オープンソースのオフィスソフト「LibreOffice」を開発・管理する非営利団体「The Document Foundation」は、AIをデフォルト機能として搭載しないことを改めて明確にしました。
同団体はブログ投稿の中で、「AI非搭載も今や一つの特徴だ」という言葉を掲げ、この方針が意図的な設計上の判断であることを強調しています。
LibreOfficeは学校・病院・公共機関・法律事務所など世界中の数千万人のユーザーに利用されており、その規模ゆえにデータの取り扱いには特に慎重な姿勢を求められています。同団体は、AI機能をデフォルト設定に組み込むための条件として複数の厳格な基準を公表しました。
まず、推論処理の実行場所はユーザー自身が選択できなければならないとしています。ローカルコンピューター上での処理、ユーザーが直接管理するインフラ、あるいはユーザーが独自に選んだサービスのいずれかであるべきで、無断で特定のプロバイダーへ文書や情報を転送するようなデフォルト設定は「選択肢とは言えない」と断言しています。
また、LibreOfficeは作業中にユーザーの許可なくドキュメントの内容が端末外に送信されることを禁じています。医療記録・訴訟ファイル・入札書類・学生データなど、法的保護の対象となる情報を含む文書が、アプリケーションによってバックグラウンドで送信されることは許容できないとしています。
さらに、いかなる形のテレメトリー(情報の自動収集)も認めないこと、単一プロバイダーへの依存を排除すること、生成コンテンツはODF形式で出力されること、そしてAI機能は完全にオプションであり、管理者がポリシーに基づいて無効化できることも条件として挙げています。

同団体はこれらの条件を現時点で満たす統合ソリューションは他に存在しないと評価しており、「これはAI分野の価値に対する判断ではなく、現在の技術の状態に対する評価だ」と説明しています。
LibreOfficeでもAI機能を使いたいというユーザーには、OllamaやLM Studioなどを通じてローカルモデルに接続する拡張機能を活用する選択肢が提供されています。ただし、これらはThe Document Foundationではなく各開発者が管理するサードパーティ製の拡張機能であり、ユーザー自身がその内容を精査し、責任を持って扱う必要があります。
同団体は、自らの立場が商業的なオフィスソフトと根本的に異なる理由についても言及しています。サブスクリプション収益を持つ企業にとってAIアシスタントは価格引き上げの根拠となり、自社インフラへのデータ集約を促進するビジネス上の動機があります。一方、非営利団体であるThe Document Foundationには、四半期ごとの業績目標も、データを収益化する仕組みも存在しないため、ユーザーにとって本当に有益かどうかを時間をかけて判断できると述べています。
今後については、オンプレミスでの推論(自前の環境内での推論処理)が標準的なハードウェアで扱いやすくなりつつあること、オープンモデルが急速に進化していることを踏まえ、条件を満たすアプローチが登場した場合には慎重に評価すると表明しています。「デフォルトインストールにはいかなるAIも含まれない」という現在の方針は、技術の動向を注視しながら継続されます。








