OpenAIは米国時間10月19日、COBOLやFortran、Visual Basicなどレガシーなプログラミング言語について、自社モデルGPT-6シリーズのコード生成・移植能力が劇的に向上したと発表しました。
COBOLから別言語への書き換えでは、前世代のGPT-5.6 Solが正答率5.4%だったのに対して、9月29日公開のGPT-6.1 Solは同設定で86.6%、推論を高く設定すれば97.9%に達したとしています。
Advancing coding in low‑resource programming languages | OpenAI
勘定系などクリティカルなシステムでいまだに運用が続く一方、エンジニアの引退などで熟練者が不足するレガシー言語システムの保守・刷新・移行等に光明となる発表です。
移行テストは5%から87%、推論を増やせば98%
COBOLやFortranなどは未だに一部で使われているものの、広く普及する PythonやJavaScriptと比較してAIが学ぶためのコードや資料が少ない「低リソース言語」にあたり、コーディング支援AIが苦手としてきた分野です。
今回OpenAIが発表したCOBOLの移行評価は、COBOLプログラムをC++、Java、Kotlin、Python、Rustのいずれかに書き換えさせ、出力がバイト単位まで元と一致するかを隠しテストで判定する内容。1つでも落とせば失敗です。

GPT-5.6 Sol がわずか5.4%の正答率だったのに対して、GPT-6.1 Solは推論量(reasoning effort)を低くした設定で86.6%、推論量を上げると97.9%に達しました。APIコストはGPT-5.6 Solの61%。OpenAIは97.9%を、評価がほぼ飽和する水準としています。
SQLite互換エンジンを20言語で自作
もう一方のMultiLangBenchは、SQLite互換のデータベースエンジンを指定した言語で一から作らせ、本家SQLiteのテストを変換した試験の通過率を測るテスト。評価環境とテスト一式はGitHubで公開しています。
最上位のGPT-6 Astraは20言語の平均通過率が87.4%で、GPT-5.6 Solの26.8%から全言語で大幅に向上。COBOLは10.9%から72.1%、Fortranは21.4%から83.5%です。
Astraが83%を超えなかったのはCOBOLのみで、依然として最難関となっています。

(▲画像:COBOLコードのマイグレーションテスト。97.9%で飽和(トークン費用をかけてもそこで止まる))
「表に出ない誤り」への対応
OpenAIは、低リソース言語向けにどんな学習をしたかを具体的に説明していません。開発者や企業顧客から「こうした言語が苦手」との声を受けて取り組んだとしています。
COBOLの難しさの背景としては、AIコーディング企業のFactoryが4月に公開した評価「Legacy-Bench」で明らかにした、COBOLの誤りは表に出ないとの分析があります。桁定義や控除額の計算を間違えてもコンパイルも実行も通り、出力はもっともらしく見えるため、失敗の97%で、AIエージェントは解けたと思い込んでいたと分析していました。
OpenAIの移行評価はこの落とし穴を回避するため、バイト単位の一致を判定する仕組み。それでも9割前後をパスできたことは、こうした暗黙の仕様まで認識・再現できるようになったことを示します。
銀行・行政の基幹系刷新に追い風、ただし人の確認は前提
IBMによれば、COBOLは未だにオンラインバンキングシステムの40%超、ATM取引の95%を支えています。一方で書ける技術者は減り、業務ルールがコードにしか残っていないことも珍しくありません。日本でも経産省が「2025年の崖」として、レガシーシステムの放置に警鐘を鳴らしてきました。
レガシーシステム対策の分野では、IBMが2023年10月に提供を始めたCOBOL→Java変換のwatsonx Code Assistant for Zがあるほか、Anthropicも2026年2月、Claude CodeでCOBOL刷新を年単位から四半期単位に縮められると主張していました。
今回のOpenAI発表は、こうしたレガシーシステムの保守や刷新プロジェクトにとって大きな朗報となるものの、「86.6%」や「97.9%」で本番を運用するわけにはいかない以上、依然として人間の介在は必要。OpenAI自身、本番システムへの適用には専門家のレビューと、業務ルールや依存関係に照らしたテストが必要としています。




