「Ruby biz Grand prix 2023」イベントレポート、大賞はウーオ・ピクシブに。9回目にして「初」の取り組みも

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鬼頭勇大

フリーライター・編集者。熱狂的カープファン。ビジネス系書籍編集、健保組合事務職、ビジネス系ウェブメディア副編集長を経て独立。飲食系から働き方、エンタープライズITまでビジネス全般にわたる幅広い領域の取材経験がある。

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「Ruby biz Grand prix 2023」イベントレポート、大賞はウーオ・ピクシブに。9回目にして「初」の取り組みも
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※ 本稿は島根県の取材ツアーに招かれて執筆した記事になります。

11月8日、島根県松江市で「Ruby biz Grand prix 2023」の表彰式が開催されました。プログラミング言語「Ruby」を使った商品・サービスなどの事例を表彰する大会で、今回で9回目の開催です。合計で29件のエントリーがあり、大賞には水産業のDXを支援する株式会社ウーオ(広島市)と、クリエイター向けにさまざまなサービスを展開するピクシブ株式会社(東京都渋谷区)が選ばれました。

Rubyは国産のプログラミング言語として知られ、1993年に誕生。「生みの親」であるまつもとゆきひろ氏が市内に在住していたことをきっかけに、2006年から松江市がIT産業振興として始めたプロジェクト「Ruby City MATSUE」の核となっています。

Ruby biz Grand prixは「事業の新規性」「優位性」「成長性」などからエントリー事例を評価。今回は大賞・特別賞・ソーシャルインパクト賞の3点で授賞がありました。

大賞に選ばれたウーオは、2016年に創業。現在は広島・東京をメインに活動しています。同社が展開する水産物に特化したBtoB流通プラットフォーム「UUUO」は、国内の仲買業者が水産物を出品して、興味を持ったユーザーが直接買い付けのリクエストを出せるもの。仲買業者の課題である、取引先の拡大とアナログ業務の改善によって、流通の自由度を高める取り組みをしています。

大賞に選ばれたウーオ。水産業界のDXに取り組んでいる

授賞式に登壇した同社の取締役CPOの土谷太皓氏は「Rubyのおかげで会社が成長できている。特にプログラミング未経験の人でも、Rubyを使うことで楽しみながら開発できていると感じる」とコメント。

ウーオの土谷太皓・取締役CPO

同社は広島県に本社を構えることもあって、社内には島根県出身者も多いといいます。現在インターンで開発をサポートするメンバーも松江市出身。今後も1次産業×ITに取り組む会社間で勉強会を開催するなど、Rubyコミュニティの盛り上がりに携わっていきたいとも話しました。

同じく大賞に選ばれたピクシブは、全社員のうち3割弱がエンジニアの会社です。ユーザーがクリエイティブな活動を楽しむためのサービスを数多く提供しています。アクティブユーザーの4割と新規ユーザーの7割を海外が占めるといい、グローバルに事業を展開しています。

ピクシブも大賞に選ばれた

授賞式に登壇したのは、執行役員・CTOの道井俊介氏。数多くのサービスを迅速にリリースできた背景にRubyがあったと話します。

「Rubyは外部ライブラリの『gem』が豊富で、アプリ構成の共通化を通して生産性を高めながら開発できるのがポイント。また、コミュニティの存在も大きい。開発したサービスの“健康診断”やエンジニア間の情報共有などで、大きく助けられた」(道井氏)

ピクシブの道井俊介・執行役員CTO

特別賞には、物流業界の「ラストワンマイル」に取り組むウィルポート株式会社(東京都中央区)、旅のサブスク「HahF」を手掛ける株式会社KabuK Style(東京都渋谷区)、家電などのサブスクを展開するレンティオ株式会社(東京都品川区)が選ばれました。

その他、大賞・特別賞からは外れたものの、審査員からの好評を集めた4社には「社会にインパクトを与えている・今後与える期待がある」という観点から、ソーシャルインパクト賞が授賞されました。

表彰式の最後には、審査委員長のまつもとゆきひろ氏が講評を発表。大賞の2社へは「山陰地方は魚介類がおいしいエリアであり、Rubyを使って流通に工夫を加えている点からウーオへの評価が集まった。また、ピクシブはエントリー企業の中で比較的"老舗"ながら、コミュニティへの貢献やイベントへの協賛などでもRubyの広がりに尽力いただいている」とコメントしました。

審査委員長として講評を語るまつもとゆきひろ氏。Rubyの生みの親として知られる

県内企業を集めたワークショップも開催。9回目にして「初」の取り組み

今回の表彰式開催にあたり、新たな取り組みとしてワークショップも開始。県内のIT・非IT企業がグループに分かれ、与えられたペルソナの課題を解決するプロダクトのワイヤフレーム作りに挑みました。各グループには、過去にRuby biz Grand prixで授賞した会社のメンバーが1人ずつ参加してファシリテーションを担当しました。

30分強の限られた時間で、ペルソナの課題想定や要件定義、さらに手書きのワイヤフレーム作りへ挑戦。建設業に従事するペルソナに対して、案件ごとにスケジュールを管理できるようなプロダクトや、学校で働く人に対して、小テストなどをタブレット端末で行うことで、紙作業や評価業務のデジタル化を実現するプロダクトなどが考案されていました。

IT・非IT企業を問わず県内企業から集まったメンバーがワークショップに参加した
お題として出されたペルソナ

ディスカッションの後は、各グループがそれぞれの成果を発表。一方通行の発表ではなく、聞き手側から「この機能があればもっと便利になりそう」「こうすれば、課題を解決できる」といった意見も出るなど、お互いが積極的にコミュニケーションしていました。

キャプション:ワークショップで生まれた成果物の一例

その他、歴代受賞企業のスピーチなどもあり、過去に受賞した企業同士のコミュニケーションや、まだRubyに触れたことがない県内企業への認知拡大の場としてもワークショップは機能。島根県庁の担当者は新たに開始したワークショップの狙いについて「県下のIT企業は受注開発するケースが多い。Rubyの活用法などを知ってもらい、自社でサービスを開発する機運が高まれば」と話します。

市長も期待。起業・創業の支援にもRubyを活用へ

担当者は、Ruby biz Grand prixにエントリーする企業の傾向として、これまでITとは縁遠かった業界の課題を解決する事例が増えてきているとも話します。そこで、よりビジネスの現場とRubyの距離を近付ける観点でも、今回のワークショップに期待する部分があるそうです。

これまで数多くの企業におけるRubyの活用事例を表彰してきたRuby biz Grand prixは、2024年に10回目という節目を迎えます。今年からは「Ruby Week」と銘打ち、1週間に「RubyWorld Conference」「Ruby Prize」とあわせて開催する形になりました。

松江市が長らく取り組んできたRuby City MATSUEプロジェクトも、2023年度から2.0にバージョンアップ。11月9日にRubyWorld Conferenceへ出席した上定昭仁・松江市長は、これまで40を超える会社の拠点設立や移住につながってきた実績から、さらに起業・創業の街として進化するためにRubyを活用する意向を語りました。

Rubyの街・松江から、Rubyを活用する会社が続々と生まれる街へ。今後も松江市から目が離せません。


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《鬼頭勇大》
鬼頭勇大

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