Nintendo Switch 2新作『The Duskbloods』(ダスクブラッド)について、開発元フロム・ソフトウェアの代表取締役社長であり、本作のディレクターを務める宮崎英高氏にお話をうかがいました。
宮崎氏みずから「新しいというか、変なゲーム」、フロムにとって挑戦と形容する『ダスクブラッド』は、対人戦のあるアクションでありながら、対戦スキルや「キル」稼ぎだけではない勝利点(美徳)の仕組みや、宿命や因縁といったキャラクターのロール(役割)を演じる要素など、非常にユニークな作品です。

話題は独特のシステムと設計思想について、キャラクター造形に出てしまう宮崎氏の「好み」、世界観やストーリーの楽しみ方、Nintendo Switch 2独自要素など。前後編でお届けします。
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■PvPvEは「情報発信としてちょっと間違った」
―― 今回、プレイヤー同士の戦いも、いわゆるNPCやモンスターとの戦いもあるPvPvE (Player vs. Player vs. Environment)というスタイルを選んだ理由と狙いはどんなものですか。

宮崎:そうですね、まず第一に、本作の最初の情報発信として「PvPvE」というのは、あまり正確ではなかったかもしれません。
私としては、PvPの要素もあれば、PvEの要素もある、ただそれだけの事実として使った言葉なのですが、現状「PvPvE」というと、もっと特定のフォーマット、例えば脱出シューターのようなゲームを想像してしまうのかなと。ネットワークテスト版を触って頂ければ、ご理解いただけると思いますが、本作はそれらとはまた違ったゲームですから。
ともあれ、本作がオンラインゲームであることは間違いありません。何故それを作ったのか、という話であれば、我々の過去作と同様の答えになります。つまり「自分たちが面白そうだ、作りたいと思ったから作った」ですね。
タイミングが『ELDEN RING NIGHTREIGN』と被っているので、そのことについて色々と聞かれることもあるのですが、両者のタイミングが被ったのは、ただの偶然です(笑)。我々の戦略が変化し、これからはオンラインゲームを中心に作っていく、といったことではありません。
そもそもの話として、本作のはじまりは『ELDEN RING NIGHTREIGN』よりも前ですしね。
以前クリエイターズインタビューでお答えした通り、たまたま任天堂さんに本作の原案をお話しする機会があり、興味を持って頂いた、というのがはじまりなのですが、その時は、単に自分が面白そうだと思うことを喋っていただけで、会社としての戦略とか、そんなことはまったく考えていなかったと思います。
ただ、もう少し深堀りすると、私自身が『デモンズソウル』や『ダークソウル』を作る過程で、蓄積されたものはあった気がします。
『ダークソウル』の誓約が分かりやすいですが、ああしたオンライン要素は私の好みでして、過去色々なアイデアを考えたのですが、シングルメインのゲームが前提だと採用しにくいものも多かったのです。そうしたアイデア、あるいは思考の蓄積を、どこかで活かしたかったのかなと。
■全キャラが近接と遠距離武器を持つ理由

―― 全キャラクターが近接武器と遠距離武器の両方を持つようにした理由は?
宮崎:基本的には、まずアクションの土台があり、それに合わせて武器種なども調整されています。
本作では、プレイヤーキャラクターは血族であり、超人的な能力を持ち、かなり高くジャンプでき、空中を駆けるような動きも可能です。
一言で言うと、今作のアクションはダイナミックなもので、そのベースで戦うためには、近接武器だけでなく、標準で遠距離武器も必要だろうと考えました。
■ゴシック風の世界観は「ヴァンパイアなので」

―― 近代的なゴシック調という世界観は『ブラッドボーン』を彷彿とさせるものもあるなと思ったのですが、今回の『The Duskbloods』はなぜこの方向性になったのでしょうか。
宮崎:今作のプレイヤーキャラクターである血族のモチーフは、いわゆる吸血鬼です。なので、吸血鬼もの、として最もストレートな世界観として、最初のマップとしては「ゴシック・ヴィクトリアン」を選択しています。
ただ、今作の世界観はそれだけではありません。
ネットワークテスト版では、マップはひとつだけですが、製品版では他にもマップが2つ用意され、それぞれ「ゴシック・ヴィクトリアン」とは、また違った世界観を持っています。
本作では、血族たちは、色々な時代、場所の「黄昏」に呼ばれ、血授をめぐり戦います。戦いの舞台の共通点は、それが「黄昏」、つまり「人類の滅び、衰退、落日の時」であることです。
そういった意味で、結構広がりのある世界観かと思います。
■マップは「8人で出会える適度なサイズ感」
―― 今日試遊したマップは、街と周辺も含め色々な地形があり広い一方、ワープもあって思っていたより回りやすい印象でした。他のマップも同じくらいの大きさなのでしょうか。
宮崎:基本的には同じですね。ゲームバランスを考えると、適切なマップの大きさというのは大体決まっており、どのマップのその範囲内に収まるように調整されています。
■「上位でなくても楽しめる」3つの観点
―― 「上位でなくても楽しめる」という説明がありましたが、どういう目的意識と手法で取り組んでいるのでしょうか。
宮崎:
そうですね。大きく3つの点があると思います。
1つ目は「美徳」のシステムです。
美徳とは、いわゆる勝利点なのですが、最終戦を除いて、戦いの勝敗はこれの多寡により決まります。PvPなりPvEなりは、この美徳を得るための一手段でしかありません。
こうすることで、純粋なアクションスキルだけでなく、立ち回りや戦略で勝利を目指すことが可能になっています。美徳システムにより、純粋なアクションスキルの比重を下げているのです。

