日本初の宇宙飛行士 秋山豊寛氏が死去 人類初の宇宙ジャーナリスト・商業宇宙飛行者

テクノロジー Space
Ittousai

Tech Journalist. Editor at large @TechnoEdgeJP テクノエッジ主筆 / ファウンダー / 火元

元TBS記者で、日本人初の宇宙飛行士として知られる秋山豊寛氏が亡くなりました。秋山氏は1942年東京府(現・東京都)生まれ。84歳でした。

秋山氏は大学卒業後の1966年にTBSに入社、外信部で長く海外取材を続けたジャーナリスト。

1989年、TBSが当時のソビエト連邦宇宙局ロスコスモスと契約して進めた「宇宙特派員」計画に選ばれ、1990年12月にソユーズ宇宙船で宇宙ステーション「ミール」を訪問・滞在しています。

宇宙からの中継では「これ、本番ですか?」など、衝撃的にジャーナリスティックな感想で話題になりました。

秋山氏を巡っては、「日本人で初めて宇宙飛行をした宇宙飛行士」ではなく「日本で初めて宇宙旅行した客」「宇宙特派員」である、「正式な」宇宙飛行士はJAXAの毛利衛氏である、といった言い方もありますが、秋山氏もロスコスモスで1年以上の訓練を受け、正式な宇宙飛行士(コスモノート)の資格を取得しています。

(▲画像:ソユーズ宇宙船。2020年にISSとドッキング時。NASA撮影)

毛利氏の場合は、日本の宇宙機関であるNASDA (現JAXA)が募集・育成した職業宇宙飛行士としては日本人初。本来ならば何の留保もなく日本人初の宇宙飛行士になるはずが、NASAのチャレンジャー号爆発事故により延期を余儀なくされ、そのあいだに民間であるTBSが商業的に「日本人初」を実現したという経緯もあります。

■ 「宇宙飛行した人」か「宇宙飛行士」か

こうした事情から、秋山氏は「NASDA / JAXA所属でないから」「本業が別にあるから」以外にも様々な定義で「日本人初の宇宙飛行士ではない、呼べない、ただの乗客」等の論評をされがちでした。

たとえばコスモノートであってもКосмонавт-исследователь(宇宙飛行士研究員)なので宇宙飛行士とはいえない、ロスコスモス自身が「商業宇宙飛行」と認めているので、金で搭乗権を買った旅客であって乗員ではない、「本職」ではない等々。

正式な宇宙飛行士云々についていえば、「宇宙飛行士研究員」も、NASAにおける科学者枠の「ペイロードスペシャリスト」と同じく正式なコスモノート(宇宙飛行士)資格です。

(▲画像:ミール宇宙ステーション。1997年にNASAのスペースシャトル アトランティスから撮影)

世界各国の「我が国で初めて宇宙飛行した宇宙飛行士」にはロスコスモスの宇宙飛行士研究員もNASAのペイロードスペシャリストも多く、毛利氏も日本初の「本職」宇宙飛行士として飛行した際はペイロードスペシャリスト資格でした。

たとえば1991年に同じくソユーズで飛行した英国の化学者ヘレン・シャーマン氏など、こうした宇宙飛行士は報道においても記録においても単に「この国で初の宇宙飛行士」として扱われています。

正式な資格を得た宇宙飛行士でも、本業が別にあるから宇宙飛行士ではないを採用すると、いま各国で「我が国初の宇宙飛行士」として認められている顔ぶれもかなり脱落するか変わることになりますが、特にそうした書き換えの運動はありません。

また商業宇宙飛行であるから云々については、商業的な契約を結んでの飛行であったのは事実でも、当時のロスコスモスにもソユーズの飛行計画にも現在のような「乗客」の枠は存在せず、全員が正式な宇宙飛行士としての資格を取得し、万が一の際にはバックアップとして責任を果たす訓練を受けています。

(「資格云々ではなく金で乗ったからだめ」を採用すると、NASAやロスコスモスとの様々な政治経済的バーターで実現した各国の「我が国初の宇宙飛行士」多数がアウトになるだけでなく、スペースシャトルが使えないあいだロシアに頼っていたNASAの宇宙飛行士も「金で乗った」枠。)

宇宙飛行士以外の本業があり、金銭で宇宙に出たという定義であれば、また商業宇宙飛行の顧客になった点でいえば、「世界初の宇宙旅行客」も誤りではありませんが、前述のように正式な宇宙飛行士の資格も得たうえで乗員として参加しているため、日本人で初めて宇宙飛行した宇宙飛行士である事実と矛盾するものではありません。

■ 人類初の宇宙ジャーナリスト

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「宇宙飛行士」と呼ぶか「宇宙飛行者・宇宙旅行客」と呼ぶかは、前述のように互いに矛盾するものではないため、立場によって様々な定義を採用していただくとして、TBSのいう「宇宙特派員」、「宇宙ジャーナリスト」としては疑いの余地なく人類初。

宇宙飛行者は、宇宙飛行士の資格を得ていない観光客も含めて数百人いるものの、職業的な報道ジャーナリストとして地球周回軌道にまで到達して本業に従事したのは、現在に至るまで世界で唯一でもあります。「やっぱり青いですね」というむしろ壮絶な台詞も、こう考えると味わい?が増すかもしれません。

(宇宙ジャーナリスト計画については、当然ながら米国が先んじてウォルター・クロンカイト等の著名なニュースキャスターを候補に進めていたものの、チャレンジャー号の爆発でお流れになり、結果的に日本人の秋山氏が世界初となりました。)

■ 退職後は農業へ

(▲画像:岩波ブックレット『原発難民日記』より)

毛利氏は長く宇宙飛行士を続け、退職後も日本科学未来館館長を20年にわたり務めるなど、日本における科学コミュニケーションの顔として活躍していますが、秋山氏は1995年にTBSを早期退社したのち、福島県滝根町からの招聘で移住し農業に従事。講演やコメンテーターとしての活動のほか、宇宙飛行の経験を経て農業に携わった立場からの著書、福島原発事故で移住を余儀なくされた体験を綴った著書も出版しています。

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