト実証のための攻撃コードをメールに添付したところ、大半がマルウェアとしてはじかれ、レポートが届かなかったとのこと。現在はすべて暗号化して送付し、要望の多かったGitHub Security Advisories経由の配信も試験中です。
■ OSS-Fuzzが手本、企業向けは有料のClaude Security
オープンソースソフトウェアを対象とした無償のセキュリティ検証サービスは新しいものではなく、Googleが2016年から提供するファジングサービス「OSS-Fuzz」をAnthropicは手本として挙げています。
企業向けには、Mythosを開発工程に組み込める有料製品「Claude Security」をすでに提供中。OSS Scannerはこれに加えて、トークンを大量に消費する実験的な手法も回すとしています。
競合するAI企業の取り組みとしては、OpenAIも2025年10月、Aardvark(現Codex Security)の発表時に、一部の非商用OSSへの無料スキャンを表明していました。
■ 申し込みはGitHubのプルリクエストで
対象は、インフラや利用者のセキュリティに大きな影響を持つ定評あるプロジェクトで、個別に判断します。申請はGitHubのリポジトリ「anthropics/oss-scanner」に設定ファイルを追加するプルリクエストで行い、Anthropicがコアメンテナー本人かを確認します。
OSS Scanner
Anthropicによれば約650件の申込みがあったものの、審査を経て受け入れたプロジェクトは114件。重要度が低かったり、セキュリティに大きな影響がないと判断される等の理由で対象外になることもあります。