2つ目は、ロールプレイ的な楽しみです。
本作は、純粋に勝ちを目指すのも、勿論楽しいゲームだと思いますが、それとは別に、キャラクターを演じたり、戦いの最中に突発的に起こるドラマを楽しんだり、といった側面も重視しています。
イベントや烙印、特に後者にその色が濃いでしょうか。期せずして割り当てられる「受動烙印」には、時にドラマがあるものと思いますし、たまたま、特定の組み合わせで烙印が成立した場合などに、専用のセリフが再生され、新しい物語の断片が手に入る、といった要素もあります。
(烙印:キャラクターごと、プレイごとに設定できる追加のロールプレイ要素。「宿敵を倒す」「かつての恋人に花を捧げる」など、追加目標的に機能する。)
3つ目は、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、ストーリーの進行とキャラクタービルドです。
本作の拠点である「夜の館」には2階があり、そこには何人かのNPCがいて、彼らと話すことでストーリーが進行します。また、オンラインプレイを通じてアイテムを入手し、それを使って血族キャラクターをカスタマイズできますし、アイテムテキストなどによる断片的なストーリーテリングも行われます。
こうした要素は、必ずしもオンラインプレイにおける勝利を前提とするものではありませんので、まずは勝利に拘らず、ストーリー進行とキャラクタービルドを楽しむ、といったことが可能です。
■勝利点システムとボードゲームの影響
―― 盤面を見て、稼ぎやすい方法で勝利点を稼いでゆくのはボードゲーム的な感覚がありました。やはり宮崎さんはアナログゲームがお好きなので、ボードゲームからの発想があったりするんでしょうか。
宮崎:そうですね。美徳のシステムは、ボードゲームを参考にしている部分があると思います。本作には、美徳を得る手段の一つとして「称賛」という要素もあるのですが、開発中には「ロンゲスト・ロード」と呼ばれていましたからね(笑)
(編注:『カタンの開拓者たち』で勝利点を得る条件のひとつ「最長交易路」)
個人的には、この美徳のシステムが、ゲームの幅を大きく広げてくれたと思います。勝利を目指すための選択肢、立ち回りの幅という点でもそうですし、イベントや、血族の特殊能力を考えるという点でもそうだと思います。

―― 最後はどうしても決闘になるわけですよね。(最終フェイズは上位3名のバトルロイヤル)
宮崎:はい。最終戦のないパターンも試したのですが、どうしても締りが悪く、現状の形に落ち着きました。
ただ、ネットワークテスト版では体験して頂けないのですが、最終戦がPvPではなく、ボス敵とのPvEになるパターンも用意しています。キャラクタービルドにより、そうした最終戦を希望する、ということもできるようにしています。
また我々としては「最終戦を戦う最後の3人に残った」ということに、しっかりとした達成感を感じて欲しいです。率直に申し上げれば、そのために、演出面では、ネットワークテスト版にはまだ不足があると感じています。
■任天堂の協力。「我々には当たり前だけど、確かに分かりづらいかもな」
―― Switch 2向けということで、フロム・ソフトウェア作品にあまり触れてこなかった層を意識した設計や調整はありますか。
宮崎:お恥ずかしい話ですが、私自身はあまり考えていません(笑)
元々から、特定のユーザー層を想定し、そこに向けて作る、ということが得意ではないこともあり、「まずは自分が楽しいと思えるもの、作りたいものを作る」ということを大事にしています。
ただ、本作はシステムとルールで遊ぶ比重が大きく、また新しい要素も多いので、それらをしっかりとユーザーさんに伝えることは、過去作よりも重視しています。
そして、その点では、任天堂さんの手厚いサポートにとても感謝しています。我々が勝手に「当たり前だ」と思っている事柄についても、そうではないよ、と指摘して下さったり。このあたりは、元々、我々が不得手であることもあり、とても助けられていますね
■「対人戦は無理」なフロムゲーファンへの設計
―― 今回『The Duskbloods』が発表されて「フロムのゲームは好きだけど、対戦ゲームがどうしても無理」という反応もあったかと思います。
それに対して、美徳のシステムだとか、「儀式場」以外で他のプレイヤーを倒してもあまり意味がないとか、さっきお話にあった最後が共闘になるパターンなどは、PvEだけをプレイしたい人にも向けた内容ということでしょうか。
2人で組めるシステムもありますが、対戦ゲームはできればやりたくないような人にも楽しめる設計になっていますか。
宮崎:そうですね。先ほどお話した通り、純粋なアクションスキルによるPvP以外の幅もあり、また楽しみ方もある、といった設計になっています。
私自身、純粋なアクションスキルは決して高くないプレイヤーなのですが、そんな私でも楽しめるようなゲームだと思います(笑)
ストーリー進行について言えば、いわゆるエンディングも複数用意しておりますので、そういった意味でシングルプレイ的な楽しみ方もできるのかなと。

