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「格安スマホに電話番号の割り当てが可能に」報道、それってどういうこと?(石野純也)

テクノロジー Science
石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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「格安スマホに電話番号の割り当てが可能に」報道、それってどういうこと?(石野純也)
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格安スマホに電話番号を割り当てることが可能になるというニュースを17日に新聞各紙が報じました。

これは総務省の有識者会議で提出された電気通信事業法施行規則等の改正案を受けたもの。MVNOに電話番号を割り当てられるようになり、独自のサービスが出しやすくなることで、通話料の引き下げにつながるというのがニュースの趣旨です。

▲総務省の制度改定により、MVNOへの電話番号割り当てが可能になる

この一報を聞いて、「でも、MVNOでも音声通話は使えるよね」と思った方は多いかもしれません。いちユーザーの立場だと当然の感想で、確かに現状でもMVNO各社は音声通話サービスを提供しており、090 / 080 / 070といった電話番号を利用できます。この点では、大手キャリアと変わりはありません。

また一部のMVNOに関しては、音声接続という仕組みによって通話料を引き下げているため、値下げはすでに実現していると思う向きもありそうです。

ただ、実はあの電話番号は、ドコモなりKDDIなりソフトバンクなりに付与されたもの。ほとんどのすべてのMVNOは、電話番号を大手キャリアから借りているというわけです。

具体例を挙げると、IIJmioのギガプランをドコモ回線で利用している場合、その電話番号はドコモから割り当てられたもので、SIMカードもドコモの貸与品という扱いです。

電話番号は有限のため、法令でルールが決まっており、どの電話番号が利用できるかの技術要件も定まっています。

▲現状の制度では、コアネットワーク側のIMSに加えて基地局等の所持が条件になっているため、090/080/070の電話番号は大手4キャリアしか利用できない

例えば携帯電話の場合、条件として基地局の免許を受けており、番号ポータビリティや緊急通報に対応していることや、技術基準に適合していることが定められています。

この条件を満たそうとすると、現状ではMVNOに対し、直接電話番号を付与することができません。電話番号がなければ電話のための設備を持っても意味がないので、現状のMVNOは音声通話をするためのネットワーク設備を持っていません。

そのため、従来のMVNOで実現している音声通話サービスは「卸」の形態を取っていました。卸というと難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば、ドコモやKDDI、ソフトバンクからそのまま音声通話サービスだけをまるっと借りているということ。

ユーザーが電話をかけた場合、その課金管理は大手キャリアが行い、請求書をMVNO側に回し、それに基づいてユーザーから徴収するような形態だったと言えます。少し前まで通話料が30秒22円と横並びだったのは、そのためです。

▲資料のグラフにあるとおり、音声通話を利用する際の基本料や通話料は長期に渡って据え置かれていた。卸として提供されているため、この部分はMVNOが自由に料金を設定できなかったためだ

とはいえ、これでは通話料が高すぎるということで、我らが日本通信がドコモにケンカをふっか……ではなく交渉を持ちかけます。交渉は決裂してしまった格好ですが、総務大臣の裁定が下り、日本通信側は卸価格の値下げに成功します。

同時に、大手キャリア各社は音声接続という新たな仕組みの提供を開始しました。これは、MVNO側が用意した中継電話事業者に自動でつなぐ方式。中継電話事業者に音声通話のルートを迂回することで、料金値下げを実現しています。

▲MVNO各社からの要望を受け、卸価格が値下げされたとともに、音声接続という新たな仕組みも導入された

それでも電話番号は大手キャリアに割り当てられたもの。中継電話事業者には接続できますが、MVNO自身がユーザーの音声通話を管理できるわけではありません。

技術的には、加入者管理装置と呼ばれることのあるHSS(Home Subscriber Server)やHLR(Home Location Register)を持って位置や経路情報を管理しつつ、SIMカードも自社で発行しなければなりません。そのためには、電話番号が直接割り当てられる必要があります。いわゆるフルMVNOにならなければならない、というわけです。

現状でも、IIJやNTTコミュニケーションズなどがフルMVNOとしてサービスを提供していますが、あれらはデータ通信に特化したサービス。やる、やらないといった各社の意思は置いておくとしても、技術・制度の両面で実現が不可能だったのです。

少々長くなってしまいましたが、冒頭で紹介した法改正は、こうしたことを可能にするための動きです。

なお、フライング気味ではありますが、音声通話の相互接続に関しては、日本通信が22年6月にドコモへの申し入れをしています。これも規制緩和の流れを受けたものです。

▲制度改正により、大手キャリアに接続するMVNOも、音声通話用のプラットフォームを持つなどすれば、電話番号が割り当てられるようになる

ではこれによって、新聞各紙で言われているような音声通話の値下げが実現するのでしょうか。

答えは「わからん」というのが、正直なところです。接続料をどう設定するのかにもよるため、一概に安くなるとは言いづらいのが実情です。

先に述べたように、音声通話料の値下げは卸価格の低下や中継電話事業者への音声接続によって実現しているため、ここからさらに一段、二段と下がっていくのかは不透明です。

ただ、MVNOのビジネスの幅が広がるのは確かでしょう。例えば今現在は電話番号が割り当てられていないために、MVNOでは国際ローミングができません。厳密に言えば、音声通話やSMSだけは国際ローミングが可能ですが、これは、卸として大手キャリアの回線を直接ユーザーに提供しているからです。フルMVNOとして電話番号を持ち、海外キャリアと接続協定を結べば、こうしたサービスが実現します。

▲日本通信が割り当てを検討する情報通信審議会に提出した資料。電話番号割り当てによる実現できそうなサービスが列挙されている

またインバウンド用のプリペイドSIMや、ローミング専業事業者への音声通話を含めたプリペイドプランの提供などもできるようになるかもしれません。

さらには、主に法人向けですが、建物内ではMVNOが敷設したローカル5Gで接続しつつ、屋外に出たらキャリアのネットワークに接続するといったようなサービスも音声通話込みで可能になります。

一方で、ここまでできる体力や技術力を持ったMVNOは、かなり限られてくることが予想されます。IIJがデータ通信のフルMVNOに参入した際は45億円近い投資をしています。日本通信以外のMVNOが、音声通話の相互接続に手を挙げるのかには注目しておきたいところです。


《石野純也》
石野純也

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ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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