―― 極端な話、マルチプレイで対戦せずに、シングルだけで遊べますか?
宮崎:いえ、そうではありません。ストーリー進行は、あくまでもオンラインプレイを前提にしています。本作の断片的ストーリーテリングは、オンラインプレイ、特にそのドラマ性を意識して設計されており、それを楽しんで欲しいと考えています。
勿論、ストーリー進行においては、オンラインプレイの勝利は必ずしも前提にされませんので、まずはストーリーを楽しみ、その過程で段々と勝てるようになり、また勝ちたくもなる、といった流れが理想ですね。
■「車輪」のモチーフが意味するもの
―― モチーフのなかでも車輪が気になりました。血の歴史や運命と紐付いているものなのでしょうか。
宮崎:車輪は、黄昏の戦いにおける召喚が「時空を超えている」ことを表現するためのモチーフですね。先ほどもお話しした通り、本作の戦いの舞台は、色々な時代、場所の「黄昏」なので。

■育成要素とキャラビルド
―― 今回プレイしたネットワークテスト版では育成要素が見当たりませんでしたが、製品版ではどうなるのでしょうか。
宮崎:血族キャラのカスタマイズ要素は用意します。キャラクターベースは、おそらく10体を大きく超える数を用意できると思います。各キャラクターで武器は固有ですが、血族技や、「権能」と呼ばれる特殊能力などをカスタマイズできます。
また、仮面や入れ墨など、見た目に特徴をつけることも可能ですし、「烙印」と呼ばれるロール要素や、特定のイベントの発生確率を上げる、といったカスタマイズも可能です。
本作のキャラクターカスタマイズは、能力や見た目だけでなく、そのキャラクターの運命、宿命といったものまで対象とするイメージなんです。
そして、それらのカスタマイズ要素が、あるいはその収集が、断片的ストーリーテリングも担っている訳です。
■知性と文化と哲学を持った「血族」
―― いわゆる「ヴァンパイアもの」は、たとえばキリスト教圏ではカインやリリスと絡めたり、作家や作品によって多様な設定や世界観がありますが、宮崎版ヴァンパイアの世界はどんな感じですか?

宮崎:そうですね…。
本作では、プレイヤーキャラクターを吸血鬼ではなく、敢えて血族と呼んでいます。それは、彼らが単なる怪物ではなく、知性と哲学、文化と歴史を持った種族である、といったイメージによるもので、その点は特徴と言えるかもしれません。
また、これはある意味で私の癖なのですが、拡大解釈主義というか、「我々が血族であると言えば、それは血族なのだ」といった感じで、トラディショナルなイメージは大事にしつつ、キャラクターデザインの幅を広めに取っていることも挙げられると思います。

ネットワークテスト版では、ゾークが分かりやすいと思いますが(笑)
■機動力にあわせて設計したフィールド
―― マップについての質問です。試遊ではソロで遊ぶ『エルデンリング』とも、『ナイトレイン』とも全然違う印象でした。PvPvEという形式や、ダイナミックなアクションに合わせてどうマップを形成したんでしょうか。恒例の毒沼があるとしたら、今回はこうしようだとか、調整のエピソードがあれば教えてください。
宮崎:仰る通り、本作のプレイヤーキャラクターは機動力が高く、特にジャンプや空中制御に優れていますので、それに合わせて、飛び回るのが楽しい立体マップを意識してデザインしています。元々、私自身縦に積むマップが好きなので、それは楽しい作業でした。
また、本作のマップでは、過去作ほど強い導線を引いていません。これは、本作のゲーム性を、繰り返しプレイと自由な立ち回りを意識した結果ですね。

宮崎英高ディレクター インタビュー後編はこちら。
